【お耳拝借!】脱メタボ 自己管理して健康的な生活を [2008年12月21日09:12更新]

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福岡赤十字病院 健康管理疾病予防センター長 田中道子(08年12月号掲載)

福岡赤十字病院 田中道子氏「メタボ」という言葉はいまやごく普通に使われるようになりました。

正式にはメタボリック・シンドローム(内臓肥満型症候群)。一般に浸透したことは喜ばしいですが、意味や重要性が今一つ理解されていない上に、お笑いの道具にされることもあって、医者としてはやっぱり不本意です。

4月からメタボ健診が義務化されたのはみなさんご存じでしょう。

今日は、メタボリック・シンドロームとは何か、健康的な生活を送るにはどうすればいいかについてお話しします。



沖縄クライシス 

私は沖縄の出身です。長寿県と思っている方が多いのですが、実は最近どんどん寿命が短くなっている。この現象は「沖縄クライシス」と呼ばれています。 

戦後長い間アメリカの占領下にあり、食文化など欧米型の生活スタイルがかなり早い時期から持ち込まれました。例えば日本で初めてファーストフード店が誕生したのは沖縄。こうした食生活の変化などが原因で平均寿命が低下し始めた、と言われています。 

沖縄の男性には肥満の方が結構多いんですよ。つまり沖縄の現状は近い将来の日本を予見していると考えられるんです。食をはじめ、生活スタイルを改善しなければ、いずれは今の沖縄のように肥満から健康を害して平均寿命を縮めてしまうことになるでしょう。 

死の四重奏  

日本人の死亡原因は1/3は癌、1/3は心血管疾患、つまり心筋梗塞や脳卒中です。このうち心筋梗塞と脳卒中については、動脈硬化が進行して起きることが以前から分かっていました。 

ではなぜ動脈硬化が進行するのか。これを調べるうちに高血圧・糖尿病・脂質代謝異常(高脂血症)が原因であることが分かったんですね。この3つはいわゆる生活習慣病で、これに肥満を加えた4つが医師の間で「死の四重奏」と呼ばれるようになりました。 

こうした研究などを受けて1998年、WHO(世界保健機関)がメタボリック・シンドロームという概念を発表しました。これは、肥満に先の3つの要素のうち2つ以上が合併した状態を指します。メタボ健診の目的は、脳卒中・心筋梗塞起こす危険性を持った集団を早期に発見し改善しよう、ということなんです。 

重要なのは内蔵脂肪の量   

テレビCMなどでお腹の周りの長さ(腹囲)を測るシーンがありますね。おかげで「お腹が出ていれば即メタボ」と思っている方もいますがそうではありません。重要なのは皮下脂肪ではなく内臓脂肪の量なんです。 

これまでの研究で、内臓脂肪の中の脂肪細胞が動脈硬化に関わるホルモンを分泌することが分かってきました。脂肪細胞が大きくなると動脈硬化を進める悪い物質を出し、抑制する物質を出さなくなります。小さくなると逆になります。 

つまりメタボの早期発見で重要なのは、お腹の中にある内臓脂肪細胞の大きさを知ること。腹囲を測るのは最も手軽で分かりやすい方法、1つの目安となるわけです。そして腹囲だけで一喜一憂せずきちんと健診を受けることが大切です。 

「思いわずらうな」  

肥満の原因はいろいろあります。過食、運動不足・・。その根本には精神的なストレスがあります。仕事でストレスがたまる、発散するために1杯飲みに行く、深夜に帰宅する。こうしたことは多くの方が経験していると思います。いかにストレスを解消するかが肥満防止の1つのポイントと言っていいでしょう。

私の祖母は106歳で亡くなりました。この色紙(写真)は祖母が97歳の時に書いた物です。「天は自ら助くるものを助く」。調べたら「天は他人に頼らずに努力する者を助け幸福を与える」という意味だと分かりました。

「まぁ、おばあちゃんはこの歳になっても、まだ何か天から授かりたいの?」(笑)。 

でも後でその意味が分かりました。毎日一生懸命に生きるよう努めれば、すなわち生活を自己管理すればメタボを退治し健康で天寿をまっとうできる。それが天からの贈り物なのだ、と。 

祖母の口癖は「今日のことを精一杯やり、明日のことを思いわずらうな」。くよくよ考え悩むより、ぱっと忘れて前向きに生きる。ストレス解消法の参考になれば、と思います。

 

【田中道子】 <たなか・みちこ>
1960年、沖縄県那覇市生(48歳) 福岡市在住
88年、 九大医学部卒 93年から福岡赤十字病院に勤務
日本循環器学会認定専門医
日本人間ドック学会認定医
日本禁煙学会認定指導医

【快適環境創造フォーラム】 
快適な環境づくりを目指し健康産業やデザイナー、建築家など様々な分野の専門家らが参加する交流会

★本紙があらためて取材、再構成しています〈随時掲載〉