躓いた八女市・前古賀工業団地計画 ー 後編 ー

代理人は続けて「公社は来ないが、Kという市議が来て印鑑を押すよう言われた」と話す。
市議が動くのも不自然な気がする。
造成工事の入札で、特定の会社に受注させることはご法度だが、お互いが歩み寄れる妥協点を見出すのが土地開発公社の務めと思われるが、交渉中断には別の理由があるようだ。
他の業者に造成工事の発注を確約しているため、市の幹部から公社に「代理人との交渉はするな」と指示が出ているという噂も聞こえてきた。

地権者の同意すら得られていない中で、更なる先走りがあった。
いち早く情報を掴んだのが、福岡市に本社を置く一部上場の食品加工会社、1年程前に同社の社長が市長室を訪れ、「700人程度の雇用を見込んだ食品加工工場を稼働させたい」と申し出があった。
同時に、土地開発公社が土地取得後は造成をせず直ぐに引き渡すよう要望が伝えられ、市側はこれを了承したという。
「土地取得後は造成して4区画に分けて公募」という当初の予定が、「土地取得を代行して食品会社に販売」に話が変り、議会からも「これでは不動産業」との批判も出ている。

食品会社から進出の申し出はあっても、立地協定を締結していない中で工程の遅れをいつまで待ってくれるか分からない。
銀行借入で予算を一部執行している土地開発公社としては、これ以上地権者との交渉を引き延ばす余裕はないはずである。

工業団地計画は、八女市の最重要施策で失敗は許されない。
土地開発公社は早急に妥協案を絞り出し、地権者と交渉を再開し、計画を前に進めていくべきではなかろうか。



― 了 ―

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躓いた八女市・前古賀工業団地計画 ー 前編 ー

「歪んだ3号線広川~八女バイパス『八女市編』」というタイトルで、私的な工業団地にまつわる話の連載中であるが、八女市が正式に進めている工業団地について取材した内容を紹介したい。

市が平成28年度から進めている前古賀工業団地計画に、地権者の一部が反発し膠着状態に陥っているという。
場所は八女インター近くの㈱明治九州工場に隣接する11.2haのまとまった農地だ。
同計画は過疎化が進み、地元で雇用を創出し人口流出に歯止めをかけたいという願いから始まったもので、総事業費18億円、八女市土地開発公社が先行取得後造成して分譲する予定でスタートした。



ところが、手順を誤った様だ。
工場立地は通常、農地転用許可や開発行為許可の申請が終わった後、土地の売買契約という流れだが、少なくとも許可申請前に全地権者の同意を取り付けておく必要がある。
現在、約90軒の地権者と同意を取り付け、先行して前渡金40%の支払いを済ませているが、2軒の地権者との交渉が決裂した状況で、1年以上も工程に遅れが出ているという。
公社によると、地権者の代理人が「法令に反する条件」を出してきたため、それ以降交渉がストップしているとの説明だった。

その地権者の代理人に話を聞いた。
「30年前から自分たちが地権者をまとめて工場を誘致する計画をしてきたが、市が後から来て横取りした。公社には伐採や造成の工事をやらせてもらうことが条件と伝えたら、条件を出すなら買えないと言われた。それから1年半こちらに何も連絡がない。」と、ボールは公社側にあると強調した。
確かに、地権者との交渉を1年以上も中断しているのは不可解だ。



― 続く ―

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九大篠栗農場跡地~食品企業進出決定~後日談・前編

先週13日に報じた篠栗農場跡地への食品企業進出、残念ながら篠栗町にとって、良いことばかりではなかったようだ。

予定地はベンタナヒルズ篠栗の北隣り、西鉄ストア篠栗物流センターやニトリ九州物流センターと道路を挟んだ西側の一帯で、広さは約2万4000坪。

九大から買った金額は1億5000万円で、坪単価約6200円と破格値、しかも国道201号線に隣接しており、町としては安い買い物をしたと思っていたが、残念ながらそうはいかなかったようだ。

ここは九大が演習林として利用していたのだが、どうやら旧炭鉱のボタが捨てられていた土地だったようで、これが本当ならば、非常に厄介なことになる。

ボタが生のままであれば、産業廃棄物として処理する必要があり、投棄量にもよるが、撤去費用がどの程度になるか、今のところ不明なのだ。

ところで、関係者によれば、この土地を企業に提案できる価格はせいぜい坪12万円が相場だろうといわれている。

ところが篠栗町は、現状でも造成後に坪14万円で売却する予定を立てているため、この時点で既に2万円の差が生じ、ボタの撤去費用次第ではさらに単価を上げる必要が出てくることから、企業が進出に二の足を踏むことも想定しなければならなくなった。

工業団地を造成し企業進出を図っているのは篠栗町だけではない。

福岡市が造成したアイランドシティを見ても理解できるように、インフラを整備し、減税も目一杯行い、それでも企業誘致に四苦八苦している自治体が多いことを考えると、今の時代に土地を売って利益を出す、という考え方には疑問符が付くような気がするのだが・・・。

どうなのだろう。


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