バリアフリー先進地・宮崎市に学ぼう(1)九州No.1を目指して [2011年1月24日08:54更新]

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(10年12月号掲載)

宮崎市のバリアフリー条例整備基準適合証これまで本紙で何度か取り上げた「バリアフリー」。最近は公共施設や飲食店などで、車いす利用者対応トイレや段差のないスロープを見る機会も多くなった。

超高齢社会を迎えた日本にとって、バリアフリー化は今後の街づくりの重要なテーマであると同時に、大きなビジネスチャンスとなる可能性を秘めている。

ただ、こうした設備を新たに設置するにはそれなりの費用が必要であることなどから、地域や自治体によってばらつきがあるのも現実だ。

そこで今回は、「バリアフリー先進地」である宮崎市の例を取り上げ、これまで行ってきた施策とそれが生み出した効果などについてレポートしたい。



小規模施設まで条例の対象に

 

コンビニエンスストアのトイレ

「宮崎市は九州で最もバリアフリー化を進めている自治体の1つだと自負しています。08年には国土交通省が行った第1回のバリアフリー化推進功労者表彰もいただきました」

笑顔でこう語るのは同市役所の岩浦厚信さん。「宮崎市福祉のまちづくり条例」の作成に関わるなど、いわば「バリアフリーのスペシャリスト」だ。  

高齢者や障がい者が施設・建物を利用しやすくするためのバリアフリー化を、積極的に推進する宮崎市。そのきっかけとなったのは前市長の津村重光氏が「九州一の健康福祉都市」を目標に掲げたことにある。

01年から同条例を施行、04年には「宮崎市福祉のまちづくり総合計画」を策定し、バリアフリー化を軸とした街づくりを展開している。 

同条例では建物を新築する際にはスロープや車いす利用者対応トイレを設置することを義務付けたほか、既存の建物を改修する際、工事費用の一部を市が負担することを定めている。 

「この条例の最大の特徴は、民間建築物については大規模施設だけでなく、延べ面積300㎡未満の小規模施設にまで、新築する際のバリアフリー化を義務付けたことです」(岩浦さん)。

宮崎市は条件を満たした施設に対して「条例整備基準適合証」(写真冒頭)を交付しているが、今年10月末までに交付された計1184件のうちほぼ半数が、診療所やコンビニエンスストア・居酒屋・飲食店など民間の小規模施設。条例の対象範囲を広げたことで、バリアフリー化された施設が倍増したことになる。

★写真上は宮崎市内のコンビニエンスストアのトイレ

観光バリアフリー  

青島などの観光地やリゾート施設、またプロ野球チームのキャンプ地で知られる宮崎市。訪れる多くの観光客の中には当然、高齢者や障がい者もいる。そこで、誰もが不自由なく観光できる宮崎を目指そうと、岐阜県高山市などを参考にして05年から「観光バリアフリー事業」をスタートした。 

「条例の制定や費用の一部負担だけでは既存の民間施設、特に繁華街ではなかなかバリアフリー化が進まないのが現実。これを何とか変えなければ-というのがきっかけでした」と岩浦さん。

「繁華街には多くの市民や観光客が訪れるし、高齢者や障がい者だって食事やお酒を楽しみたい。だから飲食店などの施設のバリアフリーに関する情報を提供すれば、利用者はもちろん、経営側にもメリットがあると考えたのです」  

(続く)