現人(あらひと)神社~住吉三神の本津宮 [2015年10月30日17:30更新]

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 数ある祭神(神社で祭られているカミサマ)の中でも、上位に入るであろう「住吉三神(住吉大神)」は、文字通り神様3柱の集合体である。
底筒男命(ソコツツノオノミコト)、中筒男命(ナカツツノオノミコト)、表筒男命(ウワツツノオノミコト)の3柱で、いずれも「筒男(つつのお)」の文字が入るので筒男三兄弟、もとい、筒男三神とも称される。
住吉大神を祭る神社の数は約2000社余りにのぼり、社名にその名を冠した住吉神社だけでも全国に約600社ある。
とりわけ三大住吉(大阪、博多、下関)などは、それぞれ総本社だったり、始原だったり、また荒魂本宮であるらしいが、ようするに「ウチが元祖」ということだ。

そんな巨大勢力に対して柔らかにこう主張する神社がある、「わが社こそが住吉の本津宮=発祥の宮である」と。
那珂川町の住宅街の一角にひっそりと鎮座する古社、その名を「現人(アラヒト)神社」という。

主張の概要:
神功皇后が大陸遠征から凱旋する折、筒男三神が船の穂先に姿を現し、波風を鎮め水先案内をして、神功皇后は無事帰還した。
神功皇后はそのことに深く感謝し、「筒男三神が現世に人の姿で現れた=現人神(アラヒトガミ)だ!」として、その神が鎮座した地、つまり当宮に現人大明神の尊号を与えた。
そののち神功皇后が大和へ戻る際、筒男三神たる現人神の和魂(ニキミタマ)は大阪住吉の地に祭られ、「住吉三神(住吉大神)」とも呼ばれるようになった。
つまり、筒男三神 ⇒ 現人神 ⇒ 住吉三神 である。
福岡の住吉神社には当宮から御分霊されたのだ。
後年、戦後時代に戦火で社殿や社人の多くを焼失してしまったが、江戸時代に復興されて明治頃に現在の「現人神社」に改称となった、・・・とのこと。
以上が主張の概要である。


ことの伝承の真偽はともかく、日本最古級のいわれを持つ神社がこの地に存在することに驚いた。国道385号線の「現人橋」交差点から東に折れ、那珂川中学方向に入って程なく、神社は住宅地に突然現れる。
南区大橋から南畑ダムを経て、吉野ヶ里へと抜けるこの国道は、子供の頃から数えきれぬほど行き来しているというのに・・・、改めて福岡の持つ歴史の豊かさに気付かされた思いだ。
筒男三神は「祓い(ハライ)の神」であり、神功皇后を御守りしたように、天地をともに鎮め護る神。
当然ながら現人神社も、地鎮祭や上棟祭、竣工祭等の祓いの祭典で広く崇敬を集めておられる。建築と不動産に関わる者のはしくれである私にとっても、まことに縁の深い神社なのだ。


鳥居の端をくぐり参道から本殿を仰いだ時、歴史と御神徳を感じ入り、しばし感慨にふけった。
そして後ろを振り返ってみれば、イマドキの家々が立ち並ぶ住宅街で、このギャップがなんともたまらない。


手水舎で身を清め、厳かに参拝させていただいた。


近隣には日本書紀にも登場する「裂田の溝(さくたのうなで」などの名所・旧跡があり、文化財散策ルート「現人神社コース」「裂田溝コース」と称して、那珂川町もこの付近各所に案内板を設置し、遊歩道や駐車場・休憩所も観光用に整備されている。
歴史ファンならずとも、秋の行楽がてら気軽に散策されてはいかがだろうか。

現人神社
福岡県筑紫郡那珂川町仲三丁目六番二十号
駐車場は20台ほど。かわせみバスや西鉄バスなどの停留所あり。

【伝統建築を探る~住吉英智】

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