視覚障がい者が代表務める 「喫茶ポエム」 福祉作業所 [2007年11月21日11:34更新]

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(07年11月号掲載) 

喫茶「ポエム」福祉作業所も30年余の歴史を重ねる中で、その形態も多様になってきた。今回紹介するのは喫茶店。福岡市南区の大型団地「若久団地」の入り口にある「喫茶ポエム」福祉作業所(写真)である。

代表の橋口千寿子さんは自身が視覚障がい者。 「同じ障がい者の立場から視覚障がいを持つ人たちをサポートしたい」 と2004年に立ち上げたユニークな作業所である。



 

橋口さんは8年前、 視野が次第に狭くなる病気を発病した。失明は避けられない病気だった。

営業職として活躍していた橋口さんは将来を考えて、電話交換手の資格を得るために大阪で研修を受けることにした。そこで障がい者の仲間達と交流する中で、「ピアカウンセリング」に出会った。

ピアとは同じ背景を持つ仲間のこと。仲間同士で悩み事や生活上の相談に乗ることで、 本音で話すことができ、 問題解決により近づけるのが利点だ。そのため、 障がい者の職域を広げる意味もあって、 専門的なピアカウンセラーが制度化されている。

「私の進むべき道はこれだと思いました」 と橋口さん。早速、訓練を受けて資格を取った。しかし、 福岡に帰って自治体や関係の施設などを回ったが、 期待は裏切られた。「東京や大阪はじめいくつかの自治体では、 一施設に一人のカウンセラーが制度化されているんですが、 福岡では全くありませんでした」

そこでへこたれる橋口さんではない。「なければ作ろう」と03年11月に「自立生活支援センター・ピア福岡」を立ち上げ、 NPO法人も取得した。その活動形態を模索する中でたどり着いたのが、 喫茶店という形の福祉作業所だった。

「視覚障がい者は障がいの性質上、 外に出ることや人とコミュニケーションを取ることが苦手です。 喫茶店ならば、 接客でも調理でもお客さんや仲間と声を掛け合わなくては仕事ができません。それに、障がい者と地域の人たちが交流できる場としても喫茶店がいいのでは、と考えたのです」

そこで、福岡市に福祉作業所の開設を申請、04年6月に認可され、 同年9月に「喫茶ポエム」を開店した。「お金もなければ、 申請書の書き方も分からないという、全くの手探り状態でしたが、足を踏み出せば、いろいろな方が支援してくださり、 何とかなるものです。 これも障がいを持つ仲間に伝えたいことの一つです」

現在、 橋口さんの他に職員が4人、利用者(視覚障がい者) は23人登録しており、 毎日5~6人が出勤する。「怖がらずに何でも挑戦するのがモットーで、 最初はつまずいていた配膳もできるようになり、 今では包丁も扱えるし、 天ぷらを揚げることもできるようになりました」

コーヒー250円、 日替わりランチがコーヒー付きで500円、 チーズケーキセットが300円。「クッキーも評判いいんですよ。手作りですから、レーズン入りなど要望にもすぐ応えられます」

《問い合わせ先》
電話  092-541-7773   
FAX   092-512-2622