[2009年2月16日 16:37更新]
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(09年1月号掲載)
米国の雇用が戦後最悪の減少となった。昨年度比250万人減。このニュースを聞いて、「ああ、日本はまだ少ないほうだな」と考える人がいるとすれば、まだまだ現実が見えていない、問題の本質を把握していないと思う。
アメリカはもともと独立独歩の国だ。人々は独立し、自分で自分のビジネスをやっていくパイオニア精神のある国民である。戦後長い間続いた好景気の後、1980年代後半に不動産の下落と経済の失速を経験し、90年代半ばまで銀行の統廃合をはじめとする大リストラを行ってきたのだ。
まずはこうした流れを、大まかに見てみよう。
80年代後半、S&L(貯蓄銀行)の破綻に始まった銀行リストラは、セキュリティー・パシフィック銀行、ハリス銀行など多くの伝統銀行の名前をマーケットから消し去った。
現在のバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)、ウェルズ・ファーゴ銀行なども本来は、ネーションズ・バンク銀行など中西部の銀行が買収したりしたものだ。つまりはバンカメ、ウェルズ・ファーゴという「ブランド」を、ただ維持しているだけだ。
同様にレーガン、クリントン両大統領の軍縮政策は当時高給取りの代名詞であった軍事航空産業の縮小を呼び、グラマン、ヒューズなどの会社の従業員、エンジニアを大量退職へと導き、街は多くの失業者を抱えた。 銀行員は転職し、エンジニアは新しい仕事に就いたが、大企業の雇用だけでは失業者を100%吸収できない。そこで政府は公務員を削減して「小さな政府」を目指しながらも、多くの人の起業を後押ししたのである。
その結果、レストラン、ソフトウェア、コンサルタント、ブローカーといろいろなサービス産業での起業を税制・規制面で開放し、入札は中小企業に優先的に与えられるようになった。さらに独占禁止法でもって大企業による寡占を許さないようにした。
現在アメリカの街にあふれている失業者は大企業のサラリーマンではなく、中小企業から出ている。つまり、失業者の多くはかつての「失業経験者」である。彼らは再就職を急ぐよりも、失業保険をもらいながら新しい会社を立ち上げ、以前働いていた会社の顧客にチャレンジしたりする。
こうした状況を支えているのは、失業者を救うさまざまなセーフティーネットである。失業者に支払われる失業保険は、上限はあるものの、働いていたときの給与の7割は最低2年もらえる。これが、以前は無期限でもらえ、失業保険での給付金のほうが良いので、仕事につかない人も多数出たほどである。
それから、宗教団体がボランティア団体のサポートがある。彼らのサポートがあるから、多くの人間が路頭に迷わないですむ。ボランティア団体は多くの寄付によって成り立っているが、ここで働く人たちにも十分な給料が支払われている。もちろん、ボランティア団体や宗教団体も内部に資金を留保することはできない。すべて開示されている。
アメリカでは、どのボランティア団体や宗教団体への寄付も、税金で100%控除できる。寄付を受けた団体が目に見える形で失業者を救済するとそれが宣伝となり、さらなる寄付を呼び込んであらたな同志をつくりだす。つまり、ボランティア団体はセーフティーネットであると同時に、雇用の新たな受け皿でもあるわけだ。
かたや日本、である。 失業すれば家も借りられない。雇用保険も1日最高で7000円程度。失業後も住民税は容赦なく過去の給与に加算される。職がない、食べ物がない、寝るところがない。世界に誇る個人レベルの預金が「セーフティーネット」とは、実にお粗末である。預金がない者は「死」しかない。
自殺者の数を比べると、アメリカが10万人当たり11人で、日本は同23人。10年連続で3万人を超え、世界第8位。先進国ではダントツである。いや、少なくともこうした数字を見る限り、もはや日本は先進国ではないと言っていい。
とにかく日本には、果敢に起業を目指した人が失業者になっても、救済するセーフティーネットがない。アメリカのように財閥を超えるような企業は、日本からは生まれにくい。だから失業者の受け皿が小さくなるのである。
日米の違いがお分かりいただけただろうか。「アメリカは大量の失業者が出てかわいそう。日本はまだまだいいんだな」というのは間違いであること、失業者の数や失業率だけで比較しても意味はないことをご理解いただけたことと思う。むしろ、日本の方が「失業の質が悪い」のが現実なのである。
政府以外に日本人同士をサポートするようなシステムが出来ると、もっといい社会になるのだろうが・・。
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