騙される銀行員~税理士の犯罪 [2015年8月8日09:38更新]

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 10数年前、銀行を指導監督する官庁に、決算書を分析するソフトがあり、これに融資を申し込んだ企業の3期分の決算数字を打ち込むと、コンピューターが分析して、融資の可否を判断してくれていた。
実に便利なソフトだったようで、機械的な処理だけで完了するため、人間関係や融資が実行出来なかった時の言い訳、もちろんややこしい分析値計算にも、頭を悩ませないで済み、数百万円から数億円の融資まで、短時間で判断出来る優れものとして、多くの銀行員から重宝されていたのも事実。
そうした中、福岡市博多区の小さな菓子舗が、某銀行から融資を次から次に受けてM&Aを繰り返し、瞬く間に多くの店舗を新設して大きくなったことがある。
だが実際は、税理士出身の頭の良い経営者が、銀行使用の分析マニュアルの上を行き、融資実行の合格点が出るような架空の決算書を作成した上で、銀行から数十億円を引き出したというのが本当のところだった。
融資に際しては、銀行員が企業代表者に面談し、また担保物件などを実際に目で確認するなど、必ず踏むべき手順をすべて省略し、分析ソフトだけに重きを置いた致命的なミスだった。
ビジネスのスピードが速くなり、実際に物が動く流通経路も複雑化しており、融資も短期間で判断を求められるケースが増え、決算書類が重視されているのもわかる。
しかし税理士が作成した決算書を、疑うことも無く信用するという盲点を巧みに利用して、ねつ造された3期分の決算書類が数億円に化けたもので、銀行員がこまめに足を運んでいれば、経営者の不正が見抜けていたはずだが、手抜きの代償は大きな不良債権になった。