バリアフリー先進地・宮崎市に学ぼう(2)官民協働の理想型 [2011年1月25日13:06更新]

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(10年12月号掲載)

宮崎市・バリアフリー検討委員会の様子宮崎市はまず、NPO法人や駅前商店街、商工会議所などと連携して「バリアフリー検討委員会」を設立。障がい者や識者から意見を聴いたり(写真左)、高齢者や障がい者らで構成するモニターが実際に街に出て調査を行った(写真下)。 

こうして集められた情報や意見をもとに、車いす対応トイレのある飲食店や観光案内施設の場所を示した繁華街の地図、バリアフリールームがある宿泊施設の一覧表などを掲載した冊子「観光バリアフリーマップ」を作成。無料配布するとともに、インターネットでも情報を提供(文末参照)している。 



「目に見えて効果が出るにはまだ時間がかかるでしょう。ですが施設所有者や飲食店経営者の意識は確実に変わりつつある。

あるお店では車いす対応トイレを設置して以降、障がい者のお客さんが増えたため、新たに点字のメニューを用意したといいます。こうした配慮から新たな交流が生まれることも、事業の効果の1つです」(岩浦さん)。

街中で調査を行うバリアフリー検討委

大きなビジネスチャンスの可能性  

宮崎市の一連の施策は実際に利用する高齢者や障がい者の意見・評価を参考にして行われており「こちらが気付かされることも多々ある」(岩浦さん)という。

近年、福祉や教育関連事業などについて多くの自治体で「市民参画」「官民協働」を謳っているが、宮崎市の街づくりへの取り組みは、役所が市民の声を集めてそれを実現するという、理想的な官民協働事業と言えるのではないだろうか。 

「バリアフリー化は高齢者や障がい者のためのものと考えてらっしゃる方が多いと思いますが、それは違います。

例えば車いす利用者の視点で整備すれば、乳母車を押す人や重い荷物を持った人もより移動しやすくなる。子どもから大人まで誰もが暮らしやすい街づくり、それがバリアフリーなんです。こうした取り組みが全国に広まってほしいですね」(岩浦さん)。 

 

超高齢社会への対策が急務となっている現在、高齢者や障がい者の立場に立った街づくりや商品提案が求められており、それらが新たなビジネスチャンスを生み出すのは間違いない。

昭和30~50年代に新婚旅行のメッカだった宮崎市では、観光バリアフリー事業をさらに進めればかつて宮崎を訪れ、今は高齢となった人たちを再び呼び込むことも可能だろう。 

自治体や経営者はこうした視点からの施策、事業展開が求められる時代を迎えた─こう言っても過言ではない。 

★宮崎市バリアフリー情報マップはこちら