やったもん勝ちで終わった無許可工事・嘉麻市 (後)

Y社は、昭和48年創業の老舗の無借金経営で技術的にも定評のある企業、平成17年には Y社代表が居住する嘉麻市に、代表の妻を社長とする同業会社E社を新設し、嘉麻市発注の工事に参加を始めた。
その翌年の18年、E社と同一住所に Y社嘉麻支店を併設(無許可)している。
そのことで、1つの工事に 実質ワンオーナーが 2社で入札に参加できるようになった。

無許可で受注した2件のうちの1つが、平成30年8月に行われた市営農泊施設の衛生設備工事(予定価格税抜4904万8000円)だ。
一般競争入札だったが、応募条件から市の業者の参加が限られており、Y社嘉麻支店と E社、そして別の1社の3社競合となり、 結果的に Y社が落札率99.9%で受注している。

市は昨年、住民からY社が無許可受注しているとの指摘を受け調査を開始、虚偽申請が認められたとして、Y社を1月付けで3ヵ月間の指名停止処分とした。
そして6月11日、工事の不備はなかったとして、Y社に工事代金の返還までは求めない方針を示した。

結局、入札の経過も不透明なまま、 無許可の「やったもん勝ち」となり、業者選考のルールの不備が露呈した格好となった。
今後 仕事の全体量が減る中、一部の業者があの手この手を考えて仕事を奪い取りに来ることが想定され、ルール違反に行政が甘い対応をすれば、「やったもん勝ち」を良しとする業者が後を絶たないのではなかろうか。

ー 了 ー

やったもん勝ちで終わった無許可工事・嘉麻市 (前)

福岡市都心でも、建設業界におけるコロナ不況の足音が微かに聞こえてくるが、地方では人口減に伴い民間工事が減る一方で公共工事の抑制も見られ、受注競争は激化している。

筑豊地区の指名競争入札では、コロナ禍以前から最低制限価格で複数の業者が札を入れ抽選で決まるという傾向にあったが、中には仕事欲しさにアンフェアな手を使う者も出てきた。

問題となったのは 飯塚市を拠点に管工事等を手掛ける Y社(本社:飯塚市)だ。
Y社の嘉麻支店が県の建設業許可を受けていないにも拘わらず、嘉麻市発注の公共工事2件(計7912万円)を受注していたことが判った。
建設業法では、請負契約を常時締結する支店は建設業の許可が改めて必要とされているところ、許可を得ないまま同市に公共工事の指名登録願いを申請していた。

しかし、嘉麻市の登録業者の話では、市の契約担当課による必要書類のチェックは厳しいため、許可証を持っていないことを見抜けないはずがないという。
少なくとも、Y社は分かっていた。

そして、平成30年8月に行われた入札は、不可解なものだった。

ー 続 く ー