改革の姿勢見習おう(2)街づくりへの取り組みに期待 [2011年5月12日10:28更新]

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(11年4月号掲載)

大牟田市役所ただ、黒字になったからと言って喜んでばかりはいられない。 

大牟田市の1958年の人口は20万を超えていたがその後減少、2010年には約12万4000人に。他の人口10万以上の都市と比べても人口減少率・高齢化率は高く、同年4月には過疎地域に指定されることとなった。 

緊縮財政を敷き市民の負担を増やすことはサービス低下につながり、そうなれば人口流出に歯止めをかけることは難しく、税収は減るばかり。地方交付税頼みの財政から脱却するためには、多くの人々が集うような魅力的な街へと変わっていかなければならない。  



大牟田市では現在、三井三池炭鉱関連施設の世界遺産登録を目指そうという動きが出ている。同施設はすでに09年、「九州・山口の近代化産業遺産群」の1つとして世界遺産暫定リストに記載されており、古賀市長も昨年2月の会見で「本登録へ向け全市民を挙げて気運を盛り上げていかなければならない。地域資源に光を当て今後の街づくりに活用していく必要がある」と意気込みを語っている。 

厳しい経済状況が続く中、こうした新たな街づくりへの取り組みが成功するかどうかが、大牟田市の未来を大きく左右することは間違いない。1度は次なる財政破綻候補として挙げられた大牟田市が努力を重ねた末に大きく浮揚すれば、他の自治体へ与える影響は大きい。それだけにぜひ成功を収めてほしいものである。

転ばぬ先の杖  

本紙はこれまで、同じ筑後地区の柳川市やみやま市について報じてきた。両市とも、数年前までの大牟田市ほど財政状況が悪化しているわけではないが、人口流出や税収減に悩む点では同市、そして他の多くの地方都市と同じである。だが両市政を取材する限り行政や議会、つまりは市民の危機感は極めて低いように思えてならない。 

柳川、みやま両市に共通するのは合併で新市政がスタートしている点だ。05年に合併した柳川市では旧大和町長だった市長と議会が対立。09年に新市長が誕生したがこれまでの間、市発注の公共工事をめぐり地元建設・土木業者による談合が常態化。本紙はこのことを何度も報じ、支出のムダを省くためにも早急に策を講じるよう提言してきたがいまだ手つかずだ。 

また07年に発足したみやま市も、低レベルな行政・議会についてはすでに報じた通り。合併によって複数の自治体が一緒になったために市としての一体感を持てていないことが、1つの要因に挙げられるのではないか。 

 

3月には九州新幹線が全線開通した。福岡と熊本の中間に位置する筑後地区には船小屋駅があるものの、例えば観光客が同地区を素通りしてしまうおそれがあるなど、地元経済への悪影響を懸念する声がすでに一部で上がっている。

にもかかわらずこうした状況に対する両市の危機感、将来を見据えた街づくりにあらためて取り組もうとする気運は、少なくとも筆者にはほとんど感じられない。 

転ばぬ先の杖。末期症状を迎えてから重い腰を上げても遅い。そうせざるをえない事情があったとはいえ早い段階から行財政改革に着手した大牟田市と、のんびり構えていた他の自治体との立場が逆転する日が来る可能性も、ないとは言い切れまい。