大手の横暴 許さない 天神プレイスめぐる訴訟から(2) [2011年7月15日14:25更新]

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(11年6月号掲載)


天神プレイス(福岡市中央区今泉)

大成建設は「もっと高く買ってほしい」と求めたがやずや側はこれを拒否。それでも売却先はやずや以外には見付かりそうもなく、これ以降、大成は山本氏抜きでやずや関係者と会うようになったという。 

最終的には44億円で折り合いがついたものの「私を外して手数料を浮かせればその分、損失が補てんできる。要するに大成は自社の利益しか頭にないのです。

売却先を紹介し交渉したのが私であることは事実であり、それでも手数料を支払わなくていいのであれば、われわれ不動産業者に死ねと言うのと同じです」



一体の取引か、別個の取引か?  

この訴訟でもう1つ注目されるのは、中間省略登記に関する問題である。 

中間省略登記とは建物の所有権などが順次移転した場合に中間者への登記を省略し、後に権利を取得した者に直接、登記を移転すること。登録免許税や不動産取得税などを節約できる。

「05年に不動産登記法が改正されて中間省略登記は事実上、認められなくなった。ただ、第三者のために行った売買契約と、実際の取引が一体のものと認定された場合だけは、これが認められるのです」(山本氏)。 

大成建設は09年7月ごろごろ、アーム・レポから請負代金の代わりに天神プレイスを譲渡される見込みであることをやずや側に伝えた。そして同9月30日、天神プレイスはまずア社から大成へ譲渡され、大成からやずや側へ転売された。建物の所有権と土地の賃借権は、中間省略登記によってやずや側へ移された。

 

なぜ大成建設はこのような手法を取ったのか?

「ア社ではなく大成がやずや側へ売却した形にすれば、損失は無税で償却できる。さらに、中間省略登記を利用することで多額の税金を納めなくていい。これもやはり、自社の利益のためです」(山本氏)。

ところが判決では3者間の譲渡・転売は一体ではなく別個のものだったと認定。山本氏の請求を棄却する根拠の1つとした。「そうであれば中間省略登記は成立しないことになるし、大成は不動産取得税など計約1億4500万円を支払わなければならない。取引の実態と矛盾する」(山本氏)。

業界のために戦う  

「判決を聞いて正直、驚いた。こんなでたらめな判決が判例として残れば、悪意のある売り主・買い主が仲介手数料や税金を免れるために中間省略登記を悪用する例が多発する。そうなれば不動産業者にとって死活問題です」

山本氏はきっぱりと言い切った。「大手だからといってこんな横暴が許されるはずがない。業界のためにも、徹底的に戦いますよ」