<写真特集>続・知られざる屋久島 ある山師の記録(2) [2010年2月23日10:05更新]

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その倒木があったのは、小杉谷から山の尾根を越え1時間ほど歩いた所である。周辺もやはり、昭和40年前後に伐採された森だという。

「こいつは、表面の風合いから見て、30~40年間はこのままだったんでしょうな」。

幹にコブがあり建材に向かないため伐採を免れたが、その後台風で倒れ、今の状態で捨て置かれたのではないか─こう高田さんは想像する。

 



 

現場の標高は1000メートル。雲が垂れこめ雨が降ってきた。 

岩のように重く堅い屋久杉の解体は 簡単にはいかない。伐り方を間違えると斜面を滑り落ちる。しかもこの木は地面から浮いている。チェーンソーを入れるためには木の下側に潜り込まねばならない。

チェーンソーの音が深く静かな森に響き渡った。同時に、杉の香りがあたり一面を覆い始める。鼻を突くような、強烈な匂いにむせかえる。 

数十年もの時を経て放たれる、生命(いのち)の残照。

 

手順を間違えば、伐った幹が落ちてきて即死だ。「どこをどの順序で伐るか。いつもそのことばかりを考えちょるからな」 

巨木の上で、作業を見守るのは大助。髙田さんが成長を期待する若手の山師だ。

チェーンソーの音が響き渡る現場では、あまり声が通らない。山師たちは、あうんの呼吸で仕事を進めていく。

「木の伐り方は、見ているだけではなかなか覚えない。口で教えるのも、難しいです」と髙田さんは言う。若い山師たちは、険しくてきつい現場をとにかく踏んで、ベテランたちの仕事を見て体で覚えていくしかない。

若い山師と2人で奮闘する高田さん。仕事中は約30kgあるチェーンソーの重さなど感じないという。

(続く)