在任中パーティ自粛発言の余波

岸田総理は2月29日の衆議院政治倫理審査会における野田佳彦議員の質問で、「在任中はパーティをやることはない」と言わされてしまった。
かなり後悔しておられるのでは。

5日の参議院予算委員会では共産党の田村智子委員長が質問に立ち、総務省が岸田総理の政治資金団体「新政治経済研究会」の過去5年分の収入のうち、政治資金パーティによる収入額と割合を答弁した。(下表の通り)


令和4年にはパーティで1億5509万円もの収入があり、収入の98.4%を占めている。
これまで岸田総理が大臣規範に反し、「勉強会だから問題はない」とうそぶいてまでパーティを開催してきたのは、私設秘書や運転手、事務担当者の給与の支払いなど事務所を維持する費用を稼ぐ必要があるからだ。

「在任中はパーティをやらない」という発言を聞いて、林芳正官房長官もギョッとしたのでは。
林氏も外務大臣だった令和4年、パーティを8回開催し 8468万円の収入があった。


これから大臣になる先生方は、在任中は懐が寒くなることを覚悟しなければならないだろう。

選挙妨害より 次期衆院選の戦略を

野田佳彦元首相や、原口一博元総務相、米山隆一元新潟県知事など存在感を発揮している議員もいるが、やはり 立憲民主党に政権を任せる気にはならないといった声が多い。
1日の衆議院本会議、予算委員長解任決議案の趣旨弁明で登壇した山井和則議員の議事妨害は酷かった。

2時間54分のフィリバスター(長い演説による審議時間の引き延ばし)を敢行した山井議員は、 他の議員が嫌がる役まわりを引き受けたものと思われるが、作戦を決めたのは党である。
立憲が与党から何らかの譲歩を引き出せたなら成果があったと言えるが、結局翌日に行われた異例の土曜審議で新年度予算案は可決、無駄骨に終わった。

国会審議には多くの公務員が関わっており、時間外労働で莫大な経費がかかったのではないかと想像する。

今ここで「与党の強行採決」「数のチカラの横暴」などと叫んで抵抗しても意味はなく、前身の民主党も 現在の選挙制度で政権与党となり同様のことを行ってきたはずだ。

2021年の衆院選で、自民党に単独過半数を許したのは立憲に対する信頼がなかったからで、現在も立憲の支持率が上がっているというが、それは自民の支持率が沈下しているからであって信頼が回復したからではない。
議事妨害でパフォーマンスを行うより、次期衆院選で勝てるための戦略を練るのに時間を使った方が良いだろう。

立憲にも「汚れた雑巾」

日の衆議院予算委員会、立憲民主党の野田佳彦議員の質疑は迫力があった。
野田氏は、30年前のリクルート事件後に自民党が策定した「政治改革大綱」で、閣僚や党役員は派閥の長を辞めると決めていたにも拘わらず、岸田総理が総理に就任しても派閥の領袖を辞さなかった理由を尋ねたが、総理は「反省しなければならない」とだけ述べ 答えることができなかった。

また、総理が大臣規範に反して政治資金パーティを頻繁に開催してきたこと、広島での総理就任の祝賀会を脱法的に行ってきたことを挙げ、「抜け穴づくりの先頭に立っている」と語気を強め、自民党政治刷新本部長を務める総理に本部長を辞するよう求めた。
本気度が感じられない総理の改革姿勢を炙り出す質問は的確で見る者を唸らせた。

一方で、その後に登場した福岡10区の立憲、城井崇議員の質疑には溜息が出た。
26分間で 新しい内容もなく、総理から何一つ引き出せないまま終了、野田議員と同じ松下政経塾出身だが 格の違いだけが印象に残った。

スキルの問題もあるが、立憲は「政治とカネ」を追求する議員の人選を間違ったようだ。
実は、城井氏は自身のSNSなどで「裏金議員の退場を厳しく求めます」と声高に叫んでいるが、実は自身も政治資金の還流を地元紙に指摘された過去がある。
平成26年1月9日の記事で、城井氏が 税金の掛からない政党支部に寄付した後、同日中に自身の後援会に還流させることにより、所得税控除で約535万円の還付を受けていたと報じた。

更に、令和2年9月の旧国民民主党解党時、政治団体「福岡県改革協議会」なる団体を新設し、政党交付金が約7割含まれる県連総支部の資金 約1億1000万円を移動させ、自身を含む国会議員の選挙資金として還流させているのだ。
これについては後日詳しく報じるが、政党交付金を自身の選挙資金に還流させている議員は退場しなくてよいのだろうか。

野田議員は、裏金議員らが多く含まれている自民党の政治刷新本部を「汚れた雑巾では汚れを落とすことはできない」と指摘した。
その通りであるが、身内の中にも同じく汚れた雑巾があることを恐らくご存知ないのだろう。

閣議決定で可能? ブーメランもあります

安倍元首相の国葬決定を巡り、野党や市民団体が反発を強めている。
在任期間が長かっただけに、功罪を数え上げればきりがなく、泣かされた側の国民が納得できないという気持ちも分かる。
しかし、内閣法制局が「国葬は閣議決定で行える」との見解を示したのであれば、これ以上文句のつけようもなかろう。

但し、閣議決定で行えるというのなら、将来のブーメランも想定しておきたい。
万万が一何かが起こって 立憲・社民・共産の連立政権が誕生したと仮定とする。
例えば、韓国で土下座したことのある元首相が亡くなったとして、連立政権が閣議決定で「その平和活動の功績を称え国葬とする」と決めても 文句が言えないということだ。
自民はじめ賛成派の党、そして国民も覚悟しておかなければならない。

小泉首相退任から第2次安倍政権の前までは、海外の首脳から名前を覚える間もないくらい毎年のように首相が交代し、一国民として恥ずかしい思いをした時期もあった。
しかし、第2次安倍政権以降の7年半で安部首相の名前は各国首脳の記憶に刻まれ、日本国としての存在感が増していったのも事実だ。

国葬にすれば 弔問外交も行われる。
ウクライナ戦争の完全終結や 世界の分断を修正するきっかけとなればいいのではなかろうか。
岸田首相におかれては、やると決めたら国益にかなう成果が確実に得られるよう、戦略を練って取り組んで頂くことを期待している。