業者選定は問題なし?・みやまSE

みやま市三セク、業者選定に疑義」で既報の、みやまスマートエネルギー㈱(みやまSE)が昨年8月に行った業者選定について、1月29日、同社が入札談合等関与行為防止法、及び刑法(偽計業務妨害罪)などの法令に反していないと判断したことを発表した。

また、受注したK社の役員を兼ねていたことが判った、みやまSEの電力システムアドバイザーH氏からは、12月末での辞任の申し出があり、これまで支払った報酬全額が返還されたという。

これで穏便に済ませたいところだが、みやまSEは 市が 95%出資する三セク企業、通常の公契約では有り得ないことで、市議会議員の一部は 今後の議会で徹底的に追及する構えを見せている。

みやま市三セク、業者選定に疑義(後)

H氏が、プロポーザルで公募する際の 電力需給管理システムの仕様書作成に携わっていた。
つまり、仕様書の作成をした者と選定された会社の役員が同一である。
みやまSEによると、「選考手続きにH氏は関わっておらず問題はない」とのことだが、そういう話ではない。
業者選定において、発注者と受注者の両者に同一人物がいること自体が考えられないことだ。

ちなみに、K社はソフトウェア開発を目的に1998年4月創業、2018年7月より低価格の電力需給管理業務のパッケージの提供を始め、自治体や業界に人脈を持つH氏が2019年6月に役員に就任している。
6月と言えば、調査委員会の真っ只中である。
ある市議は「調査委員会の一人として利益相反があったと結論づけ、前社長を退任に追い込んだ。その後アドバイザーとして入り、需給管理業務を受注した。利益相反どころの話ではない」と述べた。

みやまSEは、プロポーザルの選考過程においてH氏がK社の役員を務めているということを知らず、契約することになって初めて判ったという。
本当ならこの時点で契約に待ったをかけるべきで、昨年5月に新社長に就任した横尾健一氏は市役所OB、後から問題になることは想像できただろう。

しかし、そのまま契約を締結し、9月末には みやまSE取締役を兼ねている松嶋市長にも、H氏についての報告がされている。
市長こそ、筆頭株主として対策を講じる必要があったのではないか。
市長就任後、前体制に対する利益相反の調査委員会を設置したにもかかわらず、法的に問題はなかったことで決着、それでも体制を刷新した松嶋市長だがブーメランが返ってきたようだ。

新しいシステム稼働まで3ヶ月を切ったところだが、みやまSEからの報告を待って市は対応を決める模様で、市長の判断に注目が集まっている。

ー 了 ー

みやま市三セク、業者選定に疑義(前)

みやま市の第三セクター電力会社「みやまスマートエネルギー㈱(以下みやまSE)」は、昨年5月に新体制に移行し、新たな経営方針でスタートを切ったが、いきなり躓いているようだ。
12月14日の市議会委員会において、2021年4月以降の電力需給管理システムの業者選定が不透明との指摘を受け、松嶋盛人市長が問題の有無について確認するよう、みやまSEに指示したというのだ。

みやまSEは昨年8月、プロポーザル方式で電力需給管理システム事業者を公募し5社が応募、そのうち東京に本社を置くK社を選定、既に契約を済ませ 4月からの稼働に向けて準備を進めているところだ。

委員会が指摘したのは、H氏がK社の役員を務めていることだ。
H氏と言えば、松嶋市長が2019年2月、みやまSEに利益相反がなかったかを調査するため調査委員会を設置した際の、新電力の専門家として調査委員に名を連ねていた。
昨年2月に提出された同委員会の報告書では、多岐にわたり厳しい指摘がされているが、同報告書を受け、5月に前社長が退任、創業時から事業を支えてきた社員も前社長と共に退社したことから、みやまSEでは新電力に精通した専門家が不在となった。

そこで、みやまSEは、H氏とアドバイザー契約を結び、新電力の経営全般について助言をもらっているという。
そこまでは良かったが、プロポーザルで公募する際の 電力需給管理システムの仕様書作成にもH氏が携わっていたというのである。

ー 続く ー

揺れるみやまスマートエネルギー・8

仮に磯部氏がみやまSEの代表を続けていたとしても、九州電力の積極的なシェア奪還による高圧電力契約の減少は止められなかっただろう。
しかし、取材する中で「新電力に精通した磯部氏なら利益を出すアイデアが湧いて出てくると思う」という磯部氏の手腕を評価する声を聞いた。
市は みやまPHDへの業務委託を今年度末で打ち切る予定で、それは磯部氏との関係が全くなくなることを意味する。
みやまSEが生き残るためには、何らかの形で磯部氏に経営に関わってもらう以外、道はないと思われる。

松嶋市長は、「行政の継続性」を無視し、全国に先駆け創り上げた地域電力の財産価値を見誤り、間違った方針転換をしてしまった。
今からでも遅くない。
みやま市、そして市民のことを思うなら、自らの判断の誤りを認め、間違った方針を撤回し、磯部氏に経営に参画してもらうよう再考すべきではなかろうか。

来期以降の売上の急減が予想される中、今後は生き残りを賭けた営業努力が求められる。
みやまSEが経営危機を乗り切り、再び自治体電力の成功事例として復活することを期待したい。

— 了 —



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揺れるみやまスマートエネルギー・7

企業経営において、売上、最終利益、純資産全てが上伸している中で、方針変更や社長の交替は有り得ないが、その有り得ないことを松嶋市長はやらかしてしまった。

みやまSEは、市長の方針により、社長交替、そして今後は全国展開ではなく、筑後地域を中心に「九州限定」の事業展開を図り、9%程度にとどまっている市内の一般家庭の契約率を2、3年で倍増させていくとした。
新電力の競争が激化する中で、一般家庭の低圧電力の粗利率は10%程度で大きな利益は見込めない中、高圧電力の大口契約を増やしていく必要があるが、最近の電力市場では九州電力が一旦新電力に奪われたシェアを本気になって取り返している状況だ。

実際、みやまSEでは、柳川市役所がみやまSEとの1.5億円の電力供給契約を解消したほか、毎月500kWと想定以上のペースで高圧電力の解約が続いており、今期は7億円以上の売上減を予想しているという。
2期連続で達成した24億円の売上が今期予想では17億円を切る、これは深刻だ。
最終利益で黒字を確保できるというが、来期以降の経営は相当厳しくなることが予想される。
いくら一般家庭の低圧電力の契約が増えても、大口の高圧電力の契約が減れば利益の確保は難しく、赤字を出さないためには人件費の削減、最悪社員の解雇という選択もあるだろう。
いずれにしても、赤字に転落すれば市が税金で補てんするなど財政負担となり、お荷物になる。
そうなると、みやま市民が不幸であり、その責任は誰が取るのだろうか。

— 続く —



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揺れるみやまスマートエネルギー・6

みやまSEは調査委員会の報告書を受け、その後の取締役会において、指摘があった「手続きの不備」を追認したが、不適切と指摘された支出は存在しなかった。
一部報道で、「不適切な支出があったとして、PHDが約450万円をみやまSEに支払い清算した」とあったが、正しくは年度途中に想定外に得た収益の一部を支払ったということで、契約外の配慮をしたものである。

市長の方針で磯部氏は社長を退任することとなったが、結果として みやまSEは磯部氏とPHDの潔白を証明することになり、市の担当者も6月5日の記者発表で、「調査委員会の報告書で指摘された問題は全て解消した」と述べている。
その後、福岡地検も調査に入ったが、告発状で「みやま市に不利益を与えた」とされた肝付町との契約については、担当検事は「双方の現在の立場だけでなく、将来にも配慮した的確でバランスの良い判断をした」とコメントしたという。
結果、前述のように「起訴するに足りる証拠がなかった」として不起訴処分となった。
つまり、PHDはみやま市を「食い物」にしたのではなく、不当利得なかったというのが、みやま市とみやまSEが出した結論である。

調査報告書による新聞報道と刑事告訴で、思わぬ社会的制裁を受けることになった磯部氏は、風評被害等でその後のビジネスに大きな支障が出ていると聞く。

「行政の継続性」という言葉がある。
選挙で首長が変わる度に、政策が二転三転しては住民にとっては迷惑だ。
行政には、一度決めた事業は余程のことがない限り、方針を曲げず続けていくことが求められる。
民間事業者などが相手の時は尚の事である。

西原前市長の肝煎りで立ち上げた 第三セクターみやまSE、磯部氏はその計画段階から参画し、前例のない電力の地産地消、自治体電力の在り方を模索し、アイデアを駆使し創り上げていった。
前市長がトップセールスで柳川市と大木町との大口契約を取り付ける一方、磯部氏は各地の地域電力を立ち上げる法人を支援しながら取次店契約で全国展開を進め、5期目となる2019年(平成31年3月期)には24億2008万円を売上げ創業期の赤字を解消、更に47名の雇用を実現した。
直近の2020年(令和2年)3月期には24億7231万円を売上、1億4411万円の最終利益を出すなど、第三セクターとして申し分のない経営状況だった。

— 続く —



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揺れるみやまスマートエネルギー・5

前回のみやまSEについての投稿(6月11日)から約4ヵ月が過ぎた。
福岡地検は末吉市議が提出した、みやまSE前社長の磯部達氏に対する会社法違反(特別背任)罪の告発状を受理していたが、9月17日付で「起訴するに足りる証拠がなかった」として不起訴処分とした。

2018年(平成30年)12月に松嶋市長が調査委員会を設置すると宣言してから、1年半以上続いた騒動にようやく終止符が打たれた。
しかし、みやま市及びみやま市民にとって何一つ良いことはなく、みやまSEに対するイメージの低下と、経営の先行きに暗雲が立ち込める結果となった。
結論から言うと、本件は松嶋盛人市長が引き起こした人災で、磯部氏はその被害者と言えるのではなかろうか。

2019年(平成31年)2月14日、市長は調査委員会を設置したが、そもそも市が出資し市長が取締役として入っている第三セクターの調査に、委員会を設置することがナンセンスである。
メンバーは弁護士2名、公認会計士2名、専門家1名、市役所職員2名の7名で構成されていたが、市の職員を入れたことで市長の意思が働くため、純然たる第三者委員会とは言えない。
更に、弁護士2名は同じ事務所の夫婦、公認会計士のうち1人は松嶋市長の友人で、人選から問題があった。

調査委員会の報告書は、設置後約9ヶ月経った11月7日に松嶋市長に提出されていたが、その報告書について議会報告と記者発表が行われたのが翌2020年(令和2年)2月20日。
新聞各社は調査報告書の内容に触れた上で、みやまSEの磯部社長が違法行為と不適切な会計で背任行為を行っていたとの趣旨で報道、地元紙にあっては「平たく言えば、I社長やH氏、PHDは三セクを『食い物』にしていた可能性がある。報告書や市の説明から考えると、PHDの不当利得は1億円を超える可能性も。」とまで書いた。
I社長とは磯部氏のこと、PHDとは みやまSEが業務委託をしていた みやまパワーHD(代表 磯部氏)のことを指す。
記者がここまで辛辣に書いたのは、恐らく報告書と市の説明がそうだったのであろう。
では、本当にPHDはみやま市を「食い物」にし、不当利得は1億円を超えていたのだろうか。

— 続く —



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