カホアルペ・指定管理者移行に暗雲

嘉麻市議会12月定例会の冒頭で、議会が福岡地検に提出していた告発状5件が全て受理されたとの報告があった。
告発内容は市発注工事の官製談合疑惑を調査する特別(百条)委員会における偽証容疑、対象は赤間幸弘市長、元副市長の白石二郎氏及び建設業者2社の代表者の計4人で今後の行方が注目される。

こうした中、新たにコンプライアンス上の問題が議会で取り上げられた。
それは、廃校になった小学校の建物をリノベーションした市営宿泊施設「カホアルペ」の指定管理者の選考について。

現在、市直営の同施設は来年度から指定管理者に運営させるとして、今年5月公募、6月24日締切、8月4日にプロポーザル方式による業者選考が行われた。
応募したのは 現在同市内のキャンプ場の指定管理者P社(福岡市)、NPO法人B(嘉麻市)、そして 石川県に本社を置くR社の3者。
選考の結果、僅差で最高得点を獲得した R社に決まった。

そして、嘉麻市議会の12月定例会に 「R社を指定管理者とすることに同意を求める議案」が上程されたのだが、複数の議員から質疑があった。
要約すると、R社の社員と嘉麻市の職員の間で、募集期間の随分前から複数回にわたる接触があり飲食をしていた事実があるのではないか、このことは指定管理者募集要項における選定方法及び選定基準(本件の関係者に対し不当な接触等が認められたときは無効または失格)に該当しているのではないか、ということである。



それに対し執行部は「指定管理者制度に移行するにあたり、いろいろな業者の方に指定管理者に手を挙げてもらえないか営業を行い、その中で質問されれば答えられる範囲で回答してきた。不当な接触という認識はない」という趣旨で答弁、公募前にR社と接触したことは認めている。

市の立場なら、「同様の施設管理に実績があり、少ない指定管理料で応じてくれる業者があれば請けてほしい」と考えるのは当然で、ネット検索などで業者を見つけ、指定管理者の公募に応じるようにお願いしたとしても不思議ではない。
しかし、そこから一歩踏み込んだとすれば 話は微妙に違ってくる。

市は R社に営業を行ったと述べたが、事前にR社の社員との接触が複数回、それも飲食を伴っていた、これが事実であれば、事前の接触に当たる可能性はじゅうぶんあるだろう。
少なくとも P社やNPO法人Bは、市と複数回の接触もなければ飲食もしておらず、公募が始まってから準備を始めている。

こうなると、ポロポーザルの採点が公平公正に行われたかどうかも疑わしくなる。
P社は11月8日付で、赤間市長宛に 処分の取り消し(選考の無効)を求める審査請求書が送付している。
ところが、前述の通り 市は12月議会に議案を提出、市は議案が可決すると高をくくっていたと思われるが、議会が黙っていなかった。



12月6日の産業建設委員会において議案の継続審査が決まったという。
これは市とR社にとっても想定外だったと思われ、4月からの移行のスケジュール等に影響が出るのは必至だ。
最悪の場合、否決されることもあり、こうした面倒な状況が続けばR社も撤退を検討し始めるのではなかろうか。

一連の流れを見ると、学校建設の官製談合疑惑とは異なり、市の厳しい財政状況の中で最良の施設運営を考慮した苦肉の策だったことが想像され、利権絡みとか悪質さは感じられない。
しかし、業者選考は 細心の注意を払って 公平公正、完璧に行う必要がある。

今後の展開が注目されるが、期待されているリノベーション施設だけに、赤間市長におかれては知恵を絞って最適な答えを見つけ出し、議会と協力しながら前に進めて頂きたい。

書類偽造の疑い

NEXCO中日本が大島産業(宗像市)に発注した中央自動車道耐震補強の施工不良問題の取材を進めていたところ、契約書類が偽造された可能性があることが判った。

過去に類似した事件があった様に思え、記憶を辿ると1991年の共和汚職事件に行き着いた。
大手商社「丸紅」と筑豊地区の鉄骨加工メーカー「共和」による鉄骨資材の架空取引で、資金が政治家に流れた事件だったが、当時、県警が共和の内偵を進めていたところ、福岡地検との連携がスムーズでなかったため、大きな魚を取り逃がし、東京地検特捜部に持っていかれてしまったことを思い出した。

今回の事件は関東地区が舞台となっており、県警や福岡地検は余り熱心ではないようだが、不可解な支払いの迂回もあり、場合によっては大きな魚となり得るかもしれない。



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揺れるみやまスマートエネルギー・6

みやまSEは調査委員会の報告書を受け、その後の取締役会において、指摘があった「手続きの不備」を追認したが、不適切と指摘された支出は存在しなかった。
一部報道で、「不適切な支出があったとして、PHDが約450万円をみやまSEに支払い清算した」とあったが、正しくは年度途中に想定外に得た収益の一部を支払ったということで、契約外の配慮をしたものである。

市長の方針で磯部氏は社長を退任することとなったが、結果として みやまSEは磯部氏とPHDの潔白を証明することになり、市の担当者も6月5日の記者発表で、「調査委員会の報告書で指摘された問題は全て解消した」と述べている。
その後、福岡地検も調査に入ったが、告発状で「みやま市に不利益を与えた」とされた肝付町との契約については、担当検事は「双方の現在の立場だけでなく、将来にも配慮した的確でバランスの良い判断をした」とコメントしたという。
結果、前述のように「起訴するに足りる証拠がなかった」として不起訴処分となった。
つまり、PHDはみやま市を「食い物」にしたのではなく、不当利得なかったというのが、みやま市とみやまSEが出した結論である。

調査報告書による新聞報道と刑事告訴で、思わぬ社会的制裁を受けることになった磯部氏は、風評被害等でその後のビジネスに大きな支障が出ていると聞く。

「行政の継続性」という言葉がある。
選挙で首長が変わる度に、政策が二転三転しては住民にとっては迷惑だ。
行政には、一度決めた事業は余程のことがない限り、方針を曲げず続けていくことが求められる。
民間事業者などが相手の時は尚の事である。

西原前市長の肝煎りで立ち上げた 第三セクターみやまSE、磯部氏はその計画段階から参画し、前例のない電力の地産地消、自治体電力の在り方を模索し、アイデアを駆使し創り上げていった。
前市長がトップセールスで柳川市と大木町との大口契約を取り付ける一方、磯部氏は各地の地域電力を立ち上げる法人を支援しながら取次店契約で全国展開を進め、5期目となる2019年(平成31年3月期)には24億2008万円を売上げ創業期の赤字を解消、更に47名の雇用を実現した。
直近の2020年(令和2年)3月期には24億7231万円を売上、1億4411万円の最終利益を出すなど、第三セクターとして申し分のない経営状況だった。

— 続く —



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