オチ・オサム展、福岡市内3ヶ所で同時開催!

1950年代後半から60年代前半にかけて、福岡を拠点として前衛美術グループとして
名を馳せた「九州派」、大東亜戦争で多くの人々が亡くなりモノを失った日本において、若い芸術家たちが「反東京」「反芸術」を旗印に制作活動を始めた。

主要メンバーの桜井孝身氏と共に活動した、オチ・オサム氏(1936~2015)は、1955年の二科展入選を皮切りに頭角を現し、2度の渡米で得たインスピレーションを発展させ、宇宙を思わせる仮想空間に様々なモチーフが浮遊する幻想的な絵画を生み出した。

そのオチ・オサム展が福岡市美術館、ギャラリーCONTAINER、岩田屋本館2階、EUREKA(エウレカ・中央区大手門)の3ヶ所で同時開催されている。
同一作家の個展が市内3ヶ所で同時開催されるという例は聞いたことがない。

オチ氏の破天荒な人生を思い出しながら、何かに惹かれる思いで3ヶ所の会場を一気に見て回った。
各会場では昔馴染みの友人と出会い、思い出話に花が咲き、実に有意義な一日を過ごすことが出来た。

もちろん、会場に展示されている作品から、多大なエネルギーを貰ったのは言うまでもない。
是非、一度「オチ・オサム」の世界を覗いてみてはいかがだろう。

※会場により開催時期・休館日、開催時間が違うのでご確認を。

■ 福岡市美術館
1月24日(水) ~ 3月24日(日)
https://www.fukuoka-art-museum.jp/exhibition/ochi_osamu/

■ 岩田屋本店 本館2階 Gallery CONTAINER
1月24日(水) ~ 2月13日(火)
https://www.iwataya-mitsukoshi.mistore.jp/iwataya/shops/art/artgallary/shopnews_list/shopnews028.html

■ EUREKA エウレカ
1月24日(水) ~ 2月25日(日)
https://eurekafukuoka.com/2058/

住友銀行秘史

福岡在住の画家であるオチ・オサム氏は、戦後新進気鋭の画家集団として誕生した「九州派」のメンバーで、家内が画家の真似事で絵を描くところから、オチ・オサム氏との親交が始まって何度か一緒に酒を飲むようになり、個展の際には貧者の一灯で何枚か小品を購入し、いまでも壁にかけている。

今から20年ほど前に、家内が「オチ・オサム氏に画商が付いた」と話していた記憶があり、そのとき内心で思ったのは、購入した絵の値段が上がればいいがなと、取らぬ狸の皮算用をしたことを覚えているが、その後上がったという噂も聞かなかった。

しかしイトマン事件が起こり、朝日新聞の事件記者が報道した記事の中で、イトマン事件に絡んで売買された絵画のリストに、高名な画家とともに、オチ・オサム氏の名前があった。

10数万円で購入していた絵とあまり変わらぬ絵が数百万円、数千万円で売買されていたのかと驚くとともに、どういう人が買ったのだろうという想いに浸ったことがあるが、「住友銀行秘史」を読むと、またさらに面白く、10万人の人々が買った気持ちが理解できた。
 

 

 

 

前衛美術集団~九州派オチ・オサム氏

昭和32年に福岡を拠点とする前衛美術家集団「九州派」が、桜井孝身、オチ・オサム、菊畑茂久馬の3人を中心に結成され、活動を開始した。
その創設メンバーの1人だった、オチ・オサム氏が4月26日に79歳で無くなっていたことがわかり、以前同氏は南区桧原に住んでいただけに、懐かしさがよみがえってきた。
戦後も昭和30年代に入るとすべてが落ち着きを見せ始め、新しい考え方も芽生えて女性が強くなり、「九州派」が結成された翌33年には女性代議士が中心となって、売春防止法が4月1日から完全施行され、赤線の灯が消えた。
まだ物は満足にない時代だったが、「九州派」は地方の存在を強く意識し発信する旺盛な意欲から出発した集団で、その意気込みと行動力は今でも語り草になっている。
そのオチ・オサム氏に画商が付いた、今風に言えばメジャーになったという話が飛び込んできたのがバブルの頃で、年間40枚程度の抽象画を描く契約で、当時1000万円を超える金額が支払われたが、後に本人の口から「制作に追われてかなりきつかった」とボヤかれたことを思い出す。
ところで当時のオチ・オサム氏の絵は、30号(90㎝×65㎝)前後で、高くても数十万円、概ね1号当たり1万円の相場だった。
ところが戦後最大の経済事件と言われる、イトマン事件で知られた許永中が引き起こした一連の経済事件の中で、高名な画家の高額な絵画に混じって、なんとオチ・オサム氏の絵が、数百万円の価格で取引されていたことを新聞記事で見て、ビックリするやら感心するやら、懐かしく思い出されるが、あの時の絵は今いったいどこにあるのだろうか。

 
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