[2008年12月 2日 08:54更新]
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読売新聞1日付夕刊に興味深い記事が掲載された。「地デジ低調、現状で世帯普及率50%超ならず」。テレビの地上デジタル放送(地デジ)の普及ペースが、政府や関連業界の目標を下回っている、という内容だった。
同紙によると、今年9月時点の普及世帯は約2350万世帯で、政府などが目標としていた2600万世帯に比べ250万世帯少ない。普及対象の全5000万世帯に対しては約47%にとどまっているのだという。
政府などは2011年7月にアナログ放送を終了し、地デジに完全移行する計画で、同4月までに全世帯、約5000万世帯への普及を目標にしている。しかし今後しばらくの間、経済の悪化で急な伸びも期待できそうにないことから、鳩山邦夫総務相は「万が一、(完全移行が)延期となった場合は、国が責任をとって(地方局の経営を)支援するしかない」と危機感をあらわにしたという。
記事は「普及の遅れを取り戻すことは容易ではなく、完全移行までの全世帯普及に『黄信号がともった』との声も出ている」と結んでいる。
近い将来テレビ放送が完全に地上デジタル波へと移行し、アナログしか対応できない機種では番組を見られなくなる。このことは、テレビや新聞で大々的に宣伝しているおかげで、今や多くの方がご存じだろう。
本紙はちょうど1年前、「見返りなき投資 地デジめぐる地方テレビ局の本音」「頭抱えるTV業界 アナログ停波、2011年にできない!?」と題し、すでに一部の識者から「地デジ対応機器の普及が間に合わない」との声が出ていること、特に地方の民放各社は経営への不安から強い危機感を持ち、かつそのことが表にはほとんど出ていないことを指摘していた。
当時から地デジ導入に対する批判・不満は、民放各社の中に渦巻いていた。地デジ放送のための設備投資はすべて局が負担、これに対する見返りは事実上ない。さらに、デジタルへの完全移行が遅れればその間、テレビ各局はデジタル・アナログ両波による放送を続けなければならず、メンテナンスなどのコストは莫大になる。
今回、地デジ専用チューナーや対応型テレビを持つ世帯数を明らかにしたのは、放送局や経済団体などが参加する「地上デジタル推進全国会議」。つまり「地デジを推進する側」が、ここへ来て具体的な数字を発表し、普及の遅れを認めたわけだ。
こうした事実は依然、テレビ自身の手によってほとんど報じられていない。筆者の知る限り、推進会議が上記の数字を明らかにしたという12月1日、テレビ各社は「地デジの日」と称し、人気アイドルらが出演した様々なイベントについて報じただけであった。
本紙は、「地上デジタル放送の是非」を論じているわけでも、「アナログ放送の方がいい」「地デジ計画を止めろ」と主張しているわけでもない。
もちろん「地デジ難民」といった問題も重要ではあるが、それだけではない。「地デジ完全移行」の大合唱の中で、関係者は一様に危機感を持っているにもかかわらず、メディアたるテレビ自らが事実を報じていない。その結果、多くの視聴者が「国が音頭を取って進めている新施策の裏側で一体何が起こっているのか」を知らされていない。このことを問題視しているのである。
現在の状況を踏まえた上で国や電器メーカーが総力を挙げて対応すれば、目標とする11年に間に合うかもしれない。だが仮にそうなったとしても、民放各社の経営が地デジのおかげで圧迫されているという事実に変わりはない。そのツケは、おそらく報道部門などの人員・経費削減といった形で表面化することになるだろう。1部門ならまだいい。関係者の中には会社そのものの「地デジ破綻」の可能性について真剣に危惧している者が多数いる。
一般視聴者の中には、テレビ業界に華やかな印象を持っておられる方も多いはずだ。だが業界関係者と地デジ関連の話題や今後の経営見通しについて話すと「一見華やかに見えるが実態は完全なる斜陽産業」「この業界も先は長くない」といった声が想像以上に大きいのが現実である。いずれにしても、すべてのツケは最終的に視聴者へと跳ね返ってくるのは間違いないだろう。
地デジをめぐる問題は、報道機関としてのテレビメディアが抱える様々な問題や限界を端的に示している-こう断じてしまうと、関係者からお叱りを受けるかもしれないが。
なお、地デジについて「日本民間放送労働組合連合会(民放連)」は03年、「現行の地上デジタル放送計画中止を求める特別方針」を採択している。興味がある方はご覧になっていただきたい。
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