生涯のある人もない人も 出会いの場目指す「工房まる」 [2008年1月31日11:12更新]

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(08年1月号掲載) 

工房まるの作業風景福祉作業所にはさまざまなカラーがある。そこでやっていること、集まってくる仲間たちの個性などで色付けされるものだが、何といってもその作業所を創設した人、スタッフによって色付けされる側面が強い。

これまでもそれぞれにユニークな作業所、そして中心的なスタッフの個性を紹介してきたが、福岡市南区野間3丁目の住宅街にある「工房まる」も、とても個性的な作業所だ。



開設は97年4月。施設長の吉田修一さん(36)が、それまで1年ほど働いていた作業所を引き継ぐ形で開設した。しかし、吉田さんは初めから福祉分野の仕事を目指したわけではなかった。

きっかけは大学時代。九州産業大学写真学科の卒業制作の被写体に養護学校の子どもたちを選んだ。これが障がい者との最初の出会いだった。とても惹かれるものがあった。

「自分はこれまで障がいのある人に出会わなかった。なぜ出会わなかったんだろうと、それから考えることになるんです」。大学院に進んで、その思いは強くなった。修了制作では障がい者施設や障がい者の家庭に足しげく通った。

そして「日常的に健常者と障がい者が出会う場所がなかった」ことに気づいた。それが「自分でそんな場所を作りたい」という思いにつながり、作業所に向かわせたという。

 

人と人が出会うということは、そこにコミュニケーションが成り立たなければならない。しかし、コミュニケーションにはきっかけが必要だ。そこで吉田さんは彼ら彼女らの表現を引き出すことで、それがコミュニケーションの手がかりになるのではないかと考えた。

まず、動物や魚の形の木製のマグネットをみんなで作ってみた。絵を描く人、型紙を木に張り付ける人、切り抜く人、最初は共同作業だったが、少しずつ自分の好きなことが見えてきた。「4年目でした。その中で絵の好きなヒロシが描きためた絵で個展をやったんです。そうしたら皆、自分もやりたいと絵を描き始めたんです」

今では個展をやった仲間は3人になり、仲間たちの創作活動はコーヒーカップや小さな人形などの陶芸、デザイン、木の彫刻などにも広がっている。「とても創作意欲にあふれた場所になったと思っています」

工房まるでは、これらの作品が本当に欲しいと思って買ってもらえるものになることにも心を砕いてきた。 「maruworks」と名づけた作品展を県立美術館や天神のソラリア1階ゼファなどで開いたり、「てくてくプロジェクト」と名づけて近隣の美容室やカフェなどを会場に作品を並べたりしている。

また、ウェブ上に「DJまさしのブラックホール」と名づけたトーク番組をポッドキャスティングで載せるという試みにも挑戦している。これもすでに5回。3回目からスポンサーもついている。 

【問い合わせ先】
工房まる  WEBサイトhttp://www.maru-web.jp/

電話 092-562-8684  
FAX  092-562-8688