鹿児島・処分場問題の本質(1)特定の企業グループへの便宜供与 [2011年4月6日11:40更新]

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(11年3月号掲載)

鹿児島県庁(同市鴨池)鹿児島県(伊藤祐一郎知事)が同県薩摩川内市で進めている産業廃棄物管理型最終処分場の着工が4月に迫っている。

粛々と行政手続きを進める同県に対し、計画に反対する宗教関係者や地元住民は建設中止を求める訴訟の準備に入るなど一歩も引かない構えだ。 

本紙は09年2月号で「この問題は伊藤県政のあり方を問うものになる」と指摘したが、現状はまさにそうなりつつある。処分場建設を名目に、特定の地元企業グループに事実上の便宜供与を図るのが目的としか言いようのないこの施策。問題点をあらためてまとめた。 



 

「なぜ県は、私たち住民ときちんと向き合ってくれないのか」。屈指の霊山として名高い冠岳にある「鎮国寺」(村井宏彰山主)の関係者はこう憤る。 

処分場の建設予定地は冠岳の中腹に位置する。そのため鎮国寺をはじめ多くの宗教関係者が「霊山にふさわしい施設ではない」と猛反発。またこの場所は水源地でもあるため、施設の安全性に疑問を持つ下流域の住民からも、不安や反発の声が上がっている。 

反対派はこれまで何度も伊藤知事との面会を求めたり公開質問状を提出してきた。そんな住民らの声など聞こえないかのように、強引に計画を進める鹿児島県、そして伊藤知事。宗教関係者や反対派住民の怒りと不満は募るばかりだ。

処分場計画の問題点  

これまで本紙が報じてきたこの計画の主な問題点は以下の4つである。

(1)建設予定地決定までの経緯があいまい 

同県は29カ所の候補地からこの場所を選んだとしているが、絞り込む根拠となるはずの現地報告書や選定をめぐる会議録は、まったく存在しない。また県関係者は一様に「最終的には伊藤知事の一存でここに決まった」としている。

(2)現地における調査や計画がずさん 

反対派住民の代理人は、予定地には湧水地が数十カ所あるなど、極めて不安定な地盤であると指摘。管理型の産廃最終処分場を建設する場所としては不適切なのは明らかで、県の調査や計画はあまりにずさんだと主張している。

(3)住民への説明が不十分 

「内容等について十分に説明させていただければありがたい」「情報公開は完璧にやります」

当初はこう明言していた伊藤知事だが、本紙がこの問題を報じると態度は一変。知事からの説明を求める反対派住民に応じることはなく、基本計画発表の際は記者会見すら行わなかった。

(4)特定の企業グループが事業に関係  

昨年9月、処分場施設の設計・建設工事を、地元の有力建設会社「植村組」(鹿児島市)を含む共同企業体(JV)が約74億円で落札した。

予定地の所有者は「ガイアテック」(薩摩川内市)で植村組の関連会社。県がこの土地を総額約5億円で取得することを明らかにしたのは今年2月。用地を取得していない段階で、施設を設計・建設する業者を決めるのは通常の行政手続きではまず考えられず、極めて異例。

また5億円という土地取得代について反対派代理人は「はたして適正な金額なのか」と疑問を投げ掛ける。

(続く)