伝統建築をめぐる冒険~古民家探訪シリーズ~八女福島②

神社で市場な商店街と分譲木造アーケード。

6月某日、この日は朝からあいにくの雨模様。福岡市から車で1時間半、八女市役所の玄関前にて中島さんと落ち合った。
中島さんは八女市地域づくり・文化振興課職員にして「NPO八女空き家再生スイッチ」の事務局長。この八女福島における、伝建活用まちづくりプロジェクトの中心的な人物の一人である。そんな大変忙しい身でありながら私のために半日近い時間を割いていただき、尚且つ、まちの案内までしていただいた。


もうなんとお礼していいやら分からない。手土産の一つも持参しなかった自分を盛大に呪詛しつつ(高速の事故渋滞により時間が無かったのです本当です嘘じゃアリマセン)、ありがたくアテンドをお願いした。まことに感謝多謝である。

まず市役所から向かったその先は「土橋八幡宮」。建立からの時間を感じさせる立派な山門に目を奪われる。



「フムフム、三手先まであるのか。経年により傷んでいるものの、中々な組物だ・・・ん?」オカシイ。山門に飾られた注連縄(しめなわ)の奥が変だ。さらに近づく、と明らかに見知ったいわゆる境内とは異なる雰囲気。山門の上部辺りから奥に走る青い鉄骨のトラス。そして薄明のごとくボンヤリと浮かぶ天井。参拝者の雨よけに?否、これはアーケードだ!



歩を進めるとそこには雨に打たれ緑青(りょくしょう)色に輝く屋根の本殿が姿を現す。間違いない、ココは境内、社で神域。でも振り返るとそこにはアーケード。なんとエキセントリックな光景だろう・・・。
実は中島さんから「驚きますよぉ」と道々説明を受けつつ訪れたのだが、実際目の当たりにすると驚きと同時に奇妙な懐かしさが胸に宿った。きっとアーケード全体に漂うレトロな雰囲気がそうさせたのだろう。この日は火曜日で店休日が多かったせいかも知れないが、ちょっぴり寂れた空気のアーケード街に、哀愁に似た趣きを感じた。



しかし中島さんによると「ココは夜に来られると違った表情が見えていいですよ」とのこと。ナルホドcafeやbarやスナックなど、夜向きなお店が結構眼につく。伝統的町並みの八女福島の夜、アーケードから洩れてくる店の明かり。きっと夜の土橋市場は一種独自な輝きを放っているのだろう。



次回訪れる際は必ず夜にっ、と、遠くで見守るネコに固く誓うのだった。

さて閑話休題ならぬ軽いミステリーを。脳内のBGMはトワイライトゾーンでお願いしたい。アーケード内の一角から写された何気ないこの写真、よく観るとオカシな点が一箇所ある。赤丸で囲んだ箇所なのだが皆さんお分かりだろうか・・・

拡大して説明用に加工したうえ、点画を加えたものがコチラ。

フリーハンドゆえ、デッサンが狂おしい事はご容赦願いたい。
実は大きな灯篭が店内に取り込まれているのだ。そして収まり切れず屋根から飛び出した灯篭の笠部分がこうして外から見えるらしい。店の腰壁に灯篭の基壇がそのまま利用されているのが動かぬ証。ドアを開けるとそこには灯篭。店が開いていれば是非とも画像に収めたかった。

さて境内アーケードを出ると、通りを隔ててあるのが旧・土橋商店街。その構造は木造で、大変立派な造りである。しかしながらその現状は境内土橋市場の比でない。電飾看板こそポツリとあれど、全くもって人影なし。




この木造アーケード、実は各店舗毎の分譲であり、所有者の行方が分からない店舗が多いため手がつけられない状態であるとの話。5月に施行された空き家対策特別措置法によって対策が可能なのだろうか。今となっては貴重な建築物だけに悩ましい問題だと中島さんも嘆いておられた。

境内のアーケードも、木造アーケードも、いずれも八女福島まちづくりの重要な構成要素であり、文化遺産であるといえる。商店街の人たちとも連携して、少しづつでも、まちづくりプロジェクトに即したかたちで修景・振興されていくことを願わずにいられない。
こういったさまざまな問題にひとつづつ対応されている、中島さんをはじめとしたプロジェクトメンバーの方々には本当に頭が下がる思いだ。

【古民家探訪シリーズ~エスアールエスタッケイ代表 住吉 英智】

㈱エスアールエス宅継 (タッケイ)
本社:福岡市中央区舞鶴2-7-1-313
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