「広報ちくご」は私的メディアか [2021年11月8日09:22更新]

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市長選挙が始まった筑後市役所の関係者から、「広報紙の表紙を見て下さい」という連絡を頂いた。

広報紙を発行する自治体は、住民に興味を持って 読んでもらうために いろいろと工夫をするものだ。
特に表紙は重要で、季節ごとの行事に参加した一般市民、特に子どもたちの笑顔の写真が採用されることが多い。
数ある情報のうちどれを掲載するか、どの写真を使うかなど、編集担当職員がアイデアを出し合い、ゲラが出来上がると 管理職、そして最終責任者の首長が決裁するという流れである。

さて、広報ちくご11月号の表紙(下写真)は、建設中の保育園で 子どもたちと市長が写っている写真で、「新しい園舎で何したい?」というタイトルが付いている。
役所の広報では、建物が完成してからお知らせするのが一般的だ。
建設現場に現地視察に来た市長のところに わざわざ園児を呼び出し(ヘルメットも着用せず)
記念撮影をする意味がどこにあるのだろうか。
次ページには、「市への移住・定住のきっかけになる施設となることを期待しています」との市長の言葉まで掲載している。




さらに、ページをめくり 見開きの「ちくご日和 ~まちの話題~」というコーナーには、7つの記事全てに 市長が収まる写真が掲載されている。
福岡市にも 市政だよりがあるが、あの高島市長ですら このようにページを独占しているのは見たことがない。



市長の写真を多用する編集は年間通してなのか、念のため 過去の広報紙を全て確認してみたところ、ここまで市長の写真が多用された例はなかった。
平成29年11月号(下写真)では、表紙が運動会の写真、子どもたちの綱引きに当然市長は写っておらず、また「ちくご日和」は 半ページで、市長が写る写真は1枚だけだ。

広報ちくごは、総務部総務広報課が編集とされているが、自身の写真を多用するよう指示をしたのか してないのかはともかく、発行責任者は市長、広報の私物化と指摘されても仕方がないだろう。

また、選挙管理委員会は 今回の広報11月号の表紙を問題視していないというが、選挙管理委員会の事務局は総務広報課が兼任しているというから驚きだ。

福岡都市圏のある自治体の選挙管理員会の委員は、「公正公平な選挙が行われるよう監督指導すべき選管事務局が、市長選挙のある月の広報紙に現職市長の写真を多用することを 事前に知り得ていたなら、当然 ストップをかけます。福岡都市圏では考えられません。」と話す。

市長直属の総務広報課が選管事務局を兼ねているのは 殆どの地方自治体で同じだが、だからこそ 選挙近くに 広報紙には 公平性を疑われるような内容を掲載しないよう細心の注意を払うものである。

田舎の役所だから何でもありという時代でもない。
選挙は 公平公正に行われるべきで、選挙月に現職市長の写真を多用する広報紙を 平気で発行する市役所を、市民が信用するはずがない。
「法に触れないからいい」ということはなく、市民を分断するようなやり方を 市役所が行うべきではない。

最終責任者は市長だが、編集の決裁をした管理職にも責任がある。
最近の公務員はコンプライアンス意識も高く、今回の広報紙の公平性に疑問を持つ市職員は少なくない。
日々 市民と向き合い 真面目に業務に励んでいる 部下が見ていることを 忘れてはいけない。