疑われない市政の最低条件

誰が市長でも公開すべき10項目

田川市政が再び疑念や印象論に覆われないためには、候補者個人の人柄や自制に期待するだけでは足りない。次の市長には、少なくとも以下の情報を制度として公開することを求めたい。



重要なのは、候補者が「私は誠実だ」「私は信用できる」と語ることではない。市民が資料で確認できる仕組みを作ることである。

村上氏には、第三者委員会の認定を踏まえた再発防止制度が問われる。佐々木氏には、県議辞職の理由と公に否定する事項を整理し、政策選挙を妨げる疑念を早期に区分する説明が求められる。二場氏には、前回選挙で生じた疑念を公開制度へ変えることが求められる。浦野氏には、発信の多さだけでなく行政情報の正確性と検証可能性が問われる。今永氏には、まず比較できる政策資料の公開が必要となる。

田川市長選を政策選挙に戻す方法は、疑念を無視することではない。候補者が事実関係を早期に説明し、その後は数字と政策で競うことである。本紙は全陣営に同じ共通質問と、公開政策・公開報道に基づく個別質問を送り、回答を公平に掲載する。



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看板政策を数字で検証する

100億円、学校再編、119億円庁舎、財政再建に実現の道筋はあるか

選挙では、短い言葉ほど伝わりやすい。「100億円」「学校を再検証」「庁舎を見直す」「実績を継続する」といった主張は市民の関心を集める。しかし、市長の仕事は言葉を掲げることではなく、予算、条例、人員、議会、国県、事業者を動かし、結果を出すことである。

 

佐々木氏の「ふるさと納税100億円」

100億円が不可能だと決めつけるべきではない。全国には短期間で寄附額を大きく伸ばした自治体もある。ただし、田川市の令和6年度実績は7.31億円、令和8年度見込みは15億円であり、100億円を掲げる側には、規模に応じた具体的な事業計画が必要になる。

1. 達成年度と年度別の寄附目標
2. 主力返礼品と年間供給数量
3. 参加事業者数と新規開拓の方法
4. 広告費、ポータルサイト費、写真・ページ制作費
5. 物流、在庫、問い合わせ、品質管理の実施主体
6. 募集経費率と市に残る純財源
7. 特定返礼品や制度変更への依存リスク
8. 未達時に計画を見直す時点と基準

100億円という目標を評価するためには、「何を売るか」だけでなく「誰が、何件を、いくらの経費で処理し、市にいくら残すか」まで示されなければならない。

 

浦野氏の「中学校2校体制の再検証」

現在の再編方針は、21回の審議、市民アンケート、住民説明会を経た最終答申に基づく。答申では、生徒数減少と小規模校化による教育活動上の制約を改善することも目的とされた。

したがって、再検証で問われるのは「声を聞くか」ではなく、過去の答申のどの前提が変わったのか、現在の2校でどの問題が生じているのか、巻き戻す場合の施設費、教職員配置、通学、部活動への影響はいくらか、小中一貫校に必要な人材と改修・建設費はいくらか、新たな結論まで子どもの環境をどう安定させるかである。

教育の切り取りワードだけでなく、子どもを再度の制度変更にさらさない工程と根拠を示せるかが問われる。

 

二場氏の「新庁舎再点検」と財政ロードマップ

新庁舎の概算事業費は約119.3億円で、自己資金約41.1億円、地方債約78.2億円を見込む。周辺環境整備費は含まれず、現時点の概算は物価や計画精査で変動する可能性がある。

二場氏が再点検を掲げるなら、総事業費の上限、維持する防災・市民サービス機能、削減・変更する機能、遅延費用、市民参加の方法、最終判断の期限を明らかにする必要がある。

財政再建についても、経常収支比率、実質単年度収支、基金、地方債残高、ふるさと納税の純財源など、初年度、2年目、任期末の到達点を示すべきである。総合政策であるほど「最初に何をするか」が曖昧になりやすい。優先順位と数値目標が政策の完成度を左右する。

 

村上市政の「実績」を結果で検証する

村上氏が在任中の実績や政策継続を訴えるのであれば、実施事業の数ではなく、結果を示す必要がある。人口の社会増減、自主財源、教育指標、企業誘致による雇用、新庁舎計画の進捗と市民理解など、就任時と辞職時を同じ指標で比較するべきである。

「圧力に屈せず実行した」という政治姿勢も、何を実行し、どの成果が生じ、どの副作用や未達があったのかを資料で示して初めて評価できる。

 

今永氏にも同じ物差しを

今永氏については、政策資料が示された段階で同じ数字と工程の物差しを当てる。公開資料が少ないことを理由に否定的評価をするべきではないが、投票日までに比較材料を出すことは候補者の責任である。

 



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出直し選で問われる「説明責任」

市長の信用を、謝罪や印象ではなく、事実経過と制度で確認する

今回の田川市長選は、市長本人の行為を第三者委員会がセクハラと認定し、辞職に至ったことから始まった。そのため、品格や説明責任を政策と切り離すことはできない。

田川市の6月補正予算では、市長選と市議補選の選挙費として3,955万9千円、予備費を含む補正総額として5,244万2千円が計上された。市議補選を含む合算額である点には注意が必要だが、通常予定されていなかった時期に市長選を実施するため、新たな公費が必要となったことは事実である。

 

「ガラス張り」は村上氏自身に適用されるか

村上氏には、第三者委員会の報告を前提として、一連の経緯を時系列で説明する必要がある。問題となった公務や出張はどのようなものだったのか。市長と職員の上下関係をどう認識していたのか。委員会のどの認定を受け入れ、どの部分に異論があるのか。なぜ辞職し、何が変わったため再び立候補するのか。

SNS動画や会見で謝罪したことと、市民が再発可能性を判断できるだけの説明をしたことは同じではない。「反省している」「審判を仰ぐ」という言葉だけでなく、市長本人を監視する第三者制度、職員の外部相談窓口、公務出張と職員同行の規則など、再発防止策を具体化する必要がある。

再出馬が報じられるたびに、過去の報道が再び参照されることは避けにくい。市長は企業誘致、大学連携、ふるさと納税、国県との交渉で田川を代表する。自身の信用が田川市の対外信用に及ぼす影響と、追加公費を伴う出直し選の政治的責任についても、説明が求められる。

 

同じ基準は佐々木氏にも向けられる

佐々木氏は2025年、一般女性との過去の不適切な関係を理由に県議を辞職した。関連する名誉毀損訴訟は請求放棄で終結したと報じられている。また、辞職に伴う県議補選では、田川市の補正予算に2,589万円の選挙費が計上され、同額の県委託金が財源とされた。市の一般財源負担ではないが、公費を用いる補欠選挙が必要になった事実は残る。

ネット上では、これとは別の主張も流通している。選挙前に出る情報には政治的意図やネガティブキャンペーンが含まれる可能性があり、本紙が裏付けられない個別内容を事実として再掲するべきではない。

しかし、「ネットの話には答えない」で済ませれば、疑念が選挙を覆い、看板政策が見えなくなる。政策選挙に戻すためにも、佐々木氏自身が、辞職理由として認めている事実、否定している主張、訴訟を請求放棄した理由、今後の再発防止を整理して説明することが望ましい。これは未確認情報を追認するためではなく、候補者本人が事実と虚偽を早期に区分するためである。

 

二場氏にも前回選挙への説明が必要

二場氏も説明責任を免れない。2023年の市長選では、周辺自治体との関係や情報公開のあり方が選挙の背景として報じられた。返り咲きを目指すなら、「違法行為が認定されたわけではない」「噂だった」と述べるだけでは、市民が以前との違いを確認できない。

他自治体や企業との面会記録を公開するのか。連携協定の費用、成果、終了理由を公表するのか。契約や事業者選定の過程を見せるのか。市長交際費、出張、重要会議資料を原則公開するのか。疑われた後の釈明ではなく、疑われにくい制度を具体的に提示できるかが問われる。

 

全候補に必要な説明責任

説明責任とは、問題が起きた際に謝ることだけではない。何が起きたのか、なぜ起きたのか、誰が確認したのか、再発をどう防ぐのか、その仕組みを市民がどう検証できるのか。この五つを示すことである。浦野氏と今永氏にも、市長自身を対象に含む倫理・ハラスメント防止制度と、行政情報の公開範囲をあらかじめ示すことが求められる。

 



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田川市長選、5候補の政策は何に答えるのか

人物の印象ではなく、財源・工程・実行体制を同じ物差しで見る

前市長の辞職に伴う田川市長選は、7月5日告示、12日投開票で行われる。6月22日の「立候補予定者と対話する会」には、浦野仁氏、佐々木允氏、二場公人氏、村上卓哉氏、今永信之氏の5人が立候補予定者として掲載された。正式な候補者は告示日に確定するが、市民が比較できる政策材料を今の段階から整理する必要がある。

本稿で用いる物差しは四つである。第一に、目標が具体的か。第二に、財源が示されているか。第三に、実行までの工程と行政体制があるか。第四に、市民が後から成果を検証できるかである。

田川市の令和6年度ふるさと納税実績は36,596件、7億3,110万7,540円。令和8年度予算では寄附見込額15億円、必要経費割合57.7%とされる。新庁舎整備の概算事業費は約119.3億円で、周辺環境整備費は含まれない。令和7年度全国学力調査では、中学校数学の標準化得点は68.3だった。どの政策も、こうした現在地から離れて評価することはできない。

 

浦野仁氏

教育への熱意を、行政の工程に変えられるか

浦野氏は「田川、新時代」を掲げ、教育、子育て、経済、福祉の4分野を柱としている。中学校2校体制の再検証、不登校対策、行政・学校・民間・福祉の連携、小中一貫校の検討など、教育を前面に出す姿勢は明確である。

教育を主要争点にすることには合理性がある。田川市では中学校数学の全国平均との差が大きく、不登校、部活動、通学、教員負担も含めて改善が必要だからだ。

一方、中学校再編は白紙の状態から始まったものではない。市民アンケート、住民説明会、21回の審議会を経て最終答申がまとめられた。再検証を掲げる以上、過去の議論のどの前提が変化したのか、何を維持し、何を変え、費用と期間をどの程度見込むのかを示す必要がある。

「声を聞く」「一貫教育を検討する」という言葉だけでなく、初年度に着手する施策、教育委員会との役割分担、再検証中も子どもの教育環境を安定させる手順まで語れるかが問われる。

 

佐々木允氏

100億円という目標に、事業計画を添えられるか

佐々木氏の代表的な政策は「ふるさと納税100億円」である。福祉、人権、教育を守るには外から財源を獲得する必要があるとして、農産物、企業の技術、炭鉱の歴史、体験型返礼品などをブランド化する考えを示している。財源論を正面から掲げた点は分かりやすい。

ただし、100億円は令和6年度実績の約13.7倍、令和8年度見込み15億円の約6.7倍である。寄附額がそのまま市民サービスに使えるわけではなく、返礼品、送料、広告、ポータルサイト、委託費などの経費が生じる。

政策として評価するには、達成年度、年度別目標、主力返礼品、供給量、参加事業者数、広告費、物流・在庫・問い合わせ対応、経費率、市に残る純財源を示す必要がある。

目標が大きいこと自体は問題ではない。だが、数字に応じた説明密度がなければ、市民に希望を与える目標である一方、選挙向けの耳触りのよい言葉にも見える。問われるのは金額の大きさではなく、実現までの設計図である。

 

二場公人氏

総合政策を、検証可能な数値にできるか

二場氏は、市長経験を背景に、財政、新庁舎、教育、DX、外部連携を横断する政策を打ち出している。個別の給付や事業を並べるより、市政全体の優先順位を組み直そうとする点が特徴である。

過去には、田川市がソフトバンクとDX・ICT利活用に関する連携協定を結び、青山学院大学との包括連携も進めた。外部の企業や大学を市政に引き込んだ経験は、行政運営上の一つの材料となる。

ただし、協定を結んだことと、市民生活に成果が返ったことは同じではない。何が実現し、何が途中で止まり、今後どの指標で成果を測るのかを説明する必要がある。
財政再建を掲げるなら、初年度、2年目、任期末の数値目標が必要になる。新庁舎を再点検するなら、継続・縮小・変更の判断基準と期限を示さなければならない。政策の幅広さを、優先順位と検証可能な数字に変えられるかが焦点である。

 

村上卓哉氏

在任中の実績と、辞職に至った責任を切り離さず語れるか

村上氏は前回選挙で「ガラス張りの市政」や主体的な市政運営を掲げ、現職だった二場氏を破った。今回も、在任中に取り組んだ政策や実績を市民に判断してもらうとして、出直し選への立候補を表明している。

しかし、今回は通常の継続選挙ではない。市の第三者委員会が女性職員に対する複数の行為をセクハラと認定し、村上氏が辞職したことに伴う選挙である。

在任中に実施した政策を訴えることは当然だが、実績の説明と辞職の説明を別々に扱うことはできない。「ガラス張り」を掲げるなら、何が起き、どの認定を受け入れ、なぜ辞職し、短期間で再出馬するのかを、自身の問題にも適用して説明する必要がある。

さらに、再発防止を本人の自制に委ねるのか、独立した相談窓口や第三者監視を制度化するのか。失った信用を、どの仕組みで回復するかまで示せるかが問われる。

 

今永信之氏

政策資料の提示が、まず必要になる

今永氏は5人目の立候補予定者として対話会に掲載されている。一方、6月21日時点で本紙が確認できた範囲では、他候補と同じ粒度で比較できる詳細な政策資料や財源計画は限られている。

新人が既存候補とは異なる視点を示すことには意味がある。しかし、市長選では、新庁舎、財政、教育、ふるさと納税、福祉、透明性について、立場と優先順位を示す必要がある。

公開資料が少ないことだけを理由に否定的評価をするべきではないが、投票日までの時間が限られる中、政策を示さないこともまた有権者への情報不足となる。

今永氏については、政策資料が公表された段階で、他の4氏と同じ物差しを当てて検証したい。まず問われるのは、市民が比較できる材料を、いつまでに、どの形式で示すかである。

 

5候補の訴えは異なる。しかし、市民が見るべき基準は共通である。目標、財源、工程、行政体制、検証方法を示せるか。今回の市長選を政策選挙にするには、候補者の強い言葉より、実行できる設計図を比較する必要がある。



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田川市長選、4候補の政策と説明責任をどう読むか

市民の血税を使う選挙だからこそ、印象ではなく「品格」と「設計図」で選びたい

前市長の辞職に伴う田川市長選は、7月5日告示、7月12日投開票で行われる。今回の選挙は、任期満了による通常選挙ではない。女性職員へのセクハラ認定を受けて村上卓哉前市長が辞職したことに端を発する、いわば出直し選挙である。出馬を表明しているのは、村上前市長、二場公人元市長、佐々木允元県議、浦野仁氏の4人。短期決戦の中で、市民は次の市政の担い手を選ばなければならない。

しかも、この選挙には市民の税金が使われる。田川市の令和8年度6月補正予算案では、市長選及び市議補選の執行に係る経費総額として5,244万2千円が示され、そのうち3,955万9千円を補正予算案に計上している。約4,000万円規模、予備費分を含めれば5,000万円を超える公費を使い、市民はもう一度、市長を選び直すことになる。

だからこそ、今回の市長選を、噂、感情、しがらみ、SNS上の印象、足の引っ張り合いで終わらせてはならない。問われるべきは、誰が一番強い言葉を使うかではない。誰が田川の信用を回復し、人口減少、財政、教育、福祉、地域経済、新庁舎整備を現実に動かせるのかである。

村上前市長は、自身の辞職に伴う出直し選に再び立つ構えを示している。報道によれば、市の第三者委員会は、秘書だった女性職員に対する複数の行為をセクハラと認定した。村上氏は「市政の混乱と停滞を避けたい」として5月31日付で辞職したが、一定のけじめを付けたとして、改めて市民に信を問う考えだという。

村上氏に問われるのは、政策以前に信頼回復である。前回掲げた「ガラス張りの市政」は、今回は自らに向けられる言葉でもある。ハラスメント防止、職員との関係性、意思決定の透明性、市政を混乱させた責任の総括を、反省の言葉だけでなく制度として示せるのか。市民が「もう一度任せてもよい」と思えるだけの説明責任を果たせるかが焦点となる。

二場元市長は、前回選挙で批判や疑惑への対応に追われ、政策や実績を十分に訴えきれなかった面がある。今回、二場氏が市民に求めるのは、単なる返り咲きではない。「もう一度信じてほしい」「田川を託してほしい」という信任を得るには、過去の市政運営への説明責任を避けず、経験を未来の政策に変える提案が必要になる。

二場氏の評価軸は、実際に外部連携を動かしてきた経験を、今の田川にどう再設計するかである。田川市は二場市政下でソフトバンクとDX・ICT利活用に関する連携協定を結び、5G、IoT、AIを活用した市民サービス向上や庁内外業務のDX推進を打ち出した。また、テックマヒンドラとのDX推進パートナー連携では、デジタル基盤整備、人材育成、デジタル実装などが掲げられた。これらを過去の実績で終わらせず、庁舎、教育、福祉、経済をつなぐ「田川再起動」の工程表として示せるかが問われる。

佐々木元県議は、「対立から解決へ」を掲げ、田川市を「稼ぐまち」に変える必要性を訴えている。中心政策として目を引くのが、ふるさと納税100億円である。佐々木氏は、人口減少による自主財源の減少、扶助費や医療費、公共施設維持管理費の増加を踏まえ、福祉・人権・教育を守るためには、田川市自らが稼ぐ力を持つ必要があると説明している。財源論を正面から語る姿勢そのものは、市民が注目すべき論点である。

一方で、佐々木氏には政策以前の説明責任も残る。報道では、佐々木氏は既婚の身でありながら別の一般女性との不適切な関係があったことを理由に県議を辞職したとされる。本人はパワハラや不倫は否定しているが、不倫などの噂を巡る名誉毀損訴訟については訴えを取り下げたとも報じられている。さらに、後援会主催のゴルフコンペ賞品を巡り、公職選挙法違反などの疑いで刑事告発されたとの報道もあるが、本人は法令違反にはあたらないとの認識を示している。今回の市長選は、まさにトップの品格と公私の線引きに端を発した出直し選である。佐々木氏がこれらの経緯をどう説明し、市民にどう納得を求めるのかは、避けて通れない。

また、100億円という数字は、市民に希望を与える一方で、根拠がなければ市民の不安を置き去りにする。田川市の令和6年度ふるさと納税実績は36,596件、7億3,110万7,540円である。100億円はその約13.7倍にあたる規模であり、単に「目指す」と言うだけでは足りない。主力返礼品は何か、何年で到達するのか、参加事業者はどれだけ確保できるのか、物流・在庫・広告・問い合わせ対応を誰が担うのか、経費を除いて田川市にいくら残るのか。政策として問われるのは、数字の大きさではなく、実現までの設計図である。

浦野氏は、30歳の新人として「田川、新時代」を掲げる。公式サイトでは、教育、子育て、経済、福祉の4つの改革を柱に、しがらみのない政治、市民最優先の政治を訴えている。学習塾経営の経験や海外での経営学習を市政に注ぎ込むとしており、若さ、発信力、教育現場での経験は、閉塞感のある田川に新しい空気を入れる要素である。

一方で、市長職は思いだけでは務まらない。教育改革一つを取っても、学校再編、通学、部活動、不登校、教員負担、財源、議会調整が絡む。子育て支援、福祉、交通、企業誘致も同じである。民間経営や教育現場での経験を、行政の制度、予算、組織運営にどう翻訳するのか。浦野氏には、若さを実行力に変えるための手順を示すことが求められる。

4候補とも、それぞれに訴えるものはある。村上氏は、信頼を失った市政をどう制度として立て直すのか。二場氏は、過去の説明責任を果たしたうえで、経験と実績をどう再起動の政策に変えるのか。佐々木氏は、品格を問われる経緯をどう説明し、100億円という大きな目標をどう現実の財源計画に落とすのか。浦野氏は、若さと教育への熱を、どう行政の実行力に変えるのか。

市民の血税を使って行われる選挙だからこそ、田川市民には、印象ではなく政策で選ぶ責任がある。不倫、セクハラ、疑惑、対立、印象操作。そうした言葉で田川の名前が語られる時間は、もう終わりにしなければならない。

問われているのは、田川の品格である。
そして、田川の将来である。

誰なら信じられる説明があるのか。
誰なら託せる政策があるのか。
誰なら、その政策を本当に動かせるのか。

今回の田川市長選は、過去への怒りをぶつける選挙ではない。田川の信用を取り戻し、未来を選び直す選挙である。



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田川市長選挙

再び「印象選挙」か、それとも政策で選ぶ本質選挙か

前市長の辞職に伴う田川市長選は、7月5日告示、7月12日投開票で行われる。田川市選挙管理委員会が日程を公表しており、突然の市長交代を受けた選挙となる。今回の選挙で問われるのは、単に「誰が次の市長になるか」ではない。ここ数年、田川市政を覆ってきた疑惑、批判、告発、印象操作、足の引っ張り合いの政治から、市民が本当に抜け出せるのかという点である。

村上卓哉前市長は、女性職員へのセクハラ行為が第三者委員会に認定されたことを受け、5月31日付で辞職した。前市長は前回選挙で「田川市を取り戻す」と訴え、二場公人前市長の市政運営への批判を追い風に当選した。しかし、その市政が任期途中で自らの問題により幕を閉じたことは、市民に重い失望を残した。政治家の私生活がすべて公的問題になるわけではないが、職員との関係、権力関係、市政混乱につながった問題であれば、トップとしての品格と説明責任は避けられない。

田川市の課題は待ってくれない。令和8年6月1日現在の住民基本台帳人口は4万3630人。人口減少、少子高齢化、地域経済の停滞、教育、公共施設の老朽化は、誰が市長になっても直面する現実である。つまり、今回の選挙は「雰囲気のよい候補」「批判がうまい候補」を選ぶ選挙ではなく、停滞した市政を実際に動かせる候補を選ぶ選挙でなければならない。

その中で、最も注目されるのが、6月8日に無所属で立候補する意向を表明した二場公人元市長である。前回選挙では、二場氏は疑惑や批判への対応に追われ、政策や実績を十分に訴えきれなかった面がある。もちろん、過去の市政運営について説明責任がなくなったわけではない。情報公開、周辺自治体との関係、行政判断の透明性は、今回も市民が確認すべき論点である。

一方で、前回の選挙が「印象」に傾きすぎたことも、今となっては冷静に検証されるべきだろう。批判や噂と、確認された事実は分けて考える必要がある。選挙に勝つための言葉は強く響く。しかし、市政を前に進めるには、国、県、民間企業、職員組織、市民を動かす実務力が必要になる。その点で、二場氏が市長時代に進めたソフトバンクとのDX・ICT連携、テックマヒンドラ・コミュニケーションズ・ジャパンとのDX推進パートナー連携などは、田川が外部の力を取り込み、次の産業や行政改革に向かおうとした実績として再評価の対象になり得る。

対抗軸として名前が挙がる佐々木まこと元県議は、6月2日に立候補の意向を表明した。県議経験があり、「対立から解決へ」と訴える姿勢は一定の期待を集める可能性がある。ただし、佐々木氏は過去に一般女性との不適切な関係を理由に県議を辞職している。本人は法的問題はないと説明し、パワハラや不倫疑惑については否定しているが、村上前市長の問題で市政が混乱した直後だけに、有権者は公私の線引きや説明責任について、より厳しく見ることになるだろう。

また、新人の浦野仁氏は4月15日に立候補の意向を表明しており、「田川、新時代」を掲げる。若さや発信力、学習塾経営の経験は、閉塞感のある田川に新しい空気をもたらす要素ではある。ただ、市長職は発信力だけでは務まらない。財政、議会、人事、公共事業、防災、福祉、教育、企業誘致を同時に動かす総合行政の責任者である。若さを評価するにしても、具体的な政策、実行体制、財源の裏付けを見極める必要がある。

今回の市長選で避けて通れないのが、新庁舎整備である。田川市の新庁舎整備基本構想素案では、概算事業費は約119.3億円。財源は自己資金約41.1億円、地方債約78.2億円を見込むとされている。現庁舎の老朽化や耐震性の課題は事実であり、建て替えそのものを単純に否定する話ではない。しかし、119億円規模の事業を「必要だから進める」だけで済ませてよいのか。防災拠点、行政DX、市民サービス、周辺地域の再生、民間投資誘導まで含めたロードマップがなければ、一時的な建設需要だけが残り、将来世代への負担となりかねない。

市民が今回見るべきなのは、誰が誰を批判したかではない。誰が数字を見ているか。誰が財源を語れるか。誰が庁舎を単なる箱モノではなく、まちの再起動拠点として描けるか。誰が教育、人口減少、地域経済を一体で語れるかである。

前回の選挙では、批判の勢いが結果を動かした。だが、批判によって市長を代えることと、まちを良くすることは同じではなかった。今回、市民が再び印象や感情に流されるなら、田川市政はまた同じ混乱を繰り返すことになる。

二場氏にとって今回の選挙は、単なる返り咲きの機会ではない。前回十分に伝えきれなかった実績と政策を、冷静に、具体的に、市民の前に示せるかが問われる選挙である。同時に、有権者にとっても、噂やしがらみではなく、政策と実行力で市長を選び直す機会である。

田川は、もう一度問われている。
印象で選ぶのか。批判で選ぶのか。
それとも、停滞を動かす政策で選ぶのか。



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