伝統建築をめぐる冒険~古民家探訪シリーズ~横大路家 ① [2015年5月22日10:49更新]

外側と内側の境界があいまいな日本の農家型古民家。
なかでも九州最古級の古民家に暮らすとは一体どういうことなのか。
糟屋郡新宮町にある、国の重要文化財「横大路家住宅」。
その現45代当主に伺った大変貴重なお話の数々。
生活してみなければ分からない、そのリアルな一面をご紹介したい。


見学の方からはよく、夏は涼しくて暮らしやすそうですね、と言われます。
確かに涼しいのですが、問題は虫。
就寝中に“ボトッ”という音がすれば、それはムカデが付近に落下した合図。ゴキブリを捕食するため家の中に入ってくるだけに、ムカデの大きさは少なくとも15センチ以上。
その音で目覚めなければ、高い確率でムカデに咬まれてしまう。死ぬことはないけれど、ひじょうに痛い。
音や気配に対して常に敏感でなければいけませんね、とのコトだ。
なんとも大変な話である。

そこで横大路家では虫除け、防菌、抗菌また建材の耐久性向上のために、釜戸(カマド)の火が絶やされることはない。
だが、それでも煙をかいくぐってやってくる虫たちもいるので、虫との共生は覚悟しているとのコトだ。

お話をされている最中も炊き続けられているカマドの火。
これはその昔の平安初期(西暦806年)、唐から日本に天台宗をもたらした、伝教大師・最澄から授けられたという「法理の火」を、この家では代々絶やすことなく守り続けられていたそうで(※現在は太宰府の妙香庵に移設)、その当時の様子が偲ばれた。

お話を伺いながら屋外に出て仰ぎ見た、茅葺屋根全体に充満した煙が青い空にもうもうと立ち上る姿はなかなかに圧巻であった。

【古民家探訪シリーズ~エスアールエスタッケイ代表 住吉 英智】

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