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こども病院問題は全福岡市民の課題 福大名誉教授・石村善治氏

[2010年4月28日 12:56更新]

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(10年4月号掲載)

福大名誉教授 石村善治氏福岡市立こども病院(中央区)の人工島移転計画は現在、粛々と行政手続きが進められている。

「この問題はもう終わった」とする関係者がいる一方、患者家族をはじめ多くの市民がいまだに強く反発しているのも事実。

反対運動の本質とは何か、その根本にあるものとは何なのか。

「こども病院の人工島移転に反対する連絡会」の代表で、福岡大学名誉教授の石村善治氏に論じてもらった。

反対する3つの理由    

患者やその家族はもちろん、小児専門医など多くの市民が反対しているこども病院への人工島移転計画。その理由は大きく分けて3つあると考える。 

まず第1に、移転後のこども病院は、1分1秒を争うと言われる子どもの命、母親の命を守るだけの立地条件に欠けていること。市民あるいは遠来の患者らにとって地理的・公平な「公共施設」たる役割を果たし得るには市の中心部にあってこそのはずであるが、その理念に反している。 

第2に、福岡市が人工島移転の方針を策定する過程で当局は極めて不明瞭・不明確な財政処理を行い、市民の疑念・抗議に適切な対応を取ろうとしないこと。事実が解明されていない以上、移転計画をストップすべきなのは当然である。 

第3に、人工島移転は吉田宏市長の「計画を見直す」という選挙公約に反するものであり、この指摘に対する明確な回答がない以上は中止、ないし白紙に戻すべきである。 

つまり、人工島への移転は

(1)子ども、母親、家族の人権

(2)納税者の権利

(3)選挙民=主権者との約束

─の3つをないがしろにするものである、と言えるだろう。

人工島事業への長きに渡る疑念  

これらの3点が形作る反対運動の性格は、その歩み・経過からも知ることが出来る。

今回の運動は移転計画表面化を契機に起こったものではなく、今から30年前、1981年に起こった「博多湾埋め立て反対運動」「まちづくり条例制定運動」を起源としている。

以来、福岡市民は博多湾の環境問題や人工島建設に重大な関心を抱き続けてきた。そもそもなぜ多額の税金を投じる人工島事業が必要なのかといった疑問、それからケヤキ・庭石事件を挙げるまでもなく、計画にまつわる経済的なうさん臭さを感じてきたのである。 

それを証明するかのような事実が、こども病院の現地での建て替え費用を1.5倍に水増しした報告が議会に提出され、予算措置が取られた問題だ。しかも、その数字の根拠となったメモを市職員が廃棄するという信じられない行為があったにもかかわらず、その詳細については明らかにされないままである。 

この水増し問題に関する書類および市職員メモの開示を求めた市民の請求に対して、福岡市情報公開審査会は3月29日、「対象文書を保持していないことを理由として行った非公開決定は妥当」としながらも、公文書の作成・管理に関する意見として「本来残されるべきであった情報が個人的なメモ等の形のまま廃棄されてしまったのは(情報公開)条例の本旨にもとるとの評価を免れないと思われる」と結論付けている。 

病院移転反対運動の根底にあるのは、人工島事業の必要性・正当性そのものへの懐疑であり、市民の意向を無視・軽視しながら強引に推進してきた市当局の姿勢そのものに対する批判・怒りに他ならない。

福岡市長選をにらんで  

市民らによる移転計画反対運動は、署名活動や市長の責任追及へと続き、今年2月には住民監査請求を起こす事態となっている。 

監査請求では「人工島の移転予定地購入は税金の不当な支出に当たる」として購入費用44億4500万円全額を市に返還するよう主張している。理由は次の4点。

(1)現地建て替え費用を水増しした虚偽の報告によって市議会の議決を得た

(2)より税金負担の少ない候補地・手段があるにもかかわらず検討していない

(3)人工島移転は小児医療サービスの低下を招く

(4)予定地取得の金額が周辺地価に比べて高額である

その上で、主張が認められなければ住民訴訟を起こす方針である。 

さらに4月11日からは、新病院基本構想の白紙撤回と、今年度から独立法人化されたこども病院などを市直営に戻すことを求めて、署名運動を始める。

 

移転をめぐる反対運動の流れは、

(1)市民の政治的意思表示

(2)情報公開要求

(3)知る権利の主張

(4)調査特別委員会の設置要求

(5)首長の責任追及

(6)納税者の具体的な財政責任要求

という形で発展的に展開してきた。 

その結果いまや、今秋に予定される市長選をにらんだ市民運動にまで連なろうしている。

こうした経緯や重要性を踏まえると、こども病院の人工島移転問題は全市民1人1人の課題となっているのと同時に、われわれの自治能力を示しさらに高めていく好機でもあると言っていいと思う。

【石村善治(いしむら・ぜんじ)】
1927年、福岡市生(83歳)  同市中央区在住
50年、東京大学法学部政治学科卒
58年、福大法経学部講師 以来、法学部教授、胴部副学長などを歴任  
こども病院の人工島移転に反対する連絡会代表

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