地域とともに生きる 「工房陶友」 [2007年8月15日14:06更新]

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(07年8月号掲載) 

福祉作業所というと、障がい者たちが部屋の中で黙々と作業しているものというイメージを持つ人が多いのではなかろうか。もちろん、作業自体は部屋の中で黙々とやるほかないが、作業所の活動は地域に大きく広がっている。

アルミ缶回収に地域を回ったり、地域の祭りに自分たちの作品をもって出店したり、地域の学校と交流したりと、多くの作業所が地域に積極的に出て、つながりを深めている。



財政基盤の弱い作業所は地域の支援がなくては存続できないからだが、それだけではなく何か地域の役に立ちたい、作業所がその地域にあることで、新しいきずなをその地域に生み出したいといった願いがあるからだ。

そんな地域とのつながりを積極的に作り出そうとしている作業所に、ひかり作業所分場施設「工房陶友」がある。その名前でも分かるように陶芸好きの障がい者が、福岡市中央区地行1丁目の伝照寺境内の一角を借りて1992年にスタートした作業所。現在は、陶芸班に紙漉き班が加わり、さらに「町の豆富屋さん」と名づけた店を持つ食品班もできて、総勢16人が職員6人とともに働いている。

仲間たちはさまざまなところに顔を出す。近くの西日本短大で5月に開かれた「地域ふれあい祭り」にはバザー出店。販売だけでなく、演芸会のステージにも飛び入り参加して地域の人たちと交わった。

7月には地域の陶芸グループ「自遊会」の人たちに支援されて、工房近くの唐人町商店街で陶器と紙漉き和紙を並べて「土と紙と仲間達の作品展」を催した。また7月末、筥崎宮の夏越し祭にも出店。こちらは陶友応援団「ゆうゆう」が支援してくれた。

こうしたイベントだけではなく、陶友の中で週1回、地域の人たちに呼びかけて陶芸教室を開いており、陶芸班の仲間たちが得意の陶芸の腕を振るって先生役を務めている。また食品班の仲間たちが火曜から金曜までの毎日、豆腐や総菜などを売り歩くリヤカー販売は、地域にすっかり定着している。

それだけに、気軽に工房に立ち寄って仲間たちの作品を見たり、世間話をしていく人たちも多い。そんな人たちが集まって作ったのが前述の陶友応援団「ゆうゆう」。「作業所にくる障がい者だけが仲間じゃない。ここに集う人はみんな仲間だ」という陶友の理念を形にした。「ゆうゆう」の会員は120人ほどだが、工房の機関紙「陶友通信」は毎月3000部も配布している。

しかし、この陶友にも障害者自立支援法の重圧は容赦なくのしかかっている。施設長の大脇友弘さんは「仲間たちは『なぜ給料袋に明細書しか入ってないの』といいます。自立支援法の応益負担で利用料が課せられたため、せっかくの給料がそれで飛んでしまうんです」と語る。

「でも、負けるわけにはいきません。仲間たちと地域の人たちと力をあわせ日本一の作業所を目指します」と力を込めた。

《問い合わせ先》
工房陶友 
   電話   092-771-5517