ボランティアが親子を見守り 校区ごとに子育てサロン [2010年9月1日09:08更新]

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(10年7月号掲載)

子どもたちが遊ぶそばで母親同士の会話もはずむマンションが林立する福岡市。「支店都市」の名があるように転勤族も数多い。そのため、近くには親族がおらず、知らない街で友人もいないため、幼い子を抱えて孤立する母子も多い。 

そんな母子のオアシスとなっているのが、市内146の小学校区のほとんどに設けられている「子育てサロン」である。たいていは校区ごとの公民館を会場に、週1~2回のペースで開かれている。 



福岡市の中心部、中央区にある春吉公民館の子育てサロンをのぞいてみた。

 

この日は17組34人の母子が集い、10人ほどのボランティアの女性(男性も1人)たちに見守られ、わが子だけに拘束される日々を忘れて、ゆったりとした時間を過ごしていた(写真)。  

「スタートして6年ほどです。生後3カ月から1歳半ぐらいの乳幼児が多く、母親も会話で盛り上がって、とてもにぎやかです」とサロン代表の郡嶋郁子さん。

ボランティアは民生委員や老人クラブの会員、一般の人など全部で約30人。1回ごとのサロンには交代で10人ほどが母子を見守る。 

ボランティアは母親たちの相談相手になったり、母親同士を橋渡ししたりして、3世代揃った大家族のような雰囲気だそうだ。窮屈なプログラムはなく、料理上手のスタッフが食育の話をしたり、季節ごとの伝統行事を取り入れたりして、のんびりと楽しい時間を過ごすことを大切にしているという。 

参加して1年半ほどだという野口聡子さんは1歳8カ月の娘を持つ母親。「転勤族で福岡市に来た当初は、周囲は全く知らない人ばかりだったんですが、公民館だよりを見て参加させてもらって、親子ともに友達が出来てほんとに助かりました。実家に帰ったような雰囲気で、安心して楽しく過ごせます」と話す。 

同じく1歳8カ月の子どもを持つ井上晴美さんも転勤族。「民生委員さんの訪問でサロンを知りました。あたたかな雰囲気で、友達が出来たのがとってもうれしかったですね」

 

愛するわが子を傷付けたり、果ては殺してしまったりと、乳幼児虐待のニュースが絶えない。なぜいたいけなわが子に手を上げるのか。その要因の1つに育児に対するストレスが挙げられている。周囲に親族も友人もいないという状況は、やはりストレスを生みやすい。 

子育てサロンの存在はそうしたストレスを発散させ、かつまた昔の地域社会ではごく自然に行われていた、地域で子どもを育てるという関係を復活させる貴重な取り組みといえる。

「少子化、核家族化、都市化の進行で育児不安が増加することから、2000年からモデル事業としてスタートし、02年から本格的に立ち上げました。各地区ともボランティアの皆さんが頑張ってくれています」と福岡市こども未来局子育て支援課の平川陽一郎係長は話している。

【問い合わせ先】 各公民館へ