伝統建築をめぐる冒険~古民家探訪シリーズ~八女福島①

八女市の福島町では今、全国でも稀有なまちづくりに取り組んでいる。
 
古い町並みを残す市町村が、国から伝統的建造物郡保存地区の認定を受け、それらの建築物を目玉に観光化を図ることはよくみられる手法だ。
むろん八女福島においても観光事業を図ろうとしているが、同地区の取り組みはそれだけにとどまらない。

町並みの整備事業や修景計画に加え『伝統的建造物を活かした、にぎわいのあるまちづくり』と称して、行政のみならず大学や地域住民、つまり地域産業の立役者である伝統工芸職人から茶屋などの地域住民まで、全員が参加しているといって過言ではなく、”みんなでつくるまちづくり”、伝統的建造物を活用したまちづくりプロジェクトの良例として全国が注目している。


そのプロジェクトの中で中心メンバーとして活動しているのが、中島宏典さんだ。
八女市の地域づくり・文化振興課に職員として在籍する傍ら、「NPO八女空き家再生スイッチ」の事務局長であり、京都造形芸術大学の非常勤講師でもある。つまり官・民・学の全方位からプロジェクトを推進する、まさにこのプロジェクトになくてはならない人物である。
初めてお会いしたのはマリンメッセで開催された「賃貸住宅フェア2015 in 福岡」のセミナー会場でのこと。「歴史的建造物・古民家のリノベ最前線」をテーマに、福岡市が指定された国家戦略特区の一つである「古民家特区」の概要や、八女福島での事例についての講話で、NPOが主体となった町家再生DIYなど、大変興味深い内容だったため、セミナー終了後にすぐさま名刺交換し、後日のアポイントメントをお願いしたのだ。
そして先日、中島さんに八女福島の主要な伝統的建造物を案内していただきながら、八女福島のプロジェクトについてさまざまな角度からお話を伺った。詳細や、この日巡った数々の伝統的建造物、地元で活動されている方たちのレポートはシリーズとして追々発表していきたい。      国からの伝統的建造物郡保存地区認定を活用した、この八女福島の取り組みは、人口減少やそれに伴う空き家対策、特に倒壊の恐れのある空き家対策などの問題を抱える市町村にとっては一つの指針となるだろう。
また、そうした市町村がもつポテンシャルは、視点や力点を変えることで、ときに予想を超える高さにまで弾ける可能性もある。
八女福島のまちづくりプロジェクトの展開に今後も注目していきたい。


【古民家探訪シリーズ~エスアールエスタッケイ代表 住吉 英智】

㈱エスアールエス宅継 (タッケイ)
本社:福岡市中央区舞鶴2-7-1-313
TEL:092-518-8870
FAX:092-510-0932 続きを読む

伝統建築をめぐる冒険~古民家探訪シリーズ~横大路家 ①

外側と内側の境界があいまいな日本の農家型古民家。
なかでも九州最古級の古民家に暮らすとは一体どういうことなのか。
糟屋郡新宮町にある、国の重要文化財「横大路家住宅」。
その現45代当主に伺った大変貴重なお話の数々。
生活してみなければ分からない、そのリアルな一面をご紹介したい。


見学の方からはよく、夏は涼しくて暮らしやすそうですね、と言われます。
確かに涼しいのですが、問題は虫。
就寝中に“ボトッ”という音がすれば、それはムカデが付近に落下した合図。ゴキブリを捕食するため家の中に入ってくるだけに、ムカデの大きさは少なくとも15センチ以上。
その音で目覚めなければ、高い確率でムカデに咬まれてしまう。死ぬことはないけれど、ひじょうに痛い。
音や気配に対して常に敏感でなければいけませんね、とのコトだ。
なんとも大変な話である。

そこで横大路家では虫除け、防菌、抗菌また建材の耐久性向上のために、釜戸(カマド)の火が絶やされることはない。
だが、それでも煙をかいくぐってやってくる虫たちもいるので、虫との共生は覚悟しているとのコトだ。

お話をされている最中も炊き続けられているカマドの火。
これはその昔の平安初期(西暦806年)、唐から日本に天台宗をもたらした、伝教大師・最澄から授けられたという「法理の火」を、この家では代々絶やすことなく守り続けられていたそうで(※現在は太宰府の妙香庵に移設)、その当時の様子が偲ばれた。

お話を伺いながら屋外に出て仰ぎ見た、茅葺屋根全体に充満した煙が青い空にもうもうと立ち上る姿はなかなかに圧巻であった。

【古民家探訪シリーズ~エスアールエスタッケイ代表 住吉 英智】

㈱エスアールエス宅継 (タッケイ)
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とんかつ廣(ひろ)の心意気~タッケイ・住吉の美味しいもの巡り

こと食に関しては、誰しもが各々の一家言をお持ちだと思う。かくいう私にも貧乏舌なりの意見はある。
今日は西長住の”とんかつ廣”について、貧乏舌の語部(かたりべ)よりご報告をしたい。

前置き1.トンカツとは豚肉と小麦粉と卵とパン粉と食用油の集合体である。とかく料理名というものは全て総称だ。ひとつの料理に複数の食材や調味料が数種類使われ、それらが交わり、溶け合い、それぞれの材料単体の姿からはかけ離れた美しい集合体へと変貌もする。あたかも一軒の家が材木やセメント、ガラス、化学繊維などの集合体であるように。またオーケストラのソレが楽器や演奏者であるように。

そしてお店で料理をいただくとは、ただ食材を口に運ぶのではない。店のしつらえから始まり、接客対応や料理の器、盛り付けにいたるまでの全てを、五感を通していただくのである。もちろん、そのようなことは殆ど無意識下で感じ取るのであるが、それゆえ全体的な印象として店の評価・格につながるのである。

前置き2は短めに。リーズナブルであるとはいかに?辞書をひもとけば「適正価格」とあるが、より実際的に云うなら「得した感」だ。それは提供する側の心意気であり良心といえる。

そんなお店の話である。

では本題。夜9時頃に目上の方と二人で入店。けっこう遅い時間なのに快く対応していただいた。
この日注文したのはメニューの一番上に記載されたロースカツ定食。
暖かいお茶をいただきながら、しばし歓談。もちろん僕らと語らいながら、店主は手際よく調理を進める。
そうするうちに香ばしい香りとともに、膳で定食が運ばれてきた。お好みで塩とソースと辛子、キャベツ用のドレッシングが用意されている。まずは茶をすすり、カツ2切れに塩を振っておもむろに一口、肉厚のカツをサクリとほおばる。「やばい。これマジやばくね?」脳内で俗語の感嘆句がかけめぐる。そう、美味いのだ。
定食の内容は150グラム~160グラムの柔らかなロース肉のトンカツ、円錐状にそびえるふわふわのキャベツ、香の物、箸休めの小鉢、ごはん、汁物の椀のフルセット。

美味しく頬張りながら、なにげなく店内を見渡す。赤御影の7人掛けカウンター、2人掛けと4人掛けのテーブル席など、すべて余裕をもった間隔で配置され、店構えや内装のテイストは和風~和モダンで、とても落ち着いた雰囲気である。
寿司や天ぷらの割烹料理店などと遜色のない作りだ。いわゆる「店の格式」さえ感じさせる。そして料理は味・ボリュームともに満足とくれば、もちろんお値段もそれなり張って当然。ところがこの店には、上・特上などのお肉の区別さえない。大げさに言えば選民的な優越感も、卑屈な劣等感もこの店には存在しないのだ。カジュアルな家族連れも、フォーマルなカップルも、皆等しくこの店の掌(たなごころ)の上で幸福な時間と価値を共有している。

前置き1を思い出していただきたい。一つ一つの材料からなる集合体としての料理、その料理を含む総合的な価値としてのお店の評価を、私なりに紐解いたつもりだ。
それを踏まえて「とんかつ廣」を評するなら、このお店には「格」と「心安さ」が違和感なく同居しており、それはデフレにまみれた今の外食産業にあって、このお店の揺るがぬ覚悟であり、他店との差別化を図れる価値でもあるのだ。

なのに、だ。メニューに書かれたお値段だけがその価値からハミ出している。お客の方向に。
なぜならロースカツ定食が950円(税別)。あくまで私感だが、この内容なら1,500円以上というのが妥当だろう。一番高いものでヒレカツ定食1,100円。これをお店の心意気といわずして何といおう。

ここで前置き2をリピート。リーズナブル=得した感である。そしてそれは提供する側の心意気であり良心だ。
そんなお店”とんかつ廣”の紹介をさせていただいた。

貧乏舌に何がわかると叱られるかもしれないが、是非ご自身で確かめていただきたい。まさに「リーズナブル=得した感」に包まれること請け合いだ。

【タッケイ・住吉の美味しいもの巡り】

㈱エスアールエス宅継 (タッケイ) 
代表:住吉 英智
本社:福岡市中央区舞鶴2-7-1-313
TEL:092-518-8870
FAX:092-510-0932