NEXCOと大島産業(48)■ 信用されない経営幹部

中日本は、調査委員会の最終報告を受けて 7月29日、再発防止策を公表した。

内容は、
1.事業計画の策定と執行のプロセスについて
2.組織体制・人材育成について
3.ガバナンスについて
4.コンプライアンスについて

と 問題点に対する調査委員会の提言に、しっかり応えた格好だが 重要な点が抜け落ちている。

それは、コンプライアンス担当役員が人事を掌握している点だ。
今回、本社、支社、事務所、それぞれの部署で、関係した社員が コンプライアンス違反に対し抵抗を試みているが、2020年7月の人事で一部しゅん工を取り計らった者が異例の大出世をした一方、抵抗していた管理職は左遷されており、社員の意欲を削いでいるという。

中日本には倫理行動規範があり、公益通報窓口(コンプラホットライン)も設置されているにも拘わらず、誰も利用しなかったのはコンプライアンス担当役員を信用していないからにほかならない。

本来ならば、社外取締役にコンプライアンス担当として弁護士を招聘するべきで、少なくとも人事とは切り離すことが必要と言えよう。

中日本の社員の中で、経営幹部に対する不信感は根強いという。
どんなにキレイごとで再発防止策を並べても、人事を切り離さない限り 信頼回復は難しいだろう。

ー 続 く ー


NEXCOと大島産業(47)■ 国会議員の介入

元国交副大臣、自民党の建設族の国会議員が直接の問い合わせをしたとなれば、圧力以外何ものでもない。
現在は農水副大臣を務める 宮内秀樹議員である。

NEXCO中日本と大島産業、民間企業同士のトラブルに国会議員が介入したことが あり得ないことだ。
しかも、NEXCO各社は国交省に対して立場が弱いという。
それを分かった上で、敢えて国交省を通して問い合わせ、中日本の社員を議員会館に呼び出している点に 意図が感じられる。
パワハラの訴えがあった場合、国会議員であれば 弁護士を通じての問い合わせを勧めるべきで、私企業の営業のために 国家公務員を利用したことになる。

また、協議において 「適正利潤」や「設計変更」といった中日本の社員のメモからすると、契約金額の増額につて圧力をかけたことが窺われ、事実であれば問題だろう。

大島がネクスコの耐震補強工事に乗り出したのは、宮内氏が大島の役員に 「耐震補強工事は儲かるから」と勧めたのが始まりとの工事関係者からの証言もある。
その後本件工事を低入札で受注できたが、当初より施工能力に問題があり契約解除もあり得たが、2019年9月のパワハラ騒動に宮内氏が介入したことで、大島は工事を継続、中日本の職員を委縮させ管理が不十分になったことが 鉄筋不足・鉄筋切断等に繋がった。

更に、宮内氏が直接設計変更にも言及してから、大島は工期の延長と工事費増額の要求を強めるようになり、通常では考えられない増額と工期延長に至っている。
これらは、中日本のガバナンスの問題と片づけるわけにはいかないだろう。

第三者委員会の調査報告書では、国会議員の関与も明らかになっていることから、現職の閣僚でもある宮内氏におかれては、一連の関わりについて丁寧な説明が求められている。

ー 続 く ー

 

NEXCOと大島産業(46)■ 責任を押し付けられた支社長

一方のNEXCO中日本、第三者委員会の調査では、要求しても出ない書類や 関係者間で主張に齟齬が見られる点があり、嘘や隠蔽がまかり通り真相は明らかになっていない。

今回の工事では、2020年3月に約2億6000万円分の一部しゅん工が、そして 計5回の契約変更で 372日の工期延長と 約7億2000万円の増額が行われたが、いずれも未提出の書類がある中での承認で、社内規約に違反しており、それを指示した者、認識しながら実行に携わった者は、程度の差はあれ背任の疑いがある。

調査報告書によると 全ての指示、責任が八王子支社長にあるような印象を受ける。
本来事務所をチェックすべき支社が、大島の意のままに動き、最後の契約変更では、支社が本社の工務部門の決定を覆し 大島の意に沿った増額を認めている。
これまで本社の工務部門の決定が 支社に覆されたという前例はなく、内規に反していることが判っている中で、支社長個人が それだけの決定を下せるかというと疑問だ。
当然、
相応の後ろ盾、つまり 上層部の了承があったと考えるのが自然である。

社内調査と第三者委員会の調査で 戦犯確定的となった支社長は、次の人事で本社異動が決まっていたが 6月中に辞職願を出し退職したという。
現在は、東京支社内にある子会社のアドバイザーとして再雇用され、事実上の蟄居状態という噂だが、社内では同情する声も多い様だ。

また、1年前に契約変更のミッションを受けて送り込まれてきた八王子支社の担当部長、担当課長、事務所の所長らは7月5日から始まる会計検査前の 7月1日付の人事異動で、 グループ会社に2年間の出向となった。
会計検査では、何も知らない後任の部課長らが曖昧な答えに終始したという話も漏れ聞こえてきたが、このまま会計検査院も舐められたまま終わりにするとは思えない。

中日本経営陣は今回の件について、自身のわずかな減給と 関係者の降格人事、そして 再発防止策の発表により、全てを終わらせるつもりの様だ。
「嘘や隠蔽がまかり通り、最後は社員を犠牲にする素晴らしい企業」と 皮肉る声が聞こえて来た。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(45)■ 今後の処分と複雑な資金の流れ

まず大島には、建設業の監督官庁である福岡県が法令に基づき何らかの処分を下すと思われるが、提出書類の虚偽記載など常習的に行っていたようだが、せいぜい指名停止数ヵ月程度で、建設業許可の取り消しとまではいかないだろう。
しかし、会社法や税法上の疑義は残る。

今回関わりのある数社についても同様だ。
今回の工事で、施工体系上は一次下請として ㈱ダイコウという会社から 二次下請の業者に支払いが行われる流れになっているが、実際は 大島と同住所の㈲エイチ・ワイ・ディから塚本不動産㈱(塚本總業㈱)、塚本から A社、そして その下の業者に支払われる流れになっていたという。
エイチ・ワイ・ディと塚本は、実際の施工に技術者を派遣していないペーパーだけの関わりだった様だ。

今回、大島、エイチ・ワイ・ディ、塚本不動産の工事経歴書を見比べてみた。
塚本不動産の令和2年3月期の工事経歴では、本件工事をエイチ・ワイ・デから 5億0864万2000円で下請をしたことになっているが、なぜか同時期のエイチ・ワイ・ディの工事経歴に本件工事は記載されていない。

また、令和2年3月末時点で、中日本が 中央自動車道の工事で 大島に支払った金額は、最大でも4億5000万円程度(前渡金+一部しゅん工費)と考えられる。
塚本不動産が、中日本から大島に渡った額を超えて、5億円の売上を立てているのは不自然だ。
更に、下請が実際に契約し 支払いを受けていたのは塚本不動産ではなく、 塚本總業という証言もある。

詳細は闇の中だが、実際のお金の流れを複雑不透明にしているところから、資金洗浄を疑う声も出ている。

― 続く ―

NEXCOと大島産業(44)■ 7億円増額直後の大どんでん返し

契約変更の協議が大詰めとなる9月30日、大島から中日本の事務所の担当課長に、交通保安要員の新単価処理を要望する電話が入り、「下請業者からの見積りで支払うことを支社長と約束している」との発言がある。
しかし、同課長と八王子支社の関係課による打ち合わせで、新単価は認めない旨が確認された。

ところがその直後、八王子支社の担当課長から事務所の副所長に「部長の意向により新単価で見てほしい。支社が責任を持つ。」という電話があり、支社担当部長、構造技術課長、事務所長、副所長の打ち合わせで、支社の指示に従うことになった。

10月12日、設計変更に疑問を感じた 支社の他部門の社員から、支社長に対し疑義がある旨進言がなされたが検討されなかったという。
まともな社員を 上司が抑えこんだということだろう。

その後、交通保安要員を含む全ての単価について大島との間で合意し、10月23日に 13億2910万1664円(+7億2667万7664円)で契約が変更された。
大島としては、16億円には届かなかったが  7億円の増額に成功して、美酒に酔いしれたと思われる。

しかし、想定外の大どんでん返しが起こる。
実は、9月24日に 緑橋の橋台部に ひび割れが見つかっていた。
その後、下請業者から鉄筋不足の疑いがあるとの告発があり、中日本は騒然となった。

10月26日に 中日本は大島にひび割れの調査を指示、28日に中日本が緑橋の橋台を検査したところ、鉄筋が入っていないことが確認され、全ての関係者の背筋が凍り付いたことだろう。

更に文春が「『鉄筋不足で崩落の恐れ』中央自動車道の手抜き工事を下請け会社が実名告発」と報じ、大島の名前が全国に知れ渡ることになった。
その後、中日本は大島との 同耐震補強工事契約を11月20日に解除するに至った。

以上が 報告書や取材を通じて分かった、施工不良判明までの流れである。

今回の施工不良は、大島の技術不足、経験不足に 無理な低入札による契約など、大島そのものに主因があるのは勿論だが、民間同士の工事に、国会議員と国交省の介入があったことが大きい。
それを機に、中日本上層部が政治忖度をしたことにより、大島に中日本の事務所が翻弄され、現場に目が届かなくなったことで 起こってしまった。

また、内規に違反して認められた7億円の増額は、国会議員による圧力がきっかけとなり、それに応じた経営幹部、忖度した支社長他、関係部課長らが関係していることははっきりしている。
報告書の中には、法令違反が疑われるケースが幾つも見られることから、このまま終わるということにはならないだろう。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(43)■ 肝煎り人事のミッション

2020年7月の人事異動では、八王子支社の部長、構造技術課長、事務所長に 議員会館に行って説明をした者や増田副社長の側近が配置され、副社長との連絡係(本社保全企画部長)に 同じく議員会館に説明に行った者が就いた。

この肝煎り人事のミッションは、大島との最後の精算をスムーズに行うことである。
コンプライアンスの厳しい(はずの)会社にあって、どの社員も好んだ役回りではなかったと思われるが、結果的にミッションをやり遂げており、相応の責任はあると言えよう。

8月6日、大島から事務所の担当課長に電話があり、当初契約額 6億円にプラス10億円、最終金額は 約16億円という希望が伝えられる。
同課長は八王子支社の関係課の打ち合わせで、中日本の基準で積算して せいぜい 約8.1億円(+2.1億円)、大島の見積りを最大限考慮しても 約11.5億円(+5.1億円)という試算を共有している。

8月21日には、八王子支社部長から工期を2カ月程度延長し、設計変更の準備を進める旨の説明がなされ、支社長からは 「丁寧な対応を心掛けること、書類作成には無理な注文をしないこと、60日間の工期延長で打ち合わせること、資料を修正すること」等、大島寄りの指示があった。

変更金額については、大島から16億円という伝達があったが、積算では約12億円で大島が求める額に達しない旨が報告されている。
内部では 「12億円でも多いのに 16億円は調子に乗り過ぎ」という思いはあった様だ。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(42)■ 議員に恥をかかせるな、払ってやれ

2020年3月、大島には追い風が吹き まさに絶好調、契約金額の増額と一部しゅん工が実現することになる。
その経緯はこうだ。

2019年10月以降、中日本はじめ、NEXCO東日本、西日本、国交省、福岡県、政治家のところに告発文が数回にわたり届けられる。

告発文 → こちらをClick 

送り主は不明だが大島の下請業者で、虚偽の施工体系の違法性、代金の未払い、下請虐めの実態を訴えるものだった。

2020年1月、福岡県が実態の調査を行いヒアリングをした際、未払いの理由を問われた大島は「中日本が支払ってくれないから」と事実に反する回答をしている。
中日本では複数年契約の工事では部分払いをすることが約束されているが、工事の進捗が上がらなかったため、大島自身が 可能な部分払い請求を辞退して申請しなかったというのが実際のところだ。
結局、大島の事実に反する回答がそのまま中日本幹部に伝わり、増田副社長が「議員に恥をかかせるな。払ってやれ。」と述べたという。

その発言で中日本の社内の空気は一変し、ガバナンスが効かなくなった。
八王子支社構造技術課の主導で、3月6日には契約変更で金額を 7億3675万0159円(+1億3432万6159円増額)、工期を 2020年7月10日まで延長(+121日)することに、更に、大島の求めに応じ一部しゅん工検査(2億6391万8711円分)を実施、中日本内部では未提出の書類が多いことから抵抗があったが、最終的に大島の言い値に添う形で新単価が決定され、承認することとなった。

まさに、この点は 中日本が犯した背任行為で、真相究明が必要な一つのポイントと言える。
そして7月の人事異動で、増田副社長に近い者が 八王子支社に送り込まれてきた。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(41)■ 起こるべくして起こった施工不良

国会議員を使ったパワハラ騒動の後、標識工事の現場代理人としてK氏が就くことになり、大島としては目的を達成したと言える。

一方で、下請業者からは工事費の不払い等で大島への不満が大きくなり、もう限界にきていた。
実質的な一次下請 A社が9月で撤退を表明、施工に携わっていた下請27社のうち14社が 2019年12月までにいなくなり、現場作業員がいない空白期間があるという前代未聞の事態となる。



業者からの告発で、中日本の事務所は 「施工体制の偽装」や「下請への不払い」の事実を掴んでおり、大島との契約解除も考えたが、既に国会議員の登場で政治案件化していたため出来なかった。

今回問題となっている鉄筋不足、鉄筋切断の工事が施されたのはこの直後だ。
大島からの度重なる中日本の担当者へのクレーム、威圧的な態度に、両者の関係は悪化して、中日本は立会検査の人間も一定せず、大島の施工に目が行き届かなくなっていた。

下請業者に逃げ出された大島が、「金は払う、とにかく何人でもいい」と躍起になって代わりの下請業者を見つけ出したのが 12月、施工体系図を更新(相変わらず虚偽の書類)して提出するも、集められた労働者は専門性を要する耐震工事に精通していなかった。

鉄筋不足が判明した緑橋の橋台においては、鉄筋組立・鉄筋検査が工程表に記載されておらず、鉄筋がないまま 2020年1月にコンクリートを打設している。



下請の話では、現場に立ち会った大島側の担当社員は 図面が分からない素人で、言われるがままに立っていただけという。
実質は大島の監理技術者が工程管理をしていたが、電話による作業管理で 最後の鉄筋配置が必要なことに気づかず、次の工程を指示したようだ。
この点について、大島は 下請が勝手にやったと反論している。

また、絵堂橋の施工では、2月に行われた鉄筋の組み立て時に、鉄筋どうしが干渉したため故意に切断しているが、工期に間に合わせることを優先した大島の現場代理人が指示したとの証言が得られている。
耐震補強工事において、鉄筋を故意に切断するという 常識では考えられない工事が行われていたのだ。



こうした中でも、なぜかしら大島に「追い風」が吹いてきたのである。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(40)■ 国会議員を使ったパワハラ騒動

大島産業は、辞めた現場代理人F氏の穴埋めに K氏を復活させようと考えたが、K氏が2月の改善措置請求の対象となった当事者だったため、中日本の事務所が了承しない事は予見できた。

下請業者が大島の社員から聞いた話によると、ロッキング橋脚の耐震補強工事に応札するにあたり、建設族の地元国会議員に儲かるかどうか相談し、2018年に西日本と中日本の工事を各1件ずつ受注したという。
そこで 大島は、再度 国会議員の力を借りて、中日本に優位に立てる術を思い付いたようだ。

まず、日頃進捗を督促してくる中日本の施工管理員のメールの言葉の過ぎた部分を切り取りパワハラに該当するとして騒ぎにする。
それを収める交換条件が、K氏を現場代理人に復帰させ、今後の精算交渉を有利にすることである。

報告書では「施工管理員のメールの文面の中に、現場代理人を揶揄し個人攻撃ともとられかねない不適切な文言が確認された」と指摘されており、大島に攻撃材料を与えてしまったのは事実だろう。
最終的に、施工管理員は交代することになったが、その経過は次の通りである。



以上だが、国会議員が干渉してきたことで、事実確認が十分になされないまま政治案件化することを避けるため、支社長が施工管理員を交代させるよう指示している。
更に、担当課長のメモでは、国会議員が 「適正利潤」や「設計変更」についても言及しており、コンプライアンス違反が疑われる内容だ。

下図は報告書にあった「受注者側の配置技術者数と施工箇所数」というグラフだ。
2019年8月から9月にかけて 技術者数が少なくなっているが、まさにこの時期、パワハラ騒動が起こっている。

この国会議員・国交省課⻑との面会を機に、中日本の社内で「大島は政治案件、国交省から迂回天下りした副社長もコミットしている」という認識が共有された。
一方で大島は中日本の事務所に対し 要求を強くしていった。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(39)■ 施工能力不足を露呈

低入札価格調査をパスした大島産業、2018年8月28日に契約したまでは良かったが、下請業者が決まらない等の理由で3ヶ月間も着工が遅れ、12月になって ようやく施工体系図及び施工体制台帳を中日本に提出した。
しかし、届け出た1次下請業者「㈱ダイコウ」とは異なる別の下請業者A社と、前述の塚本不動産のグループ会社「塚本總業㈱」との材工一体の契約を締結させており、虚偽の申告をしている(下図)。

契約締結後3ヶ月近くも着工しないというのは聞いたことがない。
通常は業者が作成するべき 施工計画書や交通規制の書類を、なぜか発注者の中日本が手伝いようやく工事開始にこぎつけたという話が、当時の業者の間で話題になっていたという。

2019年1月、工事は始まったが、その後も中日本の事務所からの再三の指導にもかかわらず、書類の未提出、立会検査の未実施、工程の遅延、工事の進捗改善が図れず、現場管理の杜撰さが改善されなかった。
そのため、中日本の事務所は危機感を覚え 同年2月に大島本社に会社としての改善措置要求を出し、工程挽回を要望した。

しかし、大島の現場を任されていた現場代理人K氏が、しっかりとした修正工程や是正計画を十分書けなかったため、結局は中日本の事務所が書類作成を手伝い提出したという。
本来であれば、この時点で契約解除でもよかったが、中日本も国交省が決めた工期に追われていたことから そうした判断には至らなかった様だ。
さすがに大島は、工期の大幅な遅れの責任者としてのK氏を交代させることを申し出ている。

その頃から大島は、下請業者に対する支払いの手続き等も上手くいってなかった様で、トラブルが起こり始めていた。
そもそも 支払いトラブルの原因は低入札の契約による手持ち資金の薄さにあったが、偶然にも現場近くで 別の標識工事(約4億円)の話が舞い込んできた。

運よく6月3日付で 随意契約を結んだところまではよかったが、問題が起こる。
同工事の現場代理人に指名したF氏が、工事の着手進捗を求める中日本と、叱責する大島本社幹部との間で板挟みとなり、間もなく連絡がつかなくなり 辞めてしまったのだ。

大島は後任を探さなければいけなかったが、社内に現場代理人の資格者は余っていない。
その後 起こったのが、大島による 国会議員を使ったパワハラ騒動である。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(38) ■ 第三者委員会の最終報告書

7月27日、中央道を跨ぐ橋梁の耐震補強工事施工不良に関する調査委員会の最終報告書が公表されたが、参考資料も含めると200ページを超え 読み込むのに時間を要した。

報告書は冒頭で「調査の限界」と題し、同委員会の調査で「収集した資料等のほかに、本件事案の事実関係を認定するうえで重要となり得る資料等が存在する可能性があること」「ヒアリングで得られた情報の中に事実と異なる情報が含まれている可能性も否定できない」ことを指摘、「後日そのような事実が判明した場合は、事実認定および検証結果が変更される可能性がある」と断りを入れている。

このことはつまり、今回の調査で 背任とも取れる事案が見られたことから、今後 現在行われている裁判や 警察の捜査で真相が明らかになる可能性を考慮したものと思われる。

報告書等では、
1.施工不良が起こった原因
2.国会議員や幹部の発言の影響
3.内規に反した工事金額の増額
等が明らかにされた。

施工能力が不足していた大島が契約解除もされず工事を続け、最終的に6億円の当初契約が なぜ13億円に増額変更されたのか、報告書と取材内容を織り交ぜながら 紐解いていきたい。

今回施工不良が明らかになった耐震補強工事は、大島が2018年7月の入札に参加し、低入札の重点調査基準を下回る 6億0242万4000 円(税込)(落札率 73.8%)で落札したため、中日本は低入札価格調査を行っている。

一般的な 通りいっぺんの調査では、巧妙に脚色された提出書類から、その後起こる施工不良や不払い問題、施工体制違反等の建築業法違反を予見出来なかったようだ。
大島は調査をパスし、契約するに至ったが、調査で届け出た一次下請3業者「B社(大阪市)」、「M社(宮若市)」、「塚本不動産㈱(東京都中央区)」とは 契約を結ばず、当初から不可解な動きを取っている。
協力した下請3社も 大島とは相当な結びつきがあると思われる。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(37)■ 最終報告書に盛り込まれるべきこと

7月6日に開催された第9回第三者調査委員会の議事録には、「再発防止の為に 他機関の好事例があれば参考にすべき」とあった。

今回の不祥事が、「議員に恥をかかせるな、払ってやれ」から始まったことは、社内の共通認識という。
現状そうだとしても、再発防止の為にはそれを許さない組織改革が必要だ。

今回の失敗の本質は、経営権と人事権を持つ本社幹部がコンプライアンス責任者を兼務している昭和的な組織体制にある。
一般的に まともな大手企業では、大手弁護士事務所の役員等が「社外取締役」としてコンプライアンス担当の役員に就き、告発者の保護、公正な調査、企業倫理の醸成に資している。

中日本に限らず、高速道路会社には国土交通省の天下り官僚が経営権のある取締役として就いているのが現状だ。
天下りの取締役は、円滑な高速道路行政の為には ある意味役に立つ反面、今回のような醜聞や品質安全、企業倫理に関わってくるデメリットの方が多い。
問題が起こった時に身動きできず、決定を覆すことが困難な状況になり、社員を巻き込んでしまう。

同じ失敗を繰り返さないためには、社外役員がコンプライアンス窓口の責任者に就き、告発者が法的に保護される体制づくりが急務と言える。
このことが、第三者調査委員会の最終報告に盛り込まれる最優先事項と言える。

本題に戻るが、この後 中日本自らが公正公平な工事費を算出し、大島と協議もしくは審査会に付託し、適正な工事費の支払いをして、決着をつけることが 国民の財産を守る事につながる。

弊社の記事は、中日本の社員はもとより、西日本や東日本、国会議員、国交省の担当課の方にも目を通して頂いており、各方面から激励の言葉も頂いている。
本来あるべき方向に軌道修正するために、今は第三者調査委員会や会計検査院の力を借りているところだが、本来 中日本自身が自力で変えていくものである。

中日本が自発的に変われるか、周囲は注目している。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(36)■ 政治案件の処理で決まった人事

5名の精鋭調査官で臨んだ追加の会計検査の行方に、NEXCO中日本の内部の両陣営はもとより、国会議員も注視している。

今回は中日本の業務について検査をしたわけだが、税金の無駄遣いの発端となったのは 「政治家への忖度」で、企業倫理の問題である。
中日本ではコンプライアンス教育が行われており、コンプライアンス相談窓口もある。
なぜ 7名の決裁権者が 水増し請求を知りながら 窓口に駆け込めなかったのか。
その原因は、人事権を持つ役員がコンプライアンスの責任者という中日本の組織体制にあることに尽きるだろう。

また、7名のうち 3名(支社部長、同課長、所長)は、八王子支社に配属される前は、本社で「パワハラ呼び付け騒動(※1)」、「不払い告発文(※2)」に携わっていたことが判っている。

※1 大島産業の社員が中日本の工事担当者からパワハラを受けたと宮内秀樹議員に訴え、国交省道路局の担当者と中日本本社の社員らを衆議院議員会館に呼び出した件

※2 大島産業が建設業法に違反し、届け出た施工体系図とは違う 裏契約を 大島が指定する別の商社と契約させ、かつ不払いを続けた実態を告発した文で、NEXCO3社と国交省、国会議員らに送付されいる

その3人がわざわざ 大島が工事を行っている支社に決裁権者として配属されてきた。
いずれも 大島の工事を「政治案件」と認識した 中日本の幹部が、(政治的に)処理を誤らないよう配置した人事ということが窺える。

配属された者たちも被害者だ。
自身も含め コンプライアンス教育を受けた多くの社員の目がある。
それでも、幹部の意向に沿った方向で進めなければ 自分の立場が危うくなる。

社員たちもコンプライアンス違反が行われようとしている瞬間を見ている。
だが、上司に言っても 本社の意向だからと諦めている。
告発したとしても 間違いなく潰されるし、一人で抵抗しても無駄だから 最後は見て見ぬふりをする。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(35)■ 間詰め材の充填は十分か?

NEXCO中日本における 大島産業の工事の現場検査について、前回 橋台の補修箇所の水漏れについて指摘した NEXCO西日本の関係者から ある懸念が寄せられた。

NEXCOと大島産業(23)■ 中日本が問題なしとした国立橋
NEXCOと大島産業(24)■ 今後もひび割れが広がる可能性

「橋と橋台との間のコンクリートがスカスカか、間を埋める『間詰め材』の充填が不足して隙間が空いている可能性があります。
作ったばかりの何も無い場所から水が垂れてきているのは変です。
ロッキング橋脚対策マニュアルでは、舗装までびっしりセメント系の間詰め材で埋めることになっています。
西日本ではそうするよう指導しています。

この部分に隙間があると、水が侵入して溜まり 微細な隙間から伝わって、橋と橋台とを繋いだ重要な鉄筋が腐食したりすることで、大きな地震が起きた場合に、耐震補強工事の効果が全く得られないことになりかねません。
まさか 間詰め材を全く入れていないとは思いませんが、何らかの空洞か水道があるのではないでしようか?
国民の生命を守るために税金を投入したのであれば、調査して もし入っていなければ、マニュアル通り隙間を入念に埋めるべきです。」

果たして、昨日現地を見た検査官が気づいたかどうか。
通常であれば、見えないところほど 施工記録を残しておくはずだが、前述のように 大島案件では書類の不備が多い。
検査官におかれては、耐久性に関わる重要な部分をしっかり調べて確認して欲しいものだ。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(34)■ 建設工事紛争審査会

公共工事中止における最近の和解例に、平成30年に市長が交替し新庁舎建設(総工費約87億円)の契約を解除した近江八幡市と ㈱奥村組(大阪市)の争いがある。
県建設工事紛争審査会の勧告に基づき、今年1月、市は奥村組に4億0600万円を支払うことで和解合意したと発表した。
これは甲乙の責の立場は逆だが、NEXCOの契約書にも「建設工事紛争審査会」への付託についての記載がある。

令和2年10月23日の5回目の契約金額の変更の際、当初大島産業は10億円の増額を要求、あまりの無茶ぶりに本社工務部門も含め社内では反発し、審査会に仲裁に入ってもらうつもりだったという。
ところが、天の声が聞こえたのか 途中から方針が転換、本社の指示だから仕方がないということで支社の決裁権者も同調し、最終的に6億円までは増額を認めたのが真実の様だ。
(決裁権者の中には よくわきまえた者もいれば、「赤木さん」のように抵抗した方もおられるらしい。)

6億円を認めてしまった以上、中日本には支払うつもりはあったが、蓋を開けてみると品質証明や立会検査等 出来高を裏付ける書類がない、あるのは 警備費や型枠工事の材料費など 根拠不明の書類のみ。

今後、最終的な精算に関し、大島との間に主張の相違が生じることが予想され、当然審査会に付託されるだろう。
中日本は「違約金+補修費」を請求することになるが、「出来高部分」をどう算定するかで 中日本のコンプライアンスの姿勢が問われている。

前述のように、辻褄合わせのために中日本は、貴重な労力と時間を使い 大島に代わって「出来高部分」を確定させるための書類を作成してやった。
そのプレゼントは、国民の税金が原資ということを忘れてはならない。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(33)■ 触れてほしくないこと

入手したNEXCO3社の標準的な契約書から、大島産業の耐震偽装発覚後、中日本が本来どう対応すべきだったかが見えてくる。

契約上、受注者が契約に違反し 目的を達することができないと認められるときは、発注者は契約解除ができるとされているが、その後問題となる支払い関係について、「発注者は 請負代金の 10分の3の違約金を請求できる」、「工事完了した出来高部分については受注者から引き渡しを受け 相応の請負代金を支払わなければならない」、「必要がある場合は最小限度の破壊検査をできる」等細かい規定がある。

今回の場合、違約金については当初の請負代金 約6億の3割で、1億8000万円が請求されると思われる。
問題は出来高部分だ。
この半年間、中日本は大島が完了した出来高部分について調べていたが、必要な品質証明や立会検査が無いのが殆どということが判っている。
通常の工事では 多額の費用をかけ管理することで 支払いに至るのだが、今回の大島の工事に関しては、何故か 中日本が調査を尽くし 肩代わりしたのである。

工事の補修や品質の裏付け調査は 中日本の将来の管理のために必要だが、わざわざ支払い対象とすべき出来形確定のために行ったという。
この根本が間違っていることに、検査官が気がつかないはずはない。

ー 続 く ー



 

NEXCOと大島産業(32)■ 国立橋の施工は支払いに値するか

大島産業が施工し 契約解除となった2工事についての追加会計検査、2日目は現場検査の予定である。

NEXCOをよく知る関係者は次のように述べた。

「耐震補強工事を行なった跨道橋の多くは交通量の多い高速道路からしか近づく事が出来ません。
検査する場合、中日本は 路肩規制を警察に緊急申請する必要があります。
申請しなければ、パトロール車で素通りするしかなく、 『はとバス』状態です。
雨の予報ですし、中日本は安全確保も持ち出し 十分な検査はできないと思いますので、中日本の作戦勝ちでしょうね。」

だが、弊社が報じた 国立橋については、国道と交差しており 歩道から粗雑施工の補修箇所が見られる場所である。
中日本は今後、粗雑構造物を 長期に亘り管理していく事になる。
補修はしているが、他の優良工事で作られたものとは違い、早く劣化しコストがかかるお荷物だ。

福岡県民新聞「中日本が問題なしとした国立橋」

検査官におかれては、その施工が支払いに値するものか 第三者の目で判断して頂きたい。

ー 続 く ー

NEXCOと大島産業(31)■ 会計検査、本日から3日間

7月5日、本日から3日間、NEXCO中日本において 大島産業が施工して契約解除となった 2つの工事に対しての 追加会計検査が始まる。
会計検査院の検査官が 5名、3日間張り付くというのも異例というが、それだけ闇が深いという事だ。

幾つもの決済をくぐり抜け、支払いが決まった13億2千万円という工事の最終変更金額について、実態の裏付の無い警備費、埋設型枠の材料の加工賃、特殊工法の諸経費のダブル計上等、大島側の水増し請求に対する疑念は何一つ払拭されていない。
被害を被った複数の業者は中日本の調査に事実を伝えたというが、検査官にはどのような回答をするのだろうか。

昨年10月まで 度重なる下請業者からの告発があり、通常なら はるか昔に契約解除となっているはずが、政治案件工事として 本社からの指示により放置されたことが、工事費の異常な増額と耐震偽装施行に繋がった。

その経緯を事細かに知っている7名のうち6名は左遷人事で検査会場にはいないが、唯一人 異動を免れた担当者がいる。
会計検査=国の税金、国民の財産に関わる問題であるが、担当者がどっちを向いて証言をするのか 社内でも注目されている様だ。

ー 続 く ー