取引は実体なく架空 福岡地裁が認定 中央魚市場の債権めぐり [2010年6月14日13:15更新]

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福岡中央魚市場などが入る市場会館(福岡市長浜)長浜鮮魚市場の冷凍マグロ架空取引疑惑に絡み、仲卸業者「喜平商店」(中央区長浜)の破産手続きに関連して、福岡地裁が一連の取引を「実態のない架空取引だった」と認定。同商店に対する「福岡中央魚市場」(同、橋本清実社長、写真)の債権は無効と決定していたことが分かった。

疑惑について裁判所の判断が下されたのは初めて。

これを受け、喜平商店側は同魚市場に対し不当利得の返還を請求、「岩永鮮魚仲卸」(同)側も近く同様の訴訟を起こす方針。
(6月号で詳報予定)



関係者の証言を総合すると、一連の架空取引が始まったのは07年5月ごろ。喜平商店社員(当時)のX氏らが主導し、喜平商店が中央魚市場から冷凍マグロを仕入れ、それをA社などに販売する形で取引を始めた(下図参照)。 

そのほとんどが、中央魚市場・仲卸業者・鮮魚卸業者の間で同じ商品をぐるぐる循環させる、あるいは商品がないのに帳簿上、取引があったように見せかけただけの架空取引だったという。09年3月、ながよしから仲卸業者2社への支払いがストップし取引は破綻した。

喜平商店は中央魚市場に対して代金約1億1千万円が支払えなくなり、福岡地裁に自己破産を申請。同魚市場は未払い金を破産債権(破産管財人が回収した現金によって債権者に配当を行う時の対象となる債権)として届け出たが破産管財人はこれを認めず、魚市場側は09年10月、破産債権を査定するよう同地裁に申し立てた。

 

喜平商店の破産管財人は

①取引開始当初、X氏は別の鮮魚卸業者を介在させ、一部で架空取引を行っていた。これを中止した後、中央魚市場幹部と担当者の2人が「もう一度やってほしい」とX氏に持ち掛け、ながよしなどとの取引があらためて始まった。以降の取引はすべて架空取引だった

X氏が魚市場の担当者に「口止め料やけんね」として4輪バギーを贈った

などの理由から「中央魚市場の2人は不正な取引であることを熟知していた上、率先して参加した。債権は不正な取引によって生じたもので無効だ」と主張。 

一方、中央魚市場は「取引の実体はあった。適正な取引だった」などと反論していた。

 

今年1月20日、福岡地裁は「取引は実体のない架空取引であり、破産債権は存在しない」として債権を0円と決定、管財人の主張をほぼ全面的に認めた。 

これを不服とする中央魚市場側は同2月、査定の決定を取り消すことなどを求めて破産管財人を提訴。逆に管財人側は同4月、「不正な取引で得た利益は不当利得に当たる」として、支払った代金の一部200万円を支払うよう反訴した。

岩永鮮魚仲卸も近く同魚市場に対し、喜平商店と同様、不当利得返還請求を起こす。