福岡県提訴の「突破者」に聞く(2)誰がどうやって決めたのか [2010年10月26日12:55更新]

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(10年9月号掲載)

作家・宮崎学氏の著作(左)とそれを原作とするコミック提訴の発端となったコミックは「実録 激闘ヤクザ伝 四代目会津小鉄 高山登久太郎」(竹書房)。

これのコミックは、宮崎氏の著作「突破者異聞 鉄(KUROGANE) ─ 極道・高山登久太郎の軌跡」(徳間書店)を原作としている(写真)



宮崎氏  「突破者異聞・・」はワシがずっとテーマにしてきた「底辺の視点から見た日本近代の問題」を扱った1冊で、生きるために任侠の世界に身を置かざるをえなかった高山登久太郎会長の一生を追ったものや。

ワシがこれまで書いた本の中でも特に愛着がある。それは、個人的にも交流があり、暴力団対策法に反対して違憲訴訟を起こした高山会長について書いた物だから。新聞や月刊誌の書評でも肯定的に取り上げられた。 

東京新聞(02年4月7日付)は「在日韓国人として食べるための選択肢がなく、仁侠の世界に踏み込んだいきさつから権力との闘いなど、激動の人生の場面を丁寧に追っている。一途に生きた男の時空と彼をめぐる人間の絆が浮き彫りにされる」と評している。

宮崎氏  大体やな、県警はリストのコミックや雑誌、読んどるんか? ま、読んでも分からんやろうけど(笑)。 

県は準備書面(9月1日付)で、県警が「暴力団関係書籍・雑誌」であると認定し、店頭から撤去・販売中止するよう「コンビニエンスストア等防犯協議会」に要請したコミックなどについては

「個別の書籍・雑誌の内容を確認してリストを作成したわけではなく、インターネットで『ピカレスク』などの単語で検索し、該当した中から近年刊行された書籍を抽出した。暴力団を賛美する内容か否かについて判断基準を設けていたわけではない」などとしている。

要するに、県警が「撤去させるべき著作物」として作成したリストは、著作物の内容を検証して決めたわけではなく、単に題名などから選んだ-というわけである。

宮崎氏  今回の福岡県警の「暴力団弾圧」に関連して高山氏に関する著作が出てくるとは、因縁というか怨念を感じる。高山会長は「もう遅いで」と、草場の陰で怒っているかもしれんがな。

県警の行為は「要請」か「強制」か

宮崎氏側は前回述べた通り、「県警の要請に対し出版社やコンビニは従わざるをえない事情にあり、事実上の強制である」と主張。

一方、県は上記準備書面で「暴力団関係書籍の販売について『適切な措置』を講じてもらいたいとの『要請』にすぎない」と反論する。

宮崎氏  コンビニや出版社が警察に言われたことに逆らえるわけがない。特に出版社はヘアヌードグラビアや風俗店の広告を掲載しているから、この辺りを警察にほじくり返されたらかなわんから。

普段は任侠だのヤクザだの言いながら、こんな時には腰が引けるのがこの業界。昔は骨があったんやけどね。異を唱える人間を悪と捉える社会的風潮の中で、抵抗できない媒体になってしまってるんやね。 

こういうことがあると今後、出版社や雑誌業界で「警察に文句を言われると面倒だから、無難に・・」と自主規制が起こり、表現活動の萎縮を招く。だからこれは、明らかな憲法違反なんや。 

(続く)