清掃工場建設と運営をゲットするスキーム [2024年8月1日09:00更新]

飯塚市・嘉麻市・桂川町・小竹町のゴミ処理施設、し尿処理施設、火葬場などを管理運営する「ふくおか県央環境広域施設組合」では、新清掃工場の整備計画が進められ、7月29日から事業者の公募(プロポーザル方式)が始まった。

一般廃棄物処理施設建設及び運営事業の事業者募集について

募集内容は、「ゴミ焼却施設」及び「リサイクル施設」の建設及び「20年間分の施設運営費」で提案上限額は676億5955万5000円(税抜)、DBO方式(Design【設計】、Build【建設】、Operate【管理運営】)で一括して民間事業者に委ね、令和12年4月の稼働開始を目指す。

だが、少子高齢化・人口減少が加速する中で、676億円が将来市民の負担増とならないか議論が尽くされているとは言い難い。
域内の住民に対し、将来に渡る費用負担の情報が公開されておらず、批判を浴びる前に慌てて公募をかけた感が否めない。

ごみ焼却施設と言えば、最近も近隣の施設建設の情報公開の問題や裏金疑惑が報じられており、一般的に「政治屋と事業者が手を組めば利権を手にするのは簡単」と言われている。
そして、この新清掃工場にも早い段階から事業者と政治屋が手を組んでいるという噂が既に流れている。

主役はプラントメーカーN社と2人の市議会議員だ。
そのスキームは、
① N社が行政に影響力を行使できる市議と組む。
② 市議が発注側(組合)に圧力を掛け、業者選考でN社に有利な仕様書を作らせる。
③ 市議が清掃工場の予定地の町議らと地元対策を行う。
④ 市議が清掃工場のリサイクル施設の運営法人を設立し、N社JV(共同企業体)に参加するか、N社子会社の下請けとして入る。
⑤ プラント建設に市議が株式を保有する建設会社がN社JVに参加する。
⑥ 業者選考でN社JVが選ばれる。
⑦ 市議らが設立した法人が、リサイクル施設の実質的な運営を開始する。
まさに Win-Win-Winという素晴らしいプランだ。



今どきそんな馬鹿げた話はあるまいと思っていたが、過去にそっくりの事例があることが分かった。
九州の某自治体に、4市5町から構成される組合が運営する清掃工場がある。
平成24年に行われた清掃工場のプラント建設は公募型プロポーザル方式で、予定価格140.7億円(税込)に対し1者のみが参加、139.1億円(落札率98.9%)で落札した。
落札したのは今回噂になっているN社だ。

平成27年、同清掃工場の竣工に合わせ運営業務の業者選考がプロポーザル方式で行われ、2者が参加、N社の子会社と地元の企業のJVが落札。
関係者の話では、プラント建設と運営業務はセットで、プラントメーカーの子会社が運営を行うのが通例で出来レースだという。

問題は、JVの地元企業「一般社団法人S組合」だ。
設立は入札公告の約1年前の平成26年4月、実績はなし。
その上、リサイクル施設運営は営利事業そのものなのに、株式会社でなく一般社団法人というところから怪しい。

そして、S組合と同住所に株式会社H社があり、会社の設立目的には、「一般廃棄物及び産業廃棄物の収集、運搬、保管、処理、及び再生業。ごみ処理施設・粗大ごみ処理施設の運転・維持管理業務」と書かれている。
代表者はS組合の代表者と同一人物だが、なぜ直接H社がリサイクル施設運営をしないのか。
一般社団法人は脱税などの隠れ蓑として利用されることがあるが、これも同様のケースと見られている。



実は、そのH社の役員にK氏という人物がいる。
ゴミ運搬業のK社の代表を務め、以前から黒い噂の尽きない元・市議会議員だ。
直接H社が運営しない理由は、このK氏という元市議会議員が関わっていることを隠すためと地元で言われている。
事実上のリサイクル施設運営権を手中に収めた後は市議選には出馬せず引退、清掃工場建設で一番潤っているという。

読者の皆様は、元・市議会議員と聞いてピンと来たのではなかろうか。
2つの構図を見比べると、様々な共通項があることが分かる。
N社がプラント建設を進める際、行政に有利な仕様書を書かせ、地元をとりまとめる市議と組むのは常套手段らしい。
日本を代表する企業だが、一者入札で税金が無駄に使われたり、一部の政治屋が潤ったりする話なら看過できない。
経営陣におかれては、コンプライアンス上問題ないか、よくチェックをしてから前に進めて頂きたい。

また、組合及び構成する市町の首長・地方議員におかれては、終わってみたら筋書き通りだったとならないよう、しっかり監視してもらいたい。