[2010年8月18日 10:13更新]
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(10年7月号掲載)
国体道路をはさんで天神・大名地区の南側に位置する福岡市中央区今泉。以前は静かな住宅街だったがここ10年あまりの間に様子がずいぶんと変わった。セレクトショップや飲食店などが増え、若者が行き交う。
そんな街の一角に昔ながらの銭湯「本庄湯」はある(写真)。
木製の床は黒光りしところどころ表面がはげている。ロッカーも木製で、カギに付けられたゴムひもが伸び切っているのはご愛敬。
風呂場の中央に小判型の浴槽が1つ、2人が入れば一杯の小さなものが角に1つ。サウナや低周波風呂といった設備はなく、コーヒー牛乳が並ぶ冷蔵庫もない。
天井付近には昭和中期を思い起こさせる大型扇風機があってこちらを向いているのだが、動いているところは一度も見たことがない。
「おかげさまでもう50数年になります」と番台に座るおかあさん。客は皆近所に住む人たちのようで静かに湯を浴び、そして静かに帰って行く。まるでタイムスリップしたような雰囲気を味わいに時々訪れる。
「エイジング」。一般的に時や年令を重ねて行くことを指す。酒好きの人であれば「熟成」の意味で1度は聞いたことがあるはずだ。さらに最近は、ファッション雑誌でも使われているのをよく見掛ける。
革製のジャケットや靴、デニムのジーンズ。ファッションにおけるエイジングとは、永年使ってしわが寄ったり色落ちしたり破れたところを修繕することで、使用感と風合いが増すことである。「経年変化」と訳されることも。
筆者は特に革製品が好きで、使い込むほどにジャケットやブーツの表面がすれて色が落ち、だんだんと体に馴染んでくる感覚が楽しく、愛着も増してくる。
数年前、最初からわざと修繕跡を作ったり機械などでこすって色落ちさせた古着仕様の新品ジーンズを見た時は、こんな物、一体誰が買うんだろうと思った。自分自身の体で使い込んでこその魅力、時間は金で買えるものではない─。
それがこのごろは当たり前のように同種の商品が店頭に並び人気を呼んでいる。筆者の感覚がエイジングしたのか・・。
老化、加齢。エイジングという言葉に良くない印象を持つ人も、もちろんおられるだろう。特に女性は、アンチ・エイジングに日々励む方も多いはずだ。
この仕事をしていると頻繁に遭遇する、組織とシステムのエイジング。何と訳せばいいのだろう。腐敗、ひずみ、ゆがみ。例えば相撲協会。例えば福岡県政、添田町政。
長い時間が生み出す魅力と害悪。なぜこうも両極端に分かれてしまうのか。本庄湯の湯船に浸かりながら考えてみるが、答えは見付からない。
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