[2008年7月18日 09:08更新]
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(08年6月号掲載)
確かに、異様な光景ではあった。ネオンが輝くわけでもなく人が行き交うわけでもない、深夜のオフィス街。多くのタクシーがビルを取り囲み、通りにまであふれている。
財務省をはじめとする霞ヶ関「接待タクシー問題」。福岡の人間にとって、多くのタクシーが客待ちをする場所といえば中洲などの歓楽街しか思い浮かばないだろう。深夜帰宅する際日常的にタクシーを使う人も少ないはず。だから「酒や金品を受け取るなどけしからん」と憤りつつも、その背景はよくわからないと思う。
接待タクシーの習慣はバブル期に始まった、とされている。接待費や深夜の交通費など糸目をつけずにバンバン使えた時代。当時銀座などの繁華街では、深夜にタクシーを捕まえるのは至難の技で、タクシー運転手にとってはまさに「わが世の春」だった。
そんな中でも、いかにして長距離の客―業界用語で「ロング」―を捕まえるかが売上アップに直結した。逆に、初乗り運賃程の近距離客は「ゴミ」。「昨夜はロングが2発来たが今日は参ったよ、ゴミばっかりでさ...」。運転手同士のこんな会話を何度も耳にした。
ところが、景気が傾くと同時に企業が交通費などを削り始める。さらに規制緩和でタクシー台数が増加し一転して客の奪い合いに。だが現実は厳しい。終電時間を境に人通りは激減する。繁華街で客待ちしても深夜以降は「仕事にならない」。そんな中にも例外はある。霞ヶ関の官庁街である。
多くの省庁では深夜零時半を過ぎるとタクシーチケットが支給される。20~30代の若い官僚は本当によく働くし、予算編成の時期には残業はさらに増える。東京では通勤に片道2時間近くかかる場所に住む者も珍しくない。当然、タクシー代も1万、2万はざらだ。
「運転手に場所を告げると露骨に嫌な顔をされるんです」。そう苦笑するのは、霞ヶ関から程近い場所に住むある官僚だ。ロング1発を当て込み延々と待ち続けた運転手も、確かに気の毒。何とか上客を抱え込もうとあの手この手でサービスする気持ちは理解できる。
問題は官僚側である。タクシー代はもちろん税金。それを使う見返りに接待を受けるとは、やはり普通の感覚ではない。だが・・。例えばある官僚は、残業が増えてくると「移動時間とタクシー代がもったいない」とわざわざ近くに引っ越した。筆者の知る限り特に若い官僚は、実にまじめで熱心な人ばかりだった。
そんな彼らがいつ、自らの既得権益とそれを保持することしか考えない「霞ヶ関官僚」へと変化するのか。いまだに答えが見つからない。
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