国庫補助ストップ要請へ(2)自信見せる代理人 計画頓挫の恐れも [2010年6月25日15:15更新]

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(10年5月号掲載)

冠岳(鹿児島県)から見た産廃処分場建設予定地「こちらの示した調査結果に何の反論もないまま、それでも鹿児島県は『大丈夫』と言い張っている。たとえ再回答を求めても、4月の回答以上の新しいものは出てこないでしょう」 

こう話すのは、反対派住民の代理人を務める馬奈木昭雄弁護士(久留米市)である。「答えたくても答えられない、というのが本当のところでしょうが。県の調査や候補地選定作業がいかにずさんでいい加減なものだったか、これではっきりしましたね」 

同弁護士によると、専門家による最終調査報告書がまもなく完成する予定という。「それを踏まえ、近く環境省に出向きます。この事業に対する国からの補助金を鹿児島県に出さないよう求めるのが目的です」 



県によると、国庫補助対象事業費については1/4の補助を見込んでおり、今後環境省と協議する方針。処分場建設費用は約92億円を見込んでおり土地取得費用などについてはこれから検討するという。

「事業規模から考えても、県は相当額の国庫補助を前提に計画を進めてきたはず。それが出ないとなれば、計画は中止せざるをえないのではないでしょうか」(同弁護士)。

ストップに自信  

国との交渉に自信を見せる馬奈木弁護士。だがはたしてそう簡単に補助金支出をストップできるものなのだろうか。 

「国の補助金は一般的に、住民が反対している案件については出さないのが大原則。正当性や公共性に疑問符が付くからです。今回の場合はこちらが反対する根拠を調査報告書の形で提出しますし、県の調査・選定作業がずさんであることも回答書から明白。ですから国としても補助金を出しようがないでしょう。

国庫補助が出ない場合、不足分を県税で補うことも考えられますが、国が不当だと認定した事業について県議会がOKを出しますかね?」 

そうなると当然、事業の「命綱」とも言える国庫補助については県も必死になって要請・交渉するだろう。伊藤知事は自治省(現総務省)出身。民主党幹事長の小沢一郎氏が自治大臣の際には、大臣秘書官を務めたこともあるという。 

「これまでの自民党政権ならいざ知らず、現在は民主党政権。事業仕分けを行うなどむだな事業への支出を極力減らすのが基本姿勢です。万が一補助金を出すことになればその時こそ裁判に訴えますが、おそらくそうはならないでしょう。まあ、伊藤知事のお手並み拝見、といったところでしょうな」(同弁護士)。 

 

県の思惑通り計画が進むのか、それとも・・。知事の肝いりでスタートした処分場建設計画は、国の補助金をめぐって近く、極めて重大な局面を迎えることになりそうである。