県議会 副議長ポストめぐる泥仕合の内幕 [2007年5月15日10:10更新]

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(07年5月号掲載) 

福岡県議会棟(福岡市博多区)4月の統一地方選で新たな顔触れとなった県議会(88人)は、改選後初めて開かれる臨時議会を前に、副議長ポストをめぐる駆け引きに明け暮れた。

4年前に分裂しこのほど再統一を果たした自民党系会派は、過半数割れしたものの第1党を維持し、「野党にポストを渡すな」と指定席の議長に加え新たに副議長のイスも要求。一方、選挙戦で躍進した民主党系会派は「第2勢力が副議長を出すのが常道だ」と譲らない。この両者に加え第3勢力の思惑も絡んだ、政策論争そっちのけの「泥仕合」の舞台裏を、レポートする。

本記事掲載時にはすでに決まっているはずの副議長ポスト。はたして、結果はいかに?
(写真=福岡県議会棟)



“野党”に過敏反応

「野党、野党って、みなさん何か勘違いしていないか」。民主、社民系会派の民主・県政クラブの吉村敏男会長は8日、報道陣に吐き捨てた。

民主、社民は4月8日投開票の知事選で、4選を果たした麻生渡氏に対抗馬を擁立して敗北。奥田八二・元知事時代から守ってきた「県政与党」の座から転がり落ちた。

だが、吉村会長にも言い分があった。「自民も公明も本当の与党じゃない。知事選で現職の政党推薦はしていないじゃないか」というのだ。多選候補の推薦を禁じた党本部の方針もあって、自民と公明は知事選でともに麻生氏の推薦を見送った。麻生氏陣営が「県民党」を掲げ、政党色を極力薄める戦略を展開したこともあり、「勝手連」として実質的に現職を支援するという「超法規的」な対応を余儀なくされた。

だからこそ、民主の吉村会長は「野党」との言葉に過敏に反応した。この日、県議会の主要会派代表による非公式会議が持たれ、公明サイドから「野党に副議長ポストを与えるのはいかがなものか」と、難色を示す発言があったとされる。

漁夫の利狙いも

一方、自民と民主の思惑をにらみつつ「漁夫の利」を狙っていたのが、農政連系の緑友会だ。所属9人の少数派だが、県議選で議席を減らした自民党県議団側(41人)に「うちと組めば、過半数(44人)を超す50人になる」とささやきかけた。

もちろん、交換条件は副議長ポストだ。前期4年間を振り返ると、この会派(旧「緑友会・新風」)が計3人の副議長(副議長は1年交替が県議会の慣習)を出せたのも、自民党系会派の分裂劇にうまく乗じたという側面は否定できない。

「独占主張」は演出?

3者3様に思惑が絡み合う泥仕合。もちろん、主導権を握るのは「正副議長の独占」を目論む最大会派の自民にほかならない。

だがその内実は、副議長の適任者が見つからず頭を抱える始末。当選4期前後の中堅をあてがう話はあっても、当事者周辺からは「副議長が『上がりポスト』とみなされ、将来的に議長になる芽が摘まれるのではないか」との声すら聞かれる状況だった。

「民主に副議長ポストを譲り頭をなでておけば、無用の摩擦を生まず、議会運営もスムーズにいく」。当初から自民会派の内部には、こうした戦略的な意見があった。 それゆえに、正副ポスト独占の主張は「民主に貸しを作るための演出にすぎない」と解説する関係者も少なくない。

“紅顔の副議長”?

一方、民主が副議長ポストを押さえれば、そのイスに座る最有力候補とされたのが、県連幹事長も務めるS県議。とはいえ、会派内部でさえ異論がくすぶる。「舞台裏の寝技には定評があるが、酒のにおいをプンプンさせて議場に現れる男に、副議長をさせていいのか」。はたして、紅顔の美少年ならぬ「紅顔の副議長」が誕生するのか? 

県議会の顔となる正副議長は、15日の臨時議会で正式に決まる見通しだ。