とんかつ廣(ひろ)の心意気~タッケイ・住吉の美味しいもの巡り [2015年5月2日18:06更新]

こと食に関しては、誰しもが各々の一家言をお持ちだと思う。かくいう私にも貧乏舌なりの意見はある。
今日は西長住の”とんかつ廣”について、貧乏舌の語部(かたりべ)よりご報告をしたい。

前置き1.トンカツとは豚肉と小麦粉と卵とパン粉と食用油の集合体である。とかく料理名というものは全て総称だ。ひとつの料理に複数の食材や調味料が数種類使われ、それらが交わり、溶け合い、それぞれの材料単体の姿からはかけ離れた美しい集合体へと変貌もする。あたかも一軒の家が材木やセメント、ガラス、化学繊維などの集合体であるように。またオーケストラのソレが楽器や演奏者であるように。

そしてお店で料理をいただくとは、ただ食材を口に運ぶのではない。店のしつらえから始まり、接客対応や料理の器、盛り付けにいたるまでの全てを、五感を通していただくのである。もちろん、そのようなことは殆ど無意識下で感じ取るのであるが、それゆえ全体的な印象として店の評価・格につながるのである。

前置き2は短めに。リーズナブルであるとはいかに?辞書をひもとけば「適正価格」とあるが、より実際的に云うなら「得した感」だ。それは提供する側の心意気であり良心といえる。

そんなお店の話である。

では本題。夜9時頃に目上の方と二人で入店。けっこう遅い時間なのに快く対応していただいた。
この日注文したのはメニューの一番上に記載されたロースカツ定食。
暖かいお茶をいただきながら、しばし歓談。もちろん僕らと語らいながら、店主は手際よく調理を進める。
そうするうちに香ばしい香りとともに、膳で定食が運ばれてきた。お好みで塩とソースと辛子、キャベツ用のドレッシングが用意されている。まずは茶をすすり、カツ2切れに塩を振っておもむろに一口、肉厚のカツをサクリとほおばる。「やばい。これマジやばくね?」脳内で俗語の感嘆句がかけめぐる。そう、美味いのだ。
定食の内容は150グラム~160グラムの柔らかなロース肉のトンカツ、円錐状にそびえるふわふわのキャベツ、香の物、箸休めの小鉢、ごはん、汁物の椀のフルセット。

美味しく頬張りながら、なにげなく店内を見渡す。赤御影の7人掛けカウンター、2人掛けと4人掛けのテーブル席など、すべて余裕をもった間隔で配置され、店構えや内装のテイストは和風~和モダンで、とても落ち着いた雰囲気である。
寿司や天ぷらの割烹料理店などと遜色のない作りだ。いわゆる「店の格式」さえ感じさせる。そして料理は味・ボリュームともに満足とくれば、もちろんお値段もそれなり張って当然。ところがこの店には、上・特上などのお肉の区別さえない。大げさに言えば選民的な優越感も、卑屈な劣等感もこの店には存在しないのだ。カジュアルな家族連れも、フォーマルなカップルも、皆等しくこの店の掌(たなごころ)の上で幸福な時間と価値を共有している。

前置き1を思い出していただきたい。一つ一つの材料からなる集合体としての料理、その料理を含む総合的な価値としてのお店の評価を、私なりに紐解いたつもりだ。
それを踏まえて「とんかつ廣」を評するなら、このお店には「格」と「心安さ」が違和感なく同居しており、それはデフレにまみれた今の外食産業にあって、このお店の揺るがぬ覚悟であり、他店との差別化を図れる価値でもあるのだ。

なのに、だ。メニューに書かれたお値段だけがその価値からハミ出している。お客の方向に。
なぜならロースカツ定食が950円(税別)。あくまで私感だが、この内容なら1,500円以上というのが妥当だろう。一番高いものでヒレカツ定食1,100円。これをお店の心意気といわずして何といおう。

ここで前置き2をリピート。リーズナブル=得した感である。そしてそれは提供する側の心意気であり良心だ。
そんなお店”とんかつ廣”の紹介をさせていただいた。

貧乏舌に何がわかると叱られるかもしれないが、是非ご自身で確かめていただきたい。まさに「リーズナブル=得した感」に包まれること請け合いだ。

【タッケイ・住吉の美味しいもの巡り】

㈱エスアールエス宅継 (タッケイ) 
代表:住吉 英智
本社:福岡市中央区舞鶴2-7-1-313
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