<写真特集>続・知られざる屋久島 ある山師の記録(1) [2010年2月22日09:12更新]

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樹脂を大量に含み、岩のように堅い屋久杉の倒木。チェーンソーの刃が入ると、たちまちのうちに強烈な杉の香りが周囲を漂い始めた。

倒れてもなお、この巨木は生きている-。

黒潮の中に浮かぶ世界遺産の島、屋久島(鹿児島県)。縄文杉など、樹齢数千年を超える屋久杉で知られる森は近年、多くの観光客であふれている。

屋久杉の伐採が禁じられた現在、一部地域に残された切り株や倒木を運び出す仕事に従事する人々、「山師」。これは、屋久島の山と森を知り尽くした現役最高齢の、ある山師の記録である。     



 

その屋久杉は、急な斜面に岩のように横たわっていた。

「根元の直径は4mはあるんじゃなかろうか。2000年ぐらいは生きとった木でしょう」。現役最高齢の山師、高田久夫さん(76)はつぶやく。「縄文杉ぐらいの大きさのは何本も伐(き)ってきたからな。この程度は珍しくないですよ」 

おそらくこの険しい現場で髙田さんたち山師より自由に動けるのは、ヤクザルしかいないだろう。年齢を感じさせない、軽やかな動きである・・。

 

荒川登山口から、日本で唯一残された木材搬出専用のトロッコに乗り込み小杉谷へ向かった。

これが「島」の風景だと誰が想像できるだろう。はるか奥にそびえる宮之浦岳は1936メートル、九州最高峰。西日本では、四国の石鎚山(1982メートル)に次ぐ高さだ。

この山懐に小杉谷事業所が置かれ、山師とその家族500人ほどが暮らしていた。屋久島の経済と文化を支えてきた最前線だった。写真右下の空間は、かつての小中学校跡だ。

 

島の最深部。宮之浦岳と連山を望む。その直下、緑の薄い部分がかつての伐採跡である。

こんなところまで伐採が迫っていた。今わたしたちが見ている屋久島の森は「かろうじて残った森」だといえる。

(続く)