知的障がい者の自立を全力支援 社会就労センター(セルプ)蓮の実団地 [2011年5月9日12:36更新]

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(11年4月号掲載)

蓮の実団地で作業にいそしむ施設利用者たち福岡県八女の山里、上陽町上横山。ここに知的障がい者の社会復帰や就労支援で全国でも注目される入所授産施設があると聞いて訪れた。

車の離合もままならない山道の先にその施設はあった。社会福祉法人「上横山保育会」が運営する社会就労センター(セルプ)「蓮の実団地」である。

120人が生活する施設だそうで、本館や作業場、生活棟などで構成され「団地」の名にふさわしい。 



 

ところで、社会就労センターとはちょっと聞き慣れない言葉である。「授産という言葉があまりに古めかしい。そこで全国の授産施設が集まって1995年にCI(コーポレートアイデンティティ)をやったんです。もっと社会にアピールしていかなければと考えて」と同法人の上田正勝理事長。

上田さんは福岡県社会就労センター協議会の会長も務める。そしてセルプとは「支援、就労、生活、社会参加」の英語の頭文字SELPをとったものだという。 

 

蓮の実団地は1973年にスタート。全国に知られる八女茶の産地だけに自前の茶畑を持ち、上質の玉露や煎茶を全国に販売する。またシイタケ栽培も手がけるほか、無添加の馬油、馬油石けん、お茶石けん、ドクダミやスギナなどをブレンドした健康茶、ブルーベリージャムなど製品は20品目を超える。 

1988年には知的障がい者の自活訓練にも取り組み、これまで37人を社会復帰させている。これは全国的にも注目すべき数字である。

「愛媛の牧場、鹿児島の養鶏場など事業主の協力で広げてきました。厚生労働省の人に『うちは社会復帰した人が同窓会をやりよりますよ』といったら、えらく驚かれましてね。どうしてそんなに就職がうまくいくのかとハローワークの人からも聞かれます」と上田理事長。 

「就職した人が問題を起こしたり、受け入れ企業の経営が悪化したら、必ずこちらから迎えに行く」というのが上田理事長のモットー。「これで企業の経営者の方も肩の荷を降ろして、受け入れていただいているようです」 

この実績が認められ、当初全国に10カ所といわれた「障害者就業・支援センター」の受託法人に選ばれ、2005年に八女郡広川町の市街地に支援センター「デュナミス」を開設。

これに先立つ1997年には福岡県より県障害児(者)地域療育等支援事業の認可を受け、施設内に支援センター「よろず屋」を設けた。現在約60人の在宅障がい者の支援にもあたっている。 

 

施設で作業する利用者の工賃アップにも全力。前述の製品多角化に加え、昨年は県下の施設が集まって開発したイモ焼酎「自立」の生産にも参入。売り上げの一部が利用者の給料に充当されるセルプ自動販売機の設置拡大や、自家栽培のブルーベリーとお茶を使ったワインの製造にも乗り出した。

「地域の企業の協力でパート的な就労も少しずつ広がっています。何とかして工賃を上げませんとね」。上田理事長の奮闘は果てしない。

【問い合わせ先】
電話0943-54-2233