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災害現場と政治家のパフォーマンス

[2008年9月12日 09:21更新]

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(08年8月号掲載)

岩手・宮城内陸地震や中国・四川大地震。今年は大災害のニュースが多い。これまで多くの災害を取材してきたが、豪雨や台風の季節がやってくると、ある現場で出会った大物政治家のことを思い出す。

1997年7月10日未明。「鹿児島で土石流が発生、行方不明者多数」。筆者を含む記者とカメラマンでタクシーに飛び乗り、福岡市から出水市を目指して高速道路を南下した。

現場は惨憺たる状況だった。ごっそりと削り取られた山肌、赤茶色の土砂に押し流された家屋や木々。泥水が覆った道路を、側溝に何度も落ちながら歩いた。

次第に明らかになる被害状況。無線や公衆電話で記事を送り込む。だが情報は少なく、行方不明者の救出も思うように進まない。関係者やマスコミにイライラが募り始めていた。

 

その時、黒塗りの高級車が現れた。作業服姿の男が、SPに囲まれながら現場に降り立つ。建設大臣。災害状況の視察に訪れたのだ。

大臣が動くと、東京から来たマスコミ―いわゆる番記者など―もぞろぞろとついて歩く。テレビでは目にした光景だが、大物政治家の被災地視察を現場で見るのは初めての経験だった。「何様だよ、あいつら」。泥まみれになった地元マスコミ記者が、こう吐き捨てた。

 

陽が落ち始めた夕刻。記者や関係者を集めて大臣が会見を行った。多くのテレビカメラが大臣に向けられている。「今日の救出作業はいったん打ち切る」。その時、人ごみの中からある男性が声を上げた。「不明者はまだ大勢いる。何とか続けられないか」。

突然、大臣が大声でこの男性を怒鳴りつけた。「何を言っとるのか、貴様!みんな死に物狂いでやっとるんだ、これ以上、関係者を危険にさらせと言うのか!」

気でも触れたかと一瞬思った。記者に混じってはいるが、明らかに地元住民だ。「あと少しだけ...」。懇願する被災者を罵倒する大臣。テレビカメラの列はこの光景をじっと捉えている。

会見の後、大臣は隅の方で男性に平謝りに謝っていた。記者の発言と勘違いしたのだという。

 

今は大臣の行為をこう理解している。カメラの前であえて記者を怒鳴りつけることで、陣頭指揮に立つ自分を演出しようとしたのだ―と。実際この時の様子は、大臣の強面ぶりを示す絶好の資料映像として時々使用されている。ただ相手は、実は記者ではなかったのだが。

筆者にとって出水市での災害取材は、政治家のパフォーマンスと演出、それを報じるマスコミの役割について考えをめぐらせるきっかけともなった出来事だった。

なお、この建設大臣とは現国民新党代表代行、亀井静香氏である。

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