公的支給の不正が増加 [2013年2月19日16:48更新]

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最近、生活保護や母子手当受給での不正の件をよく耳にする。福岡県でも詐欺事件として警察サイドが内偵しているケースがあると聞く。そのうちには立件されたものもあるらしい。
そもそも昔から公的支給に不正はつきものといわれてきたが、国の財政難と絡む社会的な問題としてこの不正受給の問題が大きく浮かび上がってきた。以前は、役所が調査してもなかなか実態が判らず、しょうがないかとなっていた問題だが、最近は警察が詐欺事件として捜査に乗り出すケースが増えてきた。

進む摘発

月額4万1550円という母子手当。もちろん所得制限がある。2010年の受給者は100万人を超えた。確かに離婚率も年々増加、母子手当を受給しながら子育てをして働く女性が増えているとはいえ、100万人超は社会問題だ。しかもそのほとんどは一般年収の4割程度の収入しかないワーキングプアと呼ばれる貧困層。アルバイトやパートなどでいくら頑張っても収入は不安定。
このような状況から、中には不正受給にあたるケースもある。よく耳にするのは男性との関係で、同棲したり援助をもらっている場合や、親と同居しているものの住所を別に設定。独立世帯として届けているものだ。役所の調査でダメになることもある。同棲や事実婚の場合は認定が難しく、役所が一度支給したものは、そのまま見過ごす場合もあったが、徐々に厳しくなっている。
今回の福岡県警が摘発した例は自営業を営む親と同居していたもの。世帯収入が母子手当の所得制限を超えるものだったものの別に住んでいることにして、5年に亘り受給したというもので、その悪質性から詐欺事件として立件された。
当初は家族ぐるみの詐欺とみられていたが、ふたをあけてみれば本人が受給条件を維持するためとった行為とわかった。ただ、これも役所の調査ではなく、本人のママ友の通報によるもの。それでも詐欺行為として認定するため、内偵して事実を積み重ねる必要があったというから捜査一つにしても大変な努力がある。
他に役所側が打ち切りにした件では、男性との同棲が確認されたものがあった。これも週一日家に泊まるぐらいなら、問題にならないというのだから、なかなか認定が難しかったらしい。複数の人間から裏付けがとれたこと、綿密な調査によって明らかになったようだ。問題の発覚は、やはりママ友の通報から。

生活保護の場合
生活保護の不正受給は枚挙にいとまがない。2010年段階での不正受給件数は2万5355件、全体に占める率は1.8%。不正受給額は128億7425万円、全体に占める率は0.38%である。なかでも暴力団や暴力団親交者が不正受給の50%を占めていた大阪府の例などもあり、基準認定は年々厳しくなっている。
2012年に摘発されるかも、と噂になったのがX市のもの。なにしろ窓口の職員が絡んでいた事案として噂が流れたこともあり、県警記者クラブでもほぼ全社が注目していた。しかもこの件で内偵中に、受給者が覚せい剤常習者であることも判明、事件はかなり大きなものとなるとの噂がひそかに流れたのだ。詐欺事件にとどまらず、贈収賄事件になるのではという見方まで出たほどだ。さらに元国家公務員が絡む可能性があるとして、2012年最大の事件になるのではと期待された。
工藤会問題でミソをつけてきた福岡県警もこの事件を仕上げれば名誉回復につながるという声まであがった程だ。受給者の覚せい剤取締法違反での逮捕を契機にやっと摘発かとなったが、県警自体が問題を起こし(東署中村警部補の情報漏えい問題)、また衆議院選挙が行われたこともあり、先送りにされてしまった。さらにシャブ中の供述にどこまで信用がおけるかという問題もあり、事件そのものがぼやけてしまった。そして職員の関与が今一つはっきりしないこともあって、現在はストップしているとの情報もある。
確かにこの問題の捜査は難しい。そもそもどこからが悪質なのか、認定基準の線引きがない。それぞれの不正受給は類似性に乏しく、詐欺事件として立件することに手間がかかる。正直言って「あまり関わりたくない」という意見も警察内にはあるようだ。

不正受給防止の道は
不正受給を防止しようとすれば、基準を厳格にしなければならない。だがそれは社会的弱者に対する締め付けにもつながる。垂れ流し福祉はもってのほかだが、かといって弱者切り捨ては社会のさらなる歪みの深化にもつながる。格差社会・デフレ社会の到来以降、生活の厳しさは庶民には身に染みるように迫ってきている。
「家賃の安い市営住宅に住みながら、母子手当をもらって、毎日のように男を連れ込んでいる。明らかに基準にはずれているから通報したのに、なかなか調査してくれない。母子手当はやめられない、なんていいながら贅沢している人をみると、本当に頭にくる」とは、母子手当をもらいながら生活に苦労している母親の言葉。しかも、通報したことを友達にもらしたら、仲間内では無視されるようになったという。通報しても動かない役所。通報したことでスパイのように見られるという現実。何かが狂っていると思うのだが、現実はまだまだ重い。
2013年が社会改革の年になることを願う。