首長選挙に出るということ

首長選挙は まぐれで当選することもある市議選挙とは違う。
国会議員や県議が付いている現職は資金が豊富で組織もしっかり出来ていて、これに勝つのはかなり難しい。

現職相手は反体制派と見做され、今まで仲間と思っていた人が離れていく。
その代わりに選挙の勝ち方を指南する人が集まって来る。
チラシをもっと撒けとか 事務所はこうでなければいかんとか、人が足りんとか、的を得た話ばかりだが、こちらの懐事情もあり 曖昧な返事をすると怒られたりする。

それから、右翼のおじさんから 市民運動をしているおばさままで、これまで話したことのなかった人が 次々に訪ねて来て時間がなくなっていく。

相手陣営は、接戦が予想される場合、かなり「えぐい」ことをしてくる。
団体に票の取りまとめを依頼、数千万円の金が動くときも。
また、票の分散を狙い、こちらと似たようなタイプの第3の候補者を立て、三つ巴戦にすることもある。もちろん、相応の謝礼がわたる。

選挙数ヵ月前には、あることないこと、ないことないこと書かれた怪文書がばら撒まかれ、これがかなり痛い。
最近はSNSを使ってあっという間に拡散され、家族もたまったもんではない。

田舎の選挙では、自治会長は現職と親しく、地域住民にこちらの集会に行かないように指令が出る。
自治会によっては、公民館を貸してもらえないこともある。
小さなムラだと 自治会長に逆らえない空気があり住民は動きづらく、お陰でこちらの集会は閑古鳥が鳴くことも珍しくない。

このように、どんなに素晴らしい政策を考えても、斬新なチラシやポスターを作っても、資金力や組織力で勝負は殆ど決まっている。
首長選挙に出るということは そういうことだ。
もう後に引けなくなった頃に そのことに気付く。

今回の統一地方選でも、純粋に街を良くしようと思って首長選に挑戦し散った人たちがいる。
地域には、現職相手に戦った挑戦者の悪口を言ったり非国民的扱いをする心無い輩も多数いる。

全力を尽くし、お金も底をつき、応援してくれた人たちも事務所を去り、負けた実感が湧いてきている頃だろう。
しかし、この 誰もができない経験を糧にして 前を向いて踏ん張って頂きたい。
何より 逆風の中でチャレンジした気持ちに 心より敬意を表したいと思います。

世襲の是非を問う町長選

任期満了に伴う新宮町の町長選挙(4月18日告示、23日投開票)は、現在までに長﨑琢也氏(52)と桐島光昭氏(59)の2名が名乗りを上げている。

長﨑氏は3期務めた長﨑武利町長(81)の長男、家業の酒類販売会社役員を経て、平成28年から昨年12月末まで宮内秀樹衆院議員の秘書を務めた。
一方の桐島氏は、同町職員として健康福祉課課長、都市整備課長、政策経営課課長などを歴任した。

新宮町はこれまで、都市基盤整備を計画的に進め、大型商業店舗を誘致するなど利便性が向上したことで、子育て世代が移住し成長を遂げている。
そのため両者共に現町長の路線を継承する方向性は同じで、争点は世襲の是非になりそうだ。



国会議員や県議会議員の世襲はよく聞くが、地方自治体の首長の世襲はあまり馴染みがない。
現職の世襲首長としては、青森県むつ市の宮下宗一郎市長(2期目)、大分県姫島村の藤村昭夫村長(10期目)の例がある。

一方、平成30年6月の青森県五所川原市の市長選と同31年4月の大阪府池田市の市長選において、いずれも現職市長の長男が出馬したが一騎打ちで敗れている。
地盤・看板・かばんを兼ね備えていても必ず勝つとも言い切れない様だ。

最近は岸田総理が政務秘書官に起用した長男・翔太郎氏の「公用車で土産」問題や、前述の岸前防衛相の長男・信千世氏が公式サイトに「家系図」掲載など、国民感情を逆撫でする報道が続き世襲への風当たりは強くなるばかり。

8年ぶりとなる町長選挙、新住民も含め有権者が世襲の是非をどう判断するか注目だ。



 

福岡に近すぎて発展しない町~粕屋町~前編

人口250万人を擁する福岡都市圏の中で、全国的に注目を集めている町が粕屋郡内には2つある。
1つは新設されたJR新宮中央駅前を中心に、人口増加率の著しい新宮町で、もう1町は出生率日本一の粕屋町だ。
だがこの粕屋町、取材してみるとどうも良い事ばかりではなさそうだ。

町のほぼ中央をJR福北ゆたか線が走り、長者原駅で南北にJR香椎線が交わり、町内には6つの駅が存在するなど、他の自治体から見ればうらやましいかぎりのはず。
なかでも長者原駅から博多駅までは僅か10分だから、若い夫婦者にとっては魅力ある町で、同駅周辺にはマンションが立ち並んでいる。

ところで先日発表された、昨年の国勢調査確定値によれば、粕屋町の人口は5年間で3363人の増加となっているが、実はこの増加分は、人口流入分ではないのだ。
粕屋町に引っ越して来る人たちと、町外に出て行く人たちはほぼ同数となっており、赤ん坊、つまり出生数が人口増に繋がっているのだ。
だから出生率が全国1位になっているのである。

ところが、この人口の増加に対して、町の整備、形成が遅れている。
駅の前にはまとまった商店街は形成されてないし、出生率がナンバーワンであるにもかかわらず、町内に産婦人科医院が無い。
10分で博多駅まで行けるのだから、町内に無理に作る必要はない、経営上当たり前だという言い分もあろうし、ただ単に福岡市にくっつき、ベッドタウンとして存在できるなら、福岡市粕屋区で良いじゃないかという声もあるだろう。

~続く~


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