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[記事カテゴリ:取材こぼれ話]
高速道路問題で思い出した小久保選手の無償トレード事件

[2010年5月12日 09:42更新]

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(10年4月号掲載)

本紙では2月号以来、高速道路SA、PA運営の問題を報じている。「西日本高速道路サービス・ホールディングス」(NEXCO西日本SHD、大阪市)の内情について関係者から証言を聞くなど取材を進めていると、少し前の出来事ではあるがプロ野球界、そして福岡を騒がせたある「事件」を思い出した。 

 

わがホークスがダイエー時代の03年秋、小久保裕紀選手がジャイアンツへ無償トレードされることが突然発表された。

この年、ホークスは日本シリーズ優勝を果たしたのだが、小久保選手放出の発表は優勝パレードの翌日。けがで長期欠場していたとはいえチームの主砲、顔であった小久保選手を何の見返りもなく手放すという前代未聞の事態、喜びに沸くファンに冷水を浴びせるようなタイミングに、マスコミは騒ぎ立て、ファンからは批判が噴出した。 

西日本スポーツは「フロント暴走」「幹部冷遇に反発 移籍直訴」などと報道。同年の優勝を「小久保がいないから勝てた」と言い放つ球団幹部がいるなど「正論を語り、かつ人望のある小久保は、彼らにとって煙たい存在になっていた」とも指摘した。

だが、なぜ彼が球団側にとって煙たい存在となったのか、西日本スポーツを含め各社とも明確には報じず、根本的な理由は曖昧なままだった。 

 

「当時の球団社長、高塚猛氏の専横ぶりは目にあまるものになっていた。これに小久保選手が苦言を呈したのがそもそものきっかけです」。あるマスコミ関係者はこう説明する。

「一目で水商売と分かる女性と連れ立って試合を観戦し、VIP席で“狂宴”に及ぶこともあった。選手が命がけで戦っている時に、一体何をやってるんだ、と」 

高塚氏は、いわゆる「福岡3点事業」(福岡ダイエーホークス、福岡ドーム、ホークスタウン)の責任者として大きな成果を上げるなど、「平成の再建請負人」としてその経営手腕を高く評価された。ところが、地元をはじめメディアにも頻繁に出演しその名が知れ渡るにつれ、セクハラ行為などの横暴も目立つようになっていた。

実はこの話、取材記者の間ではいわば常識となっている。筆者自身も当時、スポーツ担当記者から「高塚氏の行為は試合中、グラウンドの選手たちから丸見え。そのため多くの選手に怒りや不満が募っていた。小久保はそうした選手たちを代表する形で同氏の振る舞いを正面から批判、それが幹部の怒りを買った」と聞いていた。

だが「無償トレードという球団の対応そのものについては疑問視しながらも、放出の原因となった高塚氏の行為について、きちんと報じるところはなかった」(前出マスコミ関係者)。

多くのマスコミが、事実を報道することより地元球団フロントとの関係維持、つまりは企業としての利益を優先させたであろうことは、容易に想像できる。営業成績を上げるために必死に高塚氏ら幹部のご機嫌をうかがい、取り入ろうとしていた地元民放関係者の話など、別に珍しくもなかった。

高塚氏は翌04年、女性社員への強制わいせつ行為が発覚して逮捕・起訴され、有罪が確定した。

 

4月号のSA、PA問題続報記事に登場するSHD幹部Y氏。かつてダイエー球団に在職中、高塚氏の右腕と評された人物である。同氏とともに球団を追われた後、福岡のある民放幹部の仲介でSHDに入社したという。この件については08年3月、「J氏の独り言」で触れている。

そんなY氏も今や大阪の地で当時と同様、大活躍しているようである。西日本高速道路SHDとダイエー球団末期の姿とがだぶって見えるのは、筆者だけではなかろう。 

 

プロ野球が開幕して約1カ月、決して好調とは言えないわがホークス打線の中にあって、小久保選手の奮闘ぶりは一際目立っている。

06年にホークスに復帰、38歳の今も第一線で活躍する小久保選手。幹部の横暴や法令無視に憤りながらも、目先の利益や自己保身を優先し内心震えている、あるいはダンマリを決め込んでいる方々にはぜひ、同選手のプレーする姿を見ながら、このエピソードを思い出していただきたい。

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