福岡市長選 前例なき分裂選挙へ(1)政党・組織票まとまらず [2010年11月4日14:17更新]

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(10年10月号掲載)

福岡市長選の構図来月14日に迫った福岡市長選は、過去に例のない「分裂選挙」となりそうだ。

現職・吉田宏市長の推薦をめぐって内部対立が表面化した民主党県連はもちろん、元民放アナ・高島宗一郎氏を擁立した自民党など保守系会派も一枚岩とは言えず、それぞれ一部が別の予定候補者に流れる可能性が高い。また経済界は表向き現職支持を打ち出してはいるが、実際に吉田氏を応援するのは一部に止まる見通しだ。

一方、こども病院移転問題などをめぐり、現職に対して多くの市民が「公約違反だ」などと反発しているが、こうした票の行方も選挙戦を大きく左右することになるだろう。

福岡市長選の構図、現時点での情勢をまとめた(上図参照、クリックで拡大)

★本稿は10月号掲載記事にその後の動向などを加筆・修正したものです   



政党票の行方 混沌 

民主県連のパーティーで挨拶する吉田宏市長(9月27日)「推薦をいただきありがとうございました。4年間の経験を基にして2期目もぜひ頑張りたい」。9月27日、民主県連主催のパーティーで吉田氏はこう挨拶した(写真)

だがある国会議員は語る。「今回はノータッチ。吉田氏が落選した時に、党がどれくらいダメージを受けるのかが心配なだけ」 

前回選挙(06年)では吉田氏を擁立、小沢一郎代表(当時)が福岡入りするなど政党色を前面に出して支援した民主。だが今回は市民の間で現職批判が高まっていることなどから推薦をめぐって意見が対立、吉田氏は地元市議団とともに孤立しているのが実情だ

他地域の国会議員もちろん、福岡市部選出の衆院議員3人のうち2人は「静観」、つまり事実上応援しない意向とされる。また一部の国会議員は、同党推薦をめぐり現職と争った形となった元佐賀市長・木下敏之氏の出陣式(10月31日)に祝電を送っている。

また民主の支持母体である連合福岡も表向きは現職推薦を決定しているが、一部労組は木下氏を支援している。 

 

一方、自民党など保守系会派が推す高島氏。ベテラン市議らとともに支持団体への挨拶回りなどを進めているが、政党色を薄める戦術からか、推薦は市議団レベルに止まっている。そのため資金や選挙態勢は従来の保守選挙と比べるべくもなく「一部の自民市議は現職にすり寄っている」との情報も。 

自民と会派を組む公明党は当初、有力財界関係者に配慮し後方支援に徹する構えを見せた。そのため「どの候補者ともこれまでの付き合いがある。だから実態は自主投票に近いものになるかもしれない」(同党関係者)と、吉田市長や元市幹部・植木とみ子氏、木下氏にも一部流れるとの見方が強まっていた。

それでも告示日以降はあらためて高島氏支援へ組織を締め直し、「最終的には基礎票の7~8割は高島氏に行きそう」(同)。こうした状況から関係者からは、むしろ自民市議・県議らに対する批判・不満が高まっており「本気でやっているのは一部ベテランだけ。このままでいいのか」といった焦りの声が漏れている。 

経済界は分裂 現職に反発も   

10月3日に行われた吉田氏の政治パーティー。挨拶した松尾新吾・九州電力会長は吉田氏の取り組みを評価しながらも「支援は個人的なもの」と発言した。 

前回選挙で地元財界の主要企業、いわゆる七社会は山崎広太郎市長(当時)を支援した。そのため今回、同会の中で明確に吉田氏支持を打ち出しているのは「九電工」(橋田紘一社長)など数社に止まり、九電などはこれまで同様、自民が推す高島氏を支援している。

地元新聞社出身で経済部長などを歴任、財界に知人も多い吉田氏は「七社会は自分を応援する」と自信を見せているというが、実際には最後まで一本化できそうにない。 

「通常、財界は現職を推すもの。だが今回はこれまで支えてきた自民が高島氏を擁立した上、早い段階から吉田氏の不人気が伝えられている。保険を掛ける意味で『現職・吉田、自民・高島の両にらみ』が現実的な対応だ」(ある財界関係者)。 

福岡市長選 立候補者一覧

(続く)