風評被害から生産者を守れ!

■ 基準値180倍の衝撃

12月8日、春菊から基準値の180倍の農薬が検出された問題は、瞬く間に全国に駆け巡り衝撃を与えた。
福岡市の担当者によると、基準値を超える農薬が出てもせいぜい2倍くらいまでで、今回のようなケースは過去20年間記憶にないということだった。

個人の生産者が、通常タマネギ栽培で土に撒く農薬を、しかも希釈する量を間違って春菊に散布したことが原因で、通常は絶対に有り得ないミスだったという。
だが、「絶対に有り得ないミス」が起こってしまったのは事実、全ての生産者が適切に農薬を使用していたとしても、人間がやること、ひょっとすると同様の誤使用は全国どこでも起こり得る。
我々消費者は、そういった万万が一のことも想定しながら、野菜・果物を口に入れる必要があるとつくづく思った。

今ネット上では、「春菊はもう買わない」だとか「福岡県産の野菜は食べる気がしない」など数多くのコメントが寄せられている。
JAくるめの集荷場に野菜を持ち込んでいる生産者の方からは、「大変迷惑している」、「私らはちゃんと(農薬の)分量守って真面目に栽培している」、「只でさえ野菜の値段が下がっているのにかなわない」という悲痛な声を聞いた。


■ 筑紫次郎はJAのブランドではなかった

春菊農薬問題で打撃を受けているのは、「JAくるめ」から出荷している生産者だけではなく、今回一躍有名になった「筑紫次郎の贈りもの(以下筑紫次郎)」のブランドに関わっている生産者、関係者である。
今回、「JAくるめが出荷した筑紫次郎」として報道されたことで、筑紫次郎がJAくるめのブランドのような印象を受ける。

しかし、取材をしてみて複雑な裏事情があることが判った。
実は、筑紫次郎は筑後川流域(朝倉市から柳川市まで)の多くの個人生産者が、JA以外に出荷する際に広く利用できるよう、地元の集出荷会社が約20年前から広めてきた統一ブランドで、筑紫次郎の袋は、JAの非組合員や、JAくるめ管外の生産者にも数多くの野菜・果物に、広く使用されている。

つまり、JAくるめが出荷する際に筑紫次郎の袋を使用するのを例えると、ゆめタウンの商品の陳列棚にイオンのPB商品を置くようなもので、考えにくいことだ。

今回問題を起こした生産者(JA組合員)が、JAくるめの集荷場に持ち込む際、筑紫次郎の袋で包装した春菊を持ち込んだことで、こういう間違いが起こったのだが、JAくるめの生産者に対する指導が徹底していなかったこと、チェック体制が無かったことが今回露呈した。

地元の集出荷会社が、久留米市はもとより、うきは・朝倉から下流は有明海までの個人生産者の間で、20年かけて定着させてきた筑紫次郎のブランドへの信頼が、今回の件で一夜にして失われた。
今後ブランド力の低下で、筑紫次郎の生産者や関係者に甚大な影響が出ることが予想される。
JAくるめは、JA組合員を守ることも大事だが、筑紫次郎の生産者や流通関係者に対しても丁寧な対応が必要だろう。


■ 行政にできることは

風評被害を最小限に抑えるには行政の力も不可欠である。
平成8年、カイワレがO-157の原因として風評被害が広がり、生産していた業者の倒産、更には自殺者まで出る騒ぎとなった。
当時の菅直人総理が記者会見で、カイワレサラダを食べて問題がないことをアピールし、事態の沈静化を図ったことがあった。

小川県知事や大久保久留米市長におかれては、福岡県産野菜・果物の信頼の回復のため、積極的にテレビやネット媒体を使って発信してみてはどうか。
また、生産者が受けた影響のヒアリングなど実施し、場合によっては、何らかの支援策が必要となるかもしれない。

行政とJAにおかれては、風評被害を最小限に食い止める努力は惜しまず、スピード感をもって取り組んで頂きたい。

九州大学(糸島市)の地下水質、環境基準値超えか?

九州大学伊都キャンパスに移転が完了して2年が過ぎようとしているが、敷地内の一部で、地下水質が環境基準値を上回っているという投書があった。
場所は敷地内糸島市側の最西端、現在は雑草が生えており使用されていないが、地元の人の話では以前は産廃が捨てられていたという。



同キャンパス用地は、福岡市土地開発公社(以下公社)が先行取得して国立大学法人九州大学(以下大学)に売却されているが、敷地内の一部に残る産業廃棄物の混じった堆積土砂があることが懸案事項だったという。
そこで、平成20年(2008年)に公社は土砂の地質調査(ボーリング)及び土壌汚染検査、地下水汚染調査を実施し、問題がなかったとして大学に報告、それを受けて大学が平成22年(2010年)3月に売買契約書を交わした経緯がある。

投書では、地下水汚染調査で検査機関から得られた結果のうち、都合の悪い箇所を伏せて大学側に提出したという内容が記されている。
情報公開請求で公社から取り寄せたという資料が2種類、1つは財団法人九州環境管理協会が行った「移転用西側観測井戸(地図参照)」で行った水質検査の結果、もう1つは公社が大学に提出した地下水調査結果である。
確かに、九州環境管理協会の検査結果を見る限り、鉛、アルミニウム、鉄、マンガン、蒸発残留物等の項目で浄水の基準値超えで問題ありだが、その右側の列には、ろ過後の結果があり基準値内に収まっている。



ところが、大学に出した文書には、
「地下水汚染調査として、ボーリング井戸を掘って採水した地下水及び本件土地に隣接した井戸水について、38項目の水質試験を実施した結果、異常は確認されなかった」とあり、添付の地下水調査結果には、ろ過前の結果は記されておらず、ろ過後の結果と観測井戸の隣接地の民家の数値が記されていた。



ろ過後の数値を使用することが適正か。

環境省に確認したところ、地下水の水質汚濁における環境基準では、鉛の場合1リットル当たり0.01mg以下となっている。
環境基準に適合しない土壌については、基準値を下回るよう努力するか、環境への影響を防止するために必要な措置を講ずるものとされている。
ろ過後の数値の使用に関しては、水道法の飲料水としての適否ということで、地下水汚染とは範疇が異なるとのことである。

そもそもこの検査の目的は、購入予定土地に地下水汚染がないか確認するもので、飲料水として使用するものではない。

当時の検査で、鉛の数値が環境基準を超えていたわけで、それに対して必要な措置は現段階では講じられていない。
その状況は現在も続いている可能性が高く、地域住民の健康被害や農作物への影響も想定され、自治体としても何らかの対応が必要ではないだろうか。