地域とのふれあいの場 「カフェさくら」 [2008年5月16日12:50更新]

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(08年4月号掲載) 

カフェさくら福岡市中央区白金2丁目、住宅街の一角に小さな喫茶店がある。4人がけの丸テーブル2つとカウンター席が4つ、名前も「カフェさくら」とかわいい。自分の街にもひとつあったらいいな、と思える喫茶店である。

そんな「カフェさくら」のスタートは、2002年11月に開所した精神障がいや知的障がいのある人たちのための「さくら共同作業所」。前回紹介した「アトリエのぞみ」とは姉妹施設である。



翌年の03年7月に「カフェさくら」をオープン。以後、割り箸の袋詰めやタオル折り、オリジナルの手工芸品の製作のほか、コーヒーをたてたり、接客したりという喫茶業務が加わり、作業の幅が広がった。

 

「喫茶店のいいところは、いつも地域の人とふれあえるところですね。普通だと作業所に気軽に入ってきてもらうというのは難しいんですけど、喫茶店だとそれができます。利用者(障がいのある人たち)にはいろんな刺激になりますし、お客さんに福祉の問題を話題にしてもらうこともできます」と指導員の君嶋美智子さんは話す。

メニューは、コーヒー、紅茶、ジュース類のほか、日替わりランチに手作りクッキーなど。とくにクッキーは自慢なのだそうだ。「増量剤や酸化防止剤などを使わない全くの無添加なんです。小麦や卵、バターなど食品そのもののおいしさが味わえると言っていただいています」

「カフェさくら」の存在は、地域にとっても障がいのある人たちとふれあえる貴重な場になっている。地域の高宮小学校の体験学習の場にしばしば利用されているほか、校区の人権尊重推進協議会の啓発活動としてボランティア体験にも活用されている。「子どもたちって垣根がないんですね。自然に話して、すぐ一緒に笑いあったりしています。感想を聞くと、とても楽しかったといってくれます」

 

このように地域に支えられて順調に運営されているが、制度の変遷などで実情はなかなか厳しいのも現実だ。「カフェさくら」はこの4月、共同作業所という形から障害者自立支援法に基づく「就労移行支援事業」という形態に移行した。これまでは、障がいのある人が苦手なコミュニケーションをとることを重視しながら、働くことに慣れていくという、ややゆったりとしたやり方だったが、今後は「就労」を強く意識した訓練の場ということが強調される。

「原則は2年間、その後1年間の延長も可能なのですが、とにかくその期間で一定の結果を出さなくてはいけません。私たちにとっては新たなたくさんの課題を与えられたということです」。そのため、従来の飲食店業務に加えて菓子製造業の認可もとった。「これからは積極的に販路を拡大して、仕事の領域を広げていくつもりです」

新たな海に漕ぎだす「カフェさくら」を見守りたい。 

【連絡先】
  福岡市中央区白金2-6-6
  電話092-525-4482