大手の横暴 許さない 天神プレイスめぐる訴訟から(1) [2011年7月14日10:18更新]

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(11年6月号掲載)

天神プレイス(福岡市中央区今泉)福岡市の中心部、中央区今泉1丁目にある複合商業施設「天神プレイス」(写真)。この売買をめぐって起こされた訴訟が、不動産業界など関係者の関心を集めている。 

「大手企業の横暴や、でたらめな判決がまかり通れば、われわれは死ねと言われたのと同じ」。一審で敗訴した原告の不動産業者はこう憤る。「他の業者のためにも、戦っていく」 

この不動産業者の証言を元に、訴訟で浮き彫りになった問題点をまとめた。 



 

天神プレイスは、「都市再生機構」(UR)が行った今泉地区の再開発プロジェクトの一環として、フクニチ新聞本社跡地に建てられた、ホテルやオフィス、住宅などの複合施設。地元デベロッパー「アーム・レポ」(中央区)が手掛け、「大成建設」(東京)が建設工事を請け負って08年春に完成した。 

当初はア社が不動産投資会社「セキュアード・キャピタル・ジャパン」(東京)に約70億円で売却し、その中から大成建設に建設請負代金約46億5000万円を支払う予定だったが、セ社が撤退したことで売却先は白紙に。

そのためア社から「地元の有力企業に売りたいので紹介してほしい」と依頼されたのが、不動産業「アークエステート」(博多区)の山本博久社長だった。 

山本氏は健康食品大手の「やずや」(南区)に話を持ち掛け、08年末から交渉を開始。翌09年3月には、売買が成立した際に仲介手数料として6300万円をアーム・レポが山本氏側に支払う内容の契約を結んだ。 

売却金額が折り合わず交渉は難航したが同年9月、約44億2000万円で売買契約が成立し、即日決済された。だがア社からの仲介手数料は山本氏側へ支払われなかった(やずやからの手数料3150万円は受領)。このため山本氏は同年12月、ア社と大成建設を相手取り、手数料を支払うよう求める訴訟を起こした。

今年1月の福岡地裁判決(前田郁勝裁判官)は、原告側の請求を棄却。山本氏は控訴し現在、同高裁で審理が続いている。

関係ないはずの施工業者が・・  

「天神プレイスの売却は所有者のアーム・レポとやずや側とで進めるべき話であり、その間に立って条件を調整し契約を成立させるのがわれわれ不動産業者の仕事です。ところがその過程で、本来なら関係ないはずの施工業者、大成建設が介入してきたことから今回のトラブルに発展した」

山本氏はこう説明する。 

やずや側は、当初、購入金額として42億円を提示。だがこれではURへの土地保証金約4億円を除くとア社には38億円しか入らず、大成側へ支払う代金には8億円以上も足りない。 

大成建設は08年11月、天神プレイス建物に約46億円の抵当権を設定していた。これを売却するには抵当権を外さなければならず、つまり、大成の了承なしには売買は成立しない。これを理由に交渉に介入、大成建設とやずや側、山本氏とが面談したのは09年2月のことだった。

(続く)