(10年10月号掲載) 過去の経緯も踏まえ、地元では「事業がスタートすればさらに堆肥の投入量が増えるのではないか」「土壌が汚染され地下水に悪影響が出るのでは」といった不安が根強い。 また、問題ないとした土壌調査の結果に対しても、事業主体である大分県が行っているだけに「信用できない」とする声も一部から出ている。 本川牧場の本川角重社長は「事業規模の縮小も検討しているほか、農地への転用や敷地内に入浴施設を作るなど、地元への還元を最優先に考えている」と話す。 今回の騒動は一見、土壌や水質の汚染といった環境面での問題をめぐり、畜産事業計画を推進する県・牧場側と、これに反発する地元住民の対立─という構図に取れる。だが現地をたずねてみると騒動の裏側に、ある地元有名企業の存在が浮かび上がってくる。 この企業のトップは本紙の取材に応じ、これまでの経緯などを詳細に説明した上で「悪臭や汚染などの問題は住民を危険にさらし、日田のイメージを傷付けるもの」と力説した。 林業で知られる日田市は豊富で良質な水資源でも有名で、酒造メーカーや清涼飲料水の製造・販売企業、またそれらの製造工場などがたくさんあり、街の重要な産業となっている。天ヶ瀬温泉など観光資源にも恵まれ、福岡をはじめ県内外から多くの人が訪れる。 そのため水質汚染はもちろん、対外的なイメージについて地元が神経質になるのは、ごく当然であろう。 だがこの企業はこれまでのところ地元住民の陰に隠れ、表には出てきていない。また、ある福岡県選出国会議員の秘書が、誰の意向なのかは不明だが、反対派住民の裏で運動を扇動している形跡も見受けられる。 一方、本川社長は事業の説明会に県の担当者らとともに出席、住民の厳しい声に自ら耳を傾ける姿勢を見せている。先述の対策も含め、取り組むスピードの問題はあるにせよ、出来る限りの努力をしている印象を受けた。県・市側も「地元の意見を尊重する」としており、両者の対応は鹿児島県の産廃処分場計画の例とは雲泥の差だ。 自治体・牧場と比べれば前出企業の姿勢は、理解はできるものの、決してフェアとは言えないのではないか。 7年前の悪臭騒動で生じた感情的なあつれきが、こじれたままになっている。それこそが対立関係が硬直化した最大の要因であり、環境問題に形を変えて現れている─これが今回の騒動の本質だと、本紙は考える。 本紙は予定地をたずねてみたが、異臭などはまったくなかった。少し離れた場所に住む男性は「この程度のことでなぜこんなに騒ぐのか」と冷ややかに語った。 来年3月には水質調査の結果が出るという。仮にそこで問題がなければ住民側は、同事業と共存共栄を図る方向に舵を切るべきではないか。 そのためにはもちろん、徹底した情報公開や心情的な確執を取り除くための住民との話し合いが不可欠。本紙が取材した限りにおいては自治体・牧場ともに「最大限の努力を惜しまない」と話しており、対立を乗り越え住民が一体となって事業に取り組んだ方が、地元経済の活性化にもつながると思うのだが・・。
大分・日田市 肥育牛飼育事業(2)感情的あつれきが反対の根底に? [2010年11月25日11:18更新]
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共存共栄図るべき