住友銀行秘史 [2016年11月10日08:46更新]

福岡在住の画家であるオチ・オサム氏は、戦後新進気鋭の画家集団として誕生した「九州派」のメンバーで、家内が画家の真似事で絵を描くところから、オチ・オサム氏との親交が始まって何度か一緒に酒を飲むようになり、個展の際には貧者の一灯で何枚か小品を購入し、いまでも壁にかけている。

今から20年ほど前に、家内が「オチ・オサム氏に画商が付いた」と話していた記憶があり、そのとき内心で思ったのは、購入した絵の値段が上がればいいがなと、取らぬ狸の皮算用をしたことを覚えているが、その後上がったという噂も聞かなかった。

しかしイトマン事件が起こり、朝日新聞の事件記者が報道した記事の中で、イトマン事件に絡んで売買された絵画のリストに、高名な画家とともに、オチ・オサム氏の名前があった。

10数万円で購入していた絵とあまり変わらぬ絵が数百万円、数千万円で売買されていたのかと驚くとともに、どういう人が買ったのだろうという想いに浸ったことがあるが、「住友銀行秘史」を読むと、またさらに面白く、10万人の人々が買った気持ちが理解できた。