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[記事カテゴリ:取材こぼれ話]
土井監督とイチロー

[2009年11月12日 12:39更新]

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(09年10月号掲載)

巨人V9に貢献したかつての名2塁手、土井正三氏が9月末、死去した。現役時代の土井氏は、長島茂雄、王貞治両選手らスターが居並ぶ中では地味な存在。だがバントや走塁など小技が巧みで、華麗なグラブさばきで魅せるプレイスタイルが、筆者はとても好きだった。 

 

そんな土井氏だが、オリックス監督時代(1991~93年)に「イチローの才能を見いだせなかった」と報じられてきた。イチロー選手を2軍に落とした上、彼独特の振り子打法を矯正するよう指示して対立したからだ。 

次の監督の仰木彬氏によって1軍に定着した同選手は大ブレーク。その後の活躍ぶりは紹介するまでもなく、イチロー選手をめぐる両監督の対応と結果が、少なくとも表面上はあまりに対照的だったのは間違いない。

筆者が当時、野球担当記者に土井監督についてたずねると、うんざりした表情で「何かというとV9時代の自慢話ばっかり」。マスコミとの関係は良好とは言えなかったようだ。そんなことも影響してか、同選手が記録を塗り替えるたびに土井氏のエピソードも取り上げられ、一般には「だめな指導者」との評価が定着してしまった感があった。 

だが、個人的にはどうも納得がいかず、2軍に落とした本当の理由は何だったのか─とずっと疑問に思っていた。そのため、土井氏死去を報じる記事やコメントを注目しながら読んだ。 

 

スポーツニッポン紙上で二宮清純氏が連載しているコラム「唯我独論」。この中でイチロー選手に2軍行きを命じた真意を土井氏にたずねた時の話が紹介されていた(9月30日付)。

それによると、直接のきっかけは、イチロー選手を代走に起用した際に牽制でアウトになったこと。土井氏は二宮氏に、巨人時代、高田繁選手がイチロー選手同様にミスをして2軍行きを命じられた時のことを語った。川上哲治監督の措置に納得がいかず、後にその理由を聞くと川上氏は「もし、あそこで何も罰を与えなかったら野球をナメてしまう。敢えて厳しくしたんだ」と説明したという。 

同紙(同26日付)の、イチロー選手のコメント。「土井氏には『イチローという才能を見いだせなかった』とのイメージが付きまとうことになったが、当事者のイチローはこの見方を否定する。『そうじゃないのにねえ・・』」 

2つの記事を読み、胸のつかえが取れた。軋轢を生じさせながらも頑なに自らを貫き妥協しない。それでいて、周囲に惑わされることなくお互いの力量を認め合う。そんな「本物のプロ」の姿に、すがすがしさを感じた。

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