[2008年10月24日 09:47更新]
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共同通信は19日、検討会議で「現役監督は難しい」との意見が大勢を占めたことについてイチロー選手が「本気で最強チームをつくろうとしているとは思えない」などと発言した、との記事を配信。スポーツ各紙は20日付朝刊で大きく報じ、中には1面トップで扱う社もあった。
記事によると、イチロー選手は「最強のチームをつくると言う一方で、現役監督から選ぶのは難しいでは、本気で最強のチームをつくろうとしているとは思えない」と指摘。
「大切なのは足並みをそろえること。(惨敗の)北京の流れから(WBCを)リベンジの場ととらえている空気があるとしたら、チームが足並みをそろえることなど不可能でしょう」「もう一度、本気で世界一を奪いにいく。WBC日本代表のユニホームを着ることが最高の栄誉であるとみんなが思える大会に自分たちで育てていく。シンプルなことなんですけどね」と語ったという。
実に明快で、正論だと思った。ある種の清々しささえ感じた。
五輪惨敗の反省もなく、一部の思惑によって進められているとしか思えない監督選出のあり方を、実際にプレーする選手の立場からはっきりと批判。それだけではない。
WBCは米メジャーリーグ(MLB)と労働組合選手会が共同出資してつくった1企業が主催する大会。当初から「MLBが新たな市場を開拓していくための大会」との見方があり、それを裏付けるように開催時期や対戦方式、組み合わせなどアメリカ主導で強引に決められた。このため日本球界からも「シーズン前の大事な時期、MLBのための大会に犠牲を払ってまで参加する意義があるのか」との声が上がっていた。だがふたを開けてみれば日本が優勝。大会の本質や意義を問う議論は置き去りにされてしまっている。
イチロー選手の「WBC日本代表のユニホームを着ることが最高の栄誉であるとみんなが思える大会に自分たちで育てていく」との発言は、その目的や運営方法に問題があるという現状を十分に認識した上で「自分たちが最高のプレーをすることで大会そのものの価値・重要性を高めていくしかない。選手である我々にとってはそれが唯一の方法」という意味ではないだろうか。
イチロー選手については王氏も理解を示し「今までと変わった提案が出るかもしれない」とこれまでの流れが大きく変わる可能性を示唆(21日付スポーツニッポン)。その後星野仙一氏は、仮に監督就任を要請された場合でも固辞する意向をコミッショナー事務局に伝えた(23日付同紙)。イチロー発言の影響で、既定路線とみられた監督人選が白紙に戻ってしまったのである。
筆者自身は星野氏であれ誰であれ、正当で明確な基準によって選ばれるのであればいいのではないか、と思っていた。最大の問題点は、球界のお偉方や実績のある指導者らが集まって議論しているはずなのに「透明性が重要」というのは上辺だけ、実態は正反対としか言いようがない、「不透明な選考過程」にある(就任辞退を表明せざるをえなくなった星野氏もある意味、被害者と言えるもしれない)。
それが、1選手の発言によって覆されようとしている。
ファンの立場からすれば非常に喜ばしいことである、だが・・。イチロー選手にこのような役回りをさせて良かったのであろうか。いくら優れたプレイヤーであってもしょせんは1選手にすぎない。なのにこのような重い役割を押し付けてしまったことで、いわば反動のような事態が起こるのではないか。今後彼の立場がどうなるのか、少しばかり心配である。
今回の発言はすなわち、一部の有力者の思惑で動き、企業利益の論理がファンサービスよりも優先される日本球界の現状を、真っ向から批判したものにほかならない。「余計なこと言いやがって」と苦々しく思っている人間が球界上層部いるのは間違いないだろうし、案の定、すでに「1選手が言うべきことではない」との声が出ているという。
またイチロー選手は、その発言が曲解・誤解されることがこれまで度々あった。例えば前回のWBCで「向こう30年、日本には手を出せないと思わせたい」との発言がなぜか誤って伝えられ韓国代表選手・ファンから猛反発を食っている。今回の発言も同様に何かの拍子に真意がねじ曲げられ、一部ファンの攻撃を受ける可能性もあるのではないか。
もちろんイチロー選手はこうしたことを承知の上で発言したのだろう。杞憂に終わってほしいものであるが。
とにかく、これからあらためて監督の人選作業が行われる。ファンが納得して応援でき、選ばれたプレイヤーたちが一致団結して野球に集中できるような結果を望みたい。
それにしても-と思う。現在の日本球界を牛耳る大人たちの、何と情けないことか。
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